ある日、二人は演者の家でお家デートすることに。
そのときに、演者から吸血鬼であることを聞かされる。
そして、頼み事があると言われ・・・

今日はわざわざ私の家に来てくれてありがとうございます。
付き合い始めてから私の家に来てくれるのって初めてだから嬉しいです。
前来てくれたときは付き合う前でしたし、そもそもクラスメイトの方が沢山いましたしね。
あの時からあなたのことが好きだったんですけど告白する勇気がなかなか出なかったんです。
実際、あなたに告白できたのもクラスのみなさんが手伝ってくれたお陰ですしね。
それで今日来ていただいた理由なんですけど、それはあなたに見ていただきたいものがあったからなんです。
見ていただきたいものというか、伝えたいことというか。
まぁとにかくやってみるのが早いですね。
〚人間から吸血鬼に変わる〛
ジャーンびっくりしましたよね？
急にしっぽと耳が生えてきたんですから当然です。
耳と言っても正確には角なので聴覚としての役割はほとんど果たしていないんですけどね。
それと一応、羽も出せるんですよ。
今やると服が破けちゃうのでしませんけど。
服が破けるって聞いてちょっと顔赤くしましたね、絶対にしませんからね。
それで見てわかるかもしれませんが実は私吸血鬼なんです、隠していてごめんなさい。
言わなかったのは嫌われちゃう、というよりもあなたに怖がられちゃいそうだと思ったからなんです。
多分私が普通の人間だったとしたら、吸血鬼なんだよねってカミングアウトされても戸惑っていたでしょうし。
けどあなたは昨日、どんな私でも好きでいてくれるって言ってくれましたよね？
だからちゃんと言わなきゃって思ったんです。
それで一つお願いがあるんですが、あなたの血を吸わせていただけないでしょうか？
吸血鬼には使用期限の切れた輸血用の血が食料として送られてくるんですが、それが全然美味しくないんです。
腐ってるようなものですからね。
それで、その味に満足できない吸血鬼は人から血を貰ったりするんです、例えば恋人とかから。
けどこれはまだいい方でもっと野蛮な吸血鬼になってくると人を襲って生き血をすするそうなんです。
だからあなたがそんな吸血鬼に襲われないよう私の噛み跡を付けておきたいです。
これがあるとその噛み跡を付けた吸血鬼の所有物だって証明になるんですが、その所有物になった人を襲ったりすると犯罪になります。
人間界で言う裁判所みたいなところがあって、そこに行くとどっちの噛み跡が先にあったかが調べられて、後から噛んでいた方は罪に問われるんです。
誰かの所有物から勝手に血を吸うっていうのは人間界で言うところの強盗みたいな感じですかね？
自分の家の食べ物が勝手に食べられてる、みたいな。
《視聴者の表情が暗い》
どうしてそこまで暗い顔してるんですか。
あくまでも例え話ですからね。
私があなたのことを食料として見てるとかそういうことはありませんからね。
あ、もしかして噛み跡のことでなにか心配してることがあるんですか？
それなら大丈夫ですよ、吸血鬼の噛み跡は吸血鬼にしか見えませんから。
だってあなたは吸血鬼の噛み跡なんて見たことないですよね？
学校にも何人かいるんですよ、吸血鬼に血を上げてる人。
あ、この噛み跡にもポイントがあって、噛まれる人の了承がある場合は赤色に、無い場合は青色にその噛み跡が見えるんです。
私たちの学校には青色の人はいないので一安心ですね。
それから犯罪になるのは赤色の噛み跡のときだげなんですよ。
つまり本人の同意なく血を吸われた人は誰かの所有物になったりしないってことなんです。
《視聴者のセリフ》
私が人の血を吸ったことがあるのか？
私はありますよ、実は私の家お母さんは吸血鬼なんですけど、お父さんは人間なんです。
というか今の人間の中で純血の人間って結構少ないんですよ。
たまたま血が覚醒した人が吸血鬼になるんです。
だから人間同士の間でも急に吸血鬼が産まれたりすることもあるそうですよ。
私は違いますけど。
あ、話がそれちゃいましたね、私が吸ったことあるのはお父さんの血だけです。
もともとはお母さんの噛み跡が付いてるんですけど、付けた吸血鬼の許可さえあれば他のどの吸血鬼でも吸えるようになりますからね。
話がとっても長くなっちゃっいましたけどあなたの血を吸ってもいいですか？
《視聴者のセリフ》
ありがとうございます、あなたならいいって言ってくれると思ってました。
それじゃあいただきます。カプッ。

〚少し時間が経つ〛
あ、目が覚めた？
ごめんね、君の血を吸ったときに意識を失う毒を体内に流したんだ。
吸血鬼って血を吸うだけじゃなくて、そういうこともできるから。
あぁ、口調が違うのはこっちが素だからだよ。
アレ疲れるんだよね、あなたのこと好きです、って嫌になっちゃう。
わざわざ餌ごときになんであそこまで疲れないといけないのかな。
そんなことより不思議に思わなかった？
青色の噛み跡の人間がどうして何も言わないのか。
この情報化社会では血を吸われた誰かがネットに書き込んだっておかしくないんだよ。
大抵の場合は、なんだよそれって流されて終わりだろうけど。
もっと堅実的な方法だと警察に襲われましたって相談するとかもあるね。
でもまぁそんな人たちがいないのはその人たちが襲われた記憶そのものを失ってるからなんだ。
吸血鬼が人から隠れながら生きていくために得た力の一つだよ。
存在を知られてしまったら何されるか分からないからね。
多分だけど殺されるならまだいい方だよ、悪い科学者とかに捕まったら実験のモルモットにされるかもしれないしね。
吸血鬼が実在するんだし、悪の組織とかもどこかにあるかもしれないよ。
まあ吸血鬼だって普通に死ぬし、人間と大きく変わるのは血を吸うかどうかっていうことだけなんだけどね。
それともう一つ君に言っておくべきことがあるんだけど、学校には青色の噛み跡の人は一人もいないって言ったでしょ。
アレ嘘なんだ、実は逆で赤色の噛み跡の人がいないの。
あ、今は君がいるから一人だけはいることになるね。
なんでそんな嘘をついたのかって言うと君を安心させるためっていうのもあるけど、私が君の彼女になろうと思った理由にまで遡るんだ。
実は私君のこと全然好きじゃないんだよね、そもそもたかだか餌ごときに恋愛感情を抱けって言う方が無理があると思わない？
あ、私はお父さんの血を吸ったことがあるって言ったけど、その男も血を吸われ過ぎて今はもう話せないんだよね。
というかもう土の中だしね。
ちょっと加減を間違えちゃったから。
まぁその話はどうでもよくて、学校にいる全員の血を吸ってみたら君のが格別美味しかったんだ。
私もビックリしたけど君は世にも珍しい純血の人間だったんだよ。
だからその血を心ゆくまで味わいたいと思ったんだ。
それと嘘ってわけじゃないんだけど、隠してたことがあるんだよね。
所有物になったら、他の吸血鬼から襲われないって言ったでしょ。
それは事実なんだけど所有物になるってことは私の命令には絶対服従ってことなんだ。
これは言ってなかったでしょ？
それで私の所有物になってくれた君にはこれから私に血を差し出すだけの人生が待ってるよ。
学校に行くこともないし、人に会うこともできない、話し相手は私だけ。
きっと楽しい人生だよ。
って言いたいんだけどストレスばっかり感じられちゃうと血の味が落ちちゃうのよね。
だから今までの生活を送らせてあげる。
私たち吸血鬼はさっき君が受けたみたいな毒を作ることもできるんだけど、快楽物質を作り出して、ストレスを無くさせることもできるんだ。
ただそれを使い続けると最後の方は壊れたみたいに吸血鬼に血を吸われることを求めてきて気持ち悪いのよね。
それに後始末も面倒だし。
まぁそいつらからしたら血を吸われるときに出てくる快楽物質目当てなんだろうけど。
たまにその壊れていく様を見るのが好きだっていうちょっと頭のおかしい吸血鬼もいるけど、私には共感できないのよね。
だから絶対に使わせないでね、君の味が落ちてきちゃったら使わないといけなくなるだろうけど。
さすがに背に腹は変えられないからね。
希少な純血の血を飲むためなら君を壊して、後始末をするくらいなら我慢するよ。
それと一応言っておくけどどこかに逃げるとかもできないからね、
君がどこにいるかなんて私にはすぐわかるから。
所有物のことを完璧に理解するのはご主人様として当然でしょ。
これからは楽しい楽しい私の餌としての生活が待ってるよ。
衣食住はちゃんと用意するし、将来は働かなくてもいい。
なんの問題もない完璧な人生だよ。
私が死ぬまでずっとそばにいてね。
約束。

・台本（ゆるボイ！）
彼女が実は吸血鬼だった
https://x.com/yuru_voi

・台本制作者
山葵餅