ある日の朝、視聴者は見知らぬ、いやどこかで見かけたような気もする女の子から声をかけられる。詳しく話を聞いていくと、彼女（演者）は視聴者に一目惚れしたかもしれないということで・・・

すみません、少しお話したいことがあるんですが。
《視聴者が素通りする》
ってあなたに話しかけてるんですよ、無視しないでください。
そうです、あなたです。
あの、急にこんなこと言われても困ると思うんですけど、私あなたに一目惚れしたかもしれないんです。
何言ってるんだコイツって思いますよね。
実は私、あなたといつも同じ電車に乗ってるんですが、そのときになぜだかあなたに目を惹かれてしまって。
なんでなのかなって思ったんですけど、よく分からなくて。
もしかしたらこれが恋なのかなって思って話しかけちゃいました。
私、今まで誰かを好きになったことがないので、フィクションの中でしか恋というものを知らないんです。
だからこれも、多分一目惚れかも、なんですけど。
もちろん、今すぐ彼女にしてもらえるんて思ってません。
だから、私のことを少しずつでも、知っていってもらえたらなって思うんです。
そのために告白したんですから。
なので、これからは電車の中で少しだけでもお話するのってダメですか？
《視聴者のセリフ》
あ、良いんですか。良かったです。
それじゃあ今日から早速お話しましょう。
《電車が出発する》
って、あ！
私たちがいつも乗ってる電車、私たちがお話してる間に行っちゃいましたね。
まぁ、これであなたともっとお話できると思うとそれはそれで良かったのかもしれません。
あなたがどう思っていようとですよ。


いつの間にか、私があなたに一目惚れしたんです、って告白してから一ヶ月以上が経ったんですね。
あのときよりも、あなたのことをたくさん知ることができましたね。
例えば、朝起きるのは苦手だとか、夏よりは冬の方が好きだとか、恋愛経験は私と同じくらいだとか。
それじゃあ、改めて告白しようと思います。私はあなたのことが好きです。
あのときは多分これは一目惚れで、多分好きなのかもでしたけど、今は違います。
あなたとお話をして、少しずつお互いのことを知って、同じ時を過ごして、その上で好きだって言ってるんです。
これが恋なんだってちゃんと分かったんです。
やっぱり、私の一目惚れは間違いじゃなかったんだって確信が持てたんです。
それじゃあ、あなたの返事を聞いても良いですか？
《視聴者のセリフ》
そうなんですね、ダメですか。
いえ、謝らないでください。
あなたが謝る必要はないんですから。
それに、一ヶ月でダメだったなら、もっともっと私のことを知っていってもらえれば良いだけだと思うんです。
そうしたら私のまだ気付いていない魅力を知ってもらえると思いますから。
要は好きになってくれまでずっとあなたの近くにいて、好きになってくれたらあなたの側にいるってことです。
だから、今まで通り私と一緒に電車の中でお話しましょうね。
この時間は今の私があなたとお話のできる唯一の時間ですから。
この時間がなくなってしまっては私はあなたと一緒に過ごすことができなくなってしまいますよ。


あ、やっと来た。
どうして今日はいつもより遅いんですか？
もしかしたら、昨日の告白のせいでもう二度と一緒に電車に乗ることができなくなるのかと思ったんですよ。
そうじゃないのなら来る途中で事故にでも合ったのかと思ってすごく心配しました。
もうこれからは絶対に、遅くならないでください。
彼女になれない私には本当にこの時間しかないんですよ。
それで、どうして遅くなったんですか？
《視聴者のセリフ》
え？昨日の夜考え事をしてたら眠れなくなったから、ですか？
そこまでの悩みがあるなら私に相談してくださいよ。
って私にそんなこと相談できるわけないですよね。
《視聴者のセリフ》
え？何、言ってるんですか？
ごめんなさい、私の聞き間違いかもしれないのでもう一度お願いできますか？
《視聴者のセリフ》
やっぱり、聞き間違いじゃないんですね。
分かってるんですか、あなたは今私のことが好きだって言ったんですよ。
しかも理由は、私があなたのことをたくさん考えてるからだ、なんてあり得ますか？
チョロ過ぎますよ、そんなの。
その理由なら私でなくても良いってことになるじゃないですか。
《視聴者のセリフ》
あんなふうに告白されたのは初めてだったし、って。だから、そんなことを理由にしないでください。
けど、これであなたが私を好きになったのは確かなんです。
それじゃあ、浮気なんてしないようにずっと私のことだけを見て、新しい魅力を知っていってもらわないといけませんね。

・台本（ゆるボイ！）
一目惚れ
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
山葵餅