ある日、久々のデートで、多くの場所を巡り、最後に演者の家へと帰ってくる。
これは、その先の話。

あ、お待たせ。
もしかして結構待たせちゃってた？
それならごめんね。
《視聴者のセリフ》
良かった、あなたも今来たとこなんだ。
久しぶりのあなたとのデートだし、今日はどんな服着ていこうかな、とか考えてたら昨日の夜なかなか寝付けなかったんだ。
って、そんなことはどうでもいいよね。
それより早く行こうよ、今日の予定は夜までびっしり詰まってるんだから。


うん、楽しかったね。
映画見て、オシャレなカフェで食事して、水族館にも行って、それから綺麗な夕焼けも見た。
で、今からは私の家で二人きり。
それじゃあ入って、入って。
どう？綺麗でしょ？
あなたを家に入れるって決めてたから、ちゃんと綺麗にしといたんだよ。
まぁ、普段からそれなりに綺麗にはしてるけど。
私、飲み物取ってくるけどお酒でいい？
《視聴者のセリフ》
そんなことしなくていいよ。
私が取りに行くから。本当に大丈夫だから。
あなたは絶対にここにいてね。
ここから動いたらダメだから。

はい、持って来たよ。注文のお酒。
どうだった、今日の私とのデート楽しかった？
《視聴者のセリフ》
そっか、楽しかったんだ。良かった。
《視聴者のセリフ》
訊きたいことがある？
良いよ、何でも訊いて。
《視聴者のセリフ》
隠し事してるだろって、なんで？
なんで、気づいてるの？
あ、ちが。まぁ、いっか。
うん、私、あなたに隠し事してるよ。
何を隠してるかってことも訊きたいんだろうけど、それはあなたに教えられないな。
隠し事の中身を隠している相手に簡単に言えるわけないでしょ？
《視聴者の表情》
って、やっぱりこれだけじゃ納得してくれないよね。
それじゃあちょっとだけヒントね。
ここ最近、あなたとデートできなかったのもそれが原因だよ。
はい、ヒントはここまで。
それじゃあ早く晩ごはんにしよっか。
って言っても、帰り道に買ってきたものばっかりだけどね。
《視聴者のセリフ》
私の手料理が食べたい、って言うけどそれは明日食べれば良いでしょ。
明日もお休みであなたは今日私の家に泊まるんだから。
《視聴者のセリフ》
うん、今度は納得してくれたね。
それじゃあいただきます。

はぁ、ご飯食べたらすぐに寝ちゃうなんて子どもみたいだな。
まぁ、そのお陰で私も最後の準備ができるんだから良しとするか。

ほら、起きて。起きてってば。
《視聴者が起きる》
あ、やっと起きた。どう？よく眠れた？
ご飯食べた途端に今日一日の疲れで眠っちゃうなんて、本当に子どもみたいだね。
ちゃんと起きたことだし、机の方を見てもらおうかな。
机の上に何があるか分かる？
《視聴者のセリフ》
うん、そうだよね。何があるのかなんて暗くてよく見えないよね。
【火をつける音】
どう？これなら何があるのか、よく分かるでしょ？
《視聴者のセリフ》
うん、正解。ケーキだよ。
でもただのケーキじゃなくて、あなたの誕生日祝いのために私が作ったケーキなんだ。
誕生日おめでとう。今日はあなたの誕生日でしょ？
《視聴者のセリフ》
もう、なんでそんなこと言うかな。
あなたの誕生日は明日じゃなくて今日だよ。
ほら、あなたが寝てる間に日付が変わったんだから。
それより、早く火消してよ。
それでどうかな？
私の手作り誕生日ケーキは。
びっくりしたでしょ？
あなたいつも私のスイーツとか美味しいって言って食べてくれるから、ケーキ作ってみたんだ。
ちょっと失敗しちゃったとこもあるかもだけど、美味しいとは思うんだよね。
《視聴者のセリフ》
ってごめん、電気つけないと何も見えないよね。
【スイッチを操作する音】
まずは一口食べてみて。
《視聴者のセリフ》
良かった、美味しいんだ。
それじゃあ次は壁の方を見てもらってもいいかな？
《視聴者が目線を向ける》
うん、うん、文字通り目を見張ってるね。
大変だったんだよ、あなたが起きないように壁の飾り付けとかするの。
《視聴者のセリフ》
もしかしてこれが隠し事？ってそうだよ。
あなたの誕生日をサプライズでお祝いすること、これが私の隠し事だよ。
大変だったんだからね、あなたの誕生日を祝うために飾りを作ったり、ケーキ作りの練習をしたり、仕事を進めてこの二日間を休めるようにしたり。
あなたに今日のことがバレないようにするのが一番大変だったけど。
そのせいであなたと一緒にいられる時間が短くなっちゃったのは寂しかったけどね。
あれ？もしかして泣いてるの？
なかなか可愛いところもあるね。
《視聴者のセリフ》
え？別れたいって言われると思ってたの？
君を楽しませようとしてのに、そんな心配をさせてたなんて。
ごめんね、けど私があなたと別れたいと思うことなんて絶対ないからね。
私はあなたのことがすっごく好きなの。
あなたがいなくなってしまったら、生きている楽しみすらなくしてしまうくらいなんだから。
あなたの笑った顔とか、今みたいに泣いてる顔とか、いろんな表情を一番近くで見ていたいんだよ。
《視聴者が泣く》
だからほら、泣かないで。
ギュー、泣きたいなら私の腕の中で泣いてよ。
私は泣いてるときにあなたに触れているとすっごく楽になるんだよ。
安心するっていうか。
もう絶対あなたにそんな心配はさせないから。ずっとずっと大好きだから。

・台本（ゆるボイ！）
彼女の隠し事
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
山葵餅