ある日の居酒屋で、アルバイト中の演者と客として来ている視聴者の一幕

居酒屋なのに二人きりっていうのもなかなか良いものじゃないですか？
とは言ってもアルバイトの私とお客さんのあなたしかいないって状況なんですけどね。
あなたも知っての通り、このお店は私のおじさんがやっているお店です。
そのお陰でこうして内緒でお客さんを閉店時間のあとに入れられてるんですけどね。
まぁ、もしバレてしまったとしてもあなたはこのお店の常連さんですし、おじさんからもお咎めはないと思います。
というか、そうであってほしいです。
《視聴者のセリフ》
なんか今日は機嫌いいね、って分かりますか？
実は今日、大学で同じ講義をとってる友達から告白されたんです。
それで、その人と付き合うことになりまして
【ジョッキが割れる音】
あ、大丈夫ですか？
触らないでくださいね、すぐに片付けますから。
服は濡れてませんよね？
それにしても珍しいですね、あなたがジョッキを落としてしまうなんて。
本当に今日は私とあなたしかいなくて良かったですね。
【片付けを始める】
それでなんの話をしてましたっけ？
そうそう、私に彼氏ができたって話ですね。
今週末が休みなのでその彼氏と初めてのデートをすることになったんです。
それが楽しみすぎて。
私、長い間片思いしてたんですけど、その人のことを諦めようかなって思ってたときだったのでなおさらなんですよね。
私に告白してくれた人のことを利用するみたいで少し嫌ですけど、やっぱり恋に関してウジウジ悩んでるのなら、新しい恋を見つけて前を向くしかないかなって思いますし。
これを機に、その人のことはきっぱり忘れることにしたんです。
結局、自分の気持ちを伝えることができなかったのは心残りですけどね。

よし、綺麗になりました。
新しいお酒を準備するので少し待っていてくださいね。
【酒を持ってくる】
はい、できました。もう落とさないでくださいね。
それでさっきはどうしてジョッキを落としたんですか？
そんなことめったにしませんよね？
というか、あなたがどれだけ酔っていても、ジョッキを落としたところなんて見たことないです。
《視聴者のセリフ》
ビックリして、ですか？
そんなに驚くようなことなかったと思うんですけど？
もしかして私に彼氏ができたってことに驚いたんですか？
ってそんなわけないですよね。
《視聴者のセリフ》
え？今なんて言いました？
私の聞き間違いじゃなければ私のことが好きだって言ったんですよね？
その、顔が赤いのはお酒のせいじゃなくて、私に好きだって言ったからですよね。
どうして今更そんなこと言うんですか。
そんなこと言われたってもう手遅れなんです。
私に片思いの相手がいたって言ったのを覚えてますか？
少し前のことになりますけど。
実はそれってあなたのことなんですよ。
私は今まであなたに何度もアピールしてたんです。
直接気持ちを伝えなかっただけで、それ以外のことで遠回しには伝えてたんですよ。
そもそも、好きでもない相手に今彼氏がいないんですって言ったり、逆に彼女はいるんですかって訊くわけないじゃないですか。
今まで私のことなんて見てくれもしなかったくせに、なんで急に好きだなんて言い出すんですか。
そんなの、ズル過ぎますよ。
私はやっとあなたへの思いを乗り越えようとしてたのに。
《視聴者の表情が変わる》
けど、あなたへの思いを伝えなかった私が、あなたのことを責める資格なんてありませんよね。
だからやっぱり手遅れなんです。
私はあなたへの気持ちを過去の物にします。
もう新しい方向を向くって決めたんです。
だからもう私のことは忘れてください。
私もそうしますから。

【以下省略可】
けど、けど、もし、私が今の彼氏と別れて、それでもあなたのことを忘れられていなかったのなら、次こそは私の思いをあなたに伝えてもいいですか？
この気持ちを簡単に忘れることはできないと思いますから。

・台本（ゆるボイ！）
居酒屋で二人きり。
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
山葵餅