遠くに住んでいる幼馴染のもとを訪ねたあなた。
相談をすると、かなり理解を示してくれている様子。
どうやら同じような経験があるようで……

（ドアの開閉音）

久しぶりー！

さぁ入って入って！

最後にあったのいつだったっけ？

確か小学校の時以来だから……えっ、もう10年以上も前じゃん！？

なんか君、見ない間に背伸びたんじゃない？

もしかして私抜かされちゃった？

ちょっと比べてみようよ。

ほら、背中を合わせて……

ちょっと、今更何恥ずかしがってんの。

昔はよく一緒にお風呂入ったりしてたんだからさぁ、背中合わせになるくらいいいじゃん。

ほら、そうやってすぐ駄々こねる。

そういうとこホント変わってないよね。

ほーら、はーやーく！

「嫌だ嫌だ」って……それが通じるのは赤ちゃんだけだよ？

だからおとなしく言う事を聞いて……

もう、まだやる気？

こうなったら無理やり……えいっ！

うーん、まだ私の方が背は大きいか……

前比べっこした時よりは差が縮んだ気がするけど。

ほら、昔はよく「弟みたい」って言われてたよね？

それで怒った君を私がなだめたら今度は「親子みたい」って言われて……

ふふっ、分かった分かった。

もう言わないから。

でもさ、君結構ガタイよくなってたよね？

何かスポーツとかやってるの？

そっか、私も何か始めてみようかな。

自分磨きってやつ？

ちょっと、何で今笑ったの！

まったくもう君ってやつは、そういうとこだけ変わってないんだから……

そうだ、私が引っ越してからこの街で何か変わったところとかある？

もう10年近く経ってるしさ、ちょっと気になっちゃって。

//少し間を開けて
うん、なになに……駅前のパン屋さん？　

へー、パンの種類が増えたんだ。

私が好きだった塩パンはまだ残ってる？

//少し間を開けて
よかった、あの味が食べられなくなったら私生きていけないよ……

他には何かある？

//少し間を開けて
へーそうなんだ、他には？

って、あぁ……またやっちゃった。

一度気になったものはとことん追い求めちゃうの、私の悪い癖なんだよね……

それで、本題に入るけど“相談したいこと”って何？

だってさ、わざわざ君が遠くに住んでる私の元を訪ねてくる程のことなんでしょ？

それに、君が私に相談するなんて今まで一度もなかったし。

結構深刻な気がしちゃってね。

まあまずは話聞かせてよ。

大丈夫、引いたりなんかしないから。

//少し間を開けて
うんうん、好きな子が出来たんだ……それでそれで？

あぁ……その子のことが好きすぎて暴走気味になっちゃってるんだ……

具体的にはどんなことしちゃったの？

あ、嫌だったら答えなくてもいいからね。

誰にでも言いたくないことくらいあるし。

でも気持ちは分かるよ。

あまり大きな声じゃ言えないんだけど、私も色々とやっちゃってるし。

例えば？　うーん……

私にも好きな人がいるんだけど……

その人の捨てたごみを漁って情報収集をしたり、
後ろからこっそり尾行してバイト先を特定したり、色々とやっちゃってるんだよね。

こういうのストーカーっていうんだよね？

勿論ダメなことだとは分かってるんだけどさ、止められないんだ。

さっきも言ったけど、そういうところが私の悪い癖なんだよね。

しかもその人、離れたところに住んでるからお金もかかっちゃうし……

あっ……でもね、それも今日で終わり。

だって今日、その人の方から私の元へ来てくれたんだもん。

ここまできたらもう分かるよね？

そう、君のことだよ。

私は君が昨日食べた晩御飯も、
使ってるシャンプーの匂いも、
学校やバイト先での人間関係も、全部知ってるんだ。

だからさ、後は君が私に振り向いてくれるだけなの。

もちろん返事は「はい」だよね？

（ため息）

なんとなくそんな気はしていたけど、いざ言われると傷つくなぁ……

まあ最初から、逃がす気はないんだけどね。

（押し倒す、ここから距離近め）

はい、捕まえた。

相変わらず、無理やりされるの弱いよね。

ごめんね、君を逃がさない為にはこうするしかなかったの。

でもさ、君が本気で抵抗すれば、私の華奢な体なんてすぐに押しのけられるはずだけど。

抵抗しないのは何でかな？

もしかして、内心喜んじゃってたりする？

//少し間を開けて
うーん、黙ってるってことは、否定しきれないってことだよね？

はい、時間切れ。

今から君が何を言っても全部無駄でーす。

あくまで主導権を握っているのは私なんだから、これくらい当然でしょ？

もう、また「嫌だ嫌だ」って……

でもね、私はそういう君の素直じゃないところが昔から好きだったんだ。

ねえ、これから私に何をしてほしい？

ちゃんと答えてくれないと、いつまでもこの体勢のままだけど……どうする？

もしかして、まだ悩んでるの？

君のことだから、思いを寄せているあの子のことが気がかりなんだろうけどさ……

このまま叶わぬ恋を続けるくらいなら私に乗り換えちゃえばいいのに、って思っちゃうなぁ。

ほら、私に堕ちちゃえ。

//少し間を開けて
うん、やっと素直になってくれたね。

よしよし、いっぱい甘えてもいいよ。

ほらほら、ぎゅーってしてあげるから。

（抱きしめる）

あったかい……

私はね、君をずっとこうやって抱きしめてあげたかったんだ……

それが今日やっと叶った、本当に嬉しいよ。

もう離したくない、私だけの君でいてほしい……

（元の距離に戻る）

あっ、ごめんごめん。

力入れすぎちゃった。

でもさ、君にとって私は「本命」じゃなくて「妥協」なんだよね？

あっ、謝らなくてもいいよ。

私にだって非はあるし。

でも覚悟してよ？

君のその「妥協」を少しづつ「本命」に塗り替えてやるから……

じゃあ行こっか。

「どこに？」って、そんなの決まってるじゃん。

それとも言わせたいの？

もう、仕方ないなぁ……

//囁き
私たちがいっぱい愛し合うところ、だよ。

ふふっ、顔真っ赤にして可愛いね。

君に早く「私が一番」って言わせたいからさ、私もスイッチ入っちゃった。

もしかしたら手加減とかできないかもしれないけど、そこは許してくれると助かるな。

じゃあ今度こそ行こっか。

少しは変わったところ、見せてよね。

・台本（ゆるボイ！）
理解がある幼なじみの正体が実はストーカーで叶わぬ恋から自分への乗り換えを提案して堕とそうとしてくる。
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
堕罪サラ