ある日、視聴者の家で話をすることに。
その話の内容とは？

〚インターフォンの音〛
お兄ちゃん、私だよ。
遊びに来たから開けてほしいんだけど。
〚扉の開く音〛
お邪魔します。
《視聴者の顔を見る》
って今日はちょっと疲れてるの？
《視聴者のセリフ》
なんでって、私はお兄ちゃんの幼馴染なんだよ。
私とお兄ちゃんは結構長い付き合いなんだし、お兄ちゃんのことくらいすぐに分かるよ。
ほら、今日はクッキー焼いてきたんだ。
今から食べるでしょ？
《視聴者のセリフ》
それじゃあ紅茶入れるから。
台所借りるね。

あ、そうだ。
お兄ちゃんに訊きたいことがあったんだけどいい？
《視聴者のセリフ》
それじゃあ、その前にちょっとだけ話を聞いてほしいの。
今からするのは私の友達の話なんだけどね。
その友達には好きな人がいるんだって。
その子の好きな人はその子と幼馴染で兄妹みたいな感じで、多分恋愛対象として見てないらしいんだ。
しかも、好きな人が女の子に告白してるところを見ちゃったらしいんだよね。
それからどうしたらいいのか分からないんだって。
お兄ちゃんは、その子はどうすればいいと思う？
やっぱり応援して好きな人の幸せを願うべきだと思う？
それとも。
あ、そろそろお湯が沸いたかな。
私は紅茶入れてくるから、その間に答えを考えといて。

はい、紅茶。
私のクッキーも食べてね。
それで、答えは決まった？
《視聴者のセリフ》
へぇ、応援してほしいんだ。
なんで？
《視聴者のセリフ》
なるほどね。
なんか色々言ってたけど、つまりは自分の恋路を邪魔しないでほしいってことが言いたいんだね。
けどそれって、お兄ちゃんの都合でしかないよね？
私なら好きな人に見てもらえるようにするよ。
なんとしても、私のことだけを見てもらう。
お兄ちゃんにもし好きな人がいて、その好きな人は他の人が好きだって知ったら、自分の気持ちを諦めるの？
違うよね。
なんとかして自分を選んでもらおうとするんじゃないの？
それとも、それはおかしいことなの？
それはただのわがままなの？
私には分からないよ。
《視聴者のセリフ》
へぇ、お兄ちゃんも私と同じ気持ちなんだ。
それじゃあ、今から私がすることにも共感してくれるよね。
〘キスをする〙
あ、すごく驚いた顔してる。
何が起こったのか理解できてないみたいだね。
私がお兄ちゃんにキスしたんだよ。
クッキーの味がしたね。
ちなみに今のが私のファーストキスだよ。
もしこれがお兄ちゃんのファーストキスだったら嬉しいな。
《視聴者のセリフ》
なんでって、さっきの話、本当に私の友達の話だと思ってたの？
私とお兄ちゃんの状況とまったく一緒だとは思わなかったの？
兄妹みたいな関係で、恋愛対象としてすら見られていない。
しかも好きな人は別の人に告白してる。
だってお兄ちゃん今日、女の子に告白してたよね？
しかも、そのときに答えを聞けなかったから、家に帰ってきてからもそのことばかり考えてて、すごく疲れてるんでしょ。
だから、あの話は全部、私の話なんだよ。
《視聴者の表情が変わる》
やっぱりそういう顔をするんだね。
やっぱり私の気持ちなんて気づいてなかったんだね。
私はずっとお兄ちゃんのことが好きだったの。
絶対に、お兄ちゃんがあの人を好きになるよりも、私がお兄ちゃんのことを好きになる方が早かったんだよ。
私が先にお兄ちゃんのことを好きになったんだよ。
私の中をお兄ちゃんで染め上げたくせに、お兄ちゃんで満たしたくせに、お兄ちゃんしか考えられないようにしたくせに。
それなのになんでお兄ちゃんは他の女の子なんて見てるの？
私のことだけを見てよ。
私が好きだって言って、私を抱きしめて、私にキスしてよ。
《視聴者のセリフ》
ごめんって、なんでお兄ちゃんが悲しそうな顔をするの。
お兄ちゃんは知ってる？
一方的に思い続けて、この気持ちが実ることはないと知りながら、ただ一番近くにいたいとだけ思ってきた私の気持ちを。
すごく苦しいんだよ。
もうこれ以上、私に痛い思いをさせないでよ。
お兄ちゃんのことなんか好きにならなければよかったのに。
簡単に好きの気持ちを忘れられればよかったのに。
そうすればこんなに悩むこともなかったのに。
どれだけお兄ちゃんのことを好きになっても、お兄ちゃんは私のことを見てくれないんだし。
お兄ちゃんお願い。
一度だけ、一度だけでいいから、私のことを抱きしめて、好きだって言ってよ。
そうすればこの気持ちを忘れられる気がするから。

・台本（ゆるボイ！）
好きになったから。
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
山葵餅