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勇者パーティの魔導士は。
written by シノト
  • ファンタジー
  • 切ない
  • 悪役
  • 裏切り
公開日2022年09月03日 22:25 更新日2022年11月01日 08:09
文字数
1783文字(約 5分57秒)
推奨音声形式
指定なし
推奨演者性別
指定なし
演者人数
1 人
演者役柄
魔導士
視聴者役柄
勇者
場所
墓前
あらすじ
パーティの女性騎士が死んだ。
傷心の勇者に魔導士が寄り添う。
だが、魔導士は胸に秘め続けた禍々しい思いがあって――。

作者大好き悪役もの。
需要がなくたっていい。
だって、私が楽しいのだから――。

でも、今回は思いがけず切ない系に転んだ。
びっくりした。
私はただただ悪い奴が好きだ。
だけど、これもまたよし。
うん、これもいいな。

pixivでも投稿しています。
本編
勇者様、またここだったんですね。
ずっとお墓の前にいても、彼女は報われませんよ。

早く魔王を倒しに行きましょう。

……なんていっても無駄ですね。

はい、傘持ってきましたよ。
このままじゃ、風邪をひいてしまいます。

今は魔王討伐のためのパーティの一員ではなく、一人の人間としてここにいます。
ええ、魔導士ではなく、ただの僕として。

ふふ、そうですね。
僕なんか役立たずですよね。
それでも。

残念でしたね、彼女。
とても強い騎士だった。

剣も、心も。

勇者様、彼女のことが好きだったんですよね。

え? 僕ですか。

僕は今でも故郷のあの子のことが……。

なんでもありません。

でも、彼女はあなたのことを慕っていました。

ええ、本当ですよ。
誰から見てもそうだったじゃないですか。

勇者様は彼女を殺したは誰だと思いますか?

心臓をひと刺しです。
そんなこと誰ができるでしょう?
あの最強の騎士である彼女に。

決まってますよね。
勇者様です。

ええ、そうです。
あなたですよ。

彼女はあなたにだけは気を許していましたからね。

何を言ってるんですか。
あなたでしょう?
いえ、あなたでなければいけないのです。

僕、変身魔法ってあんまり得意じゃないんですよ。
でも、頑張って勇者様になっちゃいました。

そして、彼女を――。

だから、勇者様じゃないと駄目なんです。
ちゃんと目撃者も作っておきましたから。

そうですね。
説明してあげてもいいかもしれませんね。
あなたは今から死にますから。

いやぁ、僕、勇者様のこと大っ嫌いなんですよね。
ちなみに彼女のことも嫌いです。

いえ、別に僕は魔王軍ってわけじゃないですよ。
敵じゃありません。

ただただ、気に入らなかった。

善人も悪人も利用すればいいじゃないですか。
奪えばいいじゃないですか。
踏みにじればいいじゃないですか。

優しいですねぇ?
本当に優しい。

吐き気がします。
その上っ面の偽善。

ああ、もう本当に。

は?

あはは、僕だって元はこうじゃなかったんですよ。

守りたいと思っていました。
救いたいと思っていました。
ずっと、ずっと。

誰のせいでこうなったか知ってます?

お前らのせいだ。

僕はね、世界なんてどうでもよかったんです。
あの子だけを守ることができたら、あの子だけを救うことができたら、それでよかった。
なのにお前らが、無理矢理僕らを引きはがした。

おっと、剣を抜きます?
まあ口喧嘩で済ませるつもりはないんですけど。

さっき言った通り、あなたには死んでもらいますから。

いいえ。あなたは僕に勝てません。
だって、彼女のこと殺したくないでしょ?

ええ、彼女。
あなたの大事な騎士様です。

死んでませんよ。
ちょっと監禁してますけど。

いやいやいや。
いつ? 誰が? 殺したなんて言いました?

はい、言ってません。
彼女は生きています。

というのは嘘なんですが、これも嘘かもしれませんね?

さあ、ここで問いましょう。

あなたが死ぬか、彼女が死ぬか。

どちらかには慈悲をかけてあげてもいいなと思っています。
ええ、せめてもの恩情です。

一緒に旅をしてきた仲じゃないですか。

ちなみにここで僕の首を落とすなんて真似してみてください。
彼女もいっしょにおさらばです。

さあ、どうします?
勇者様。

やっぱり、あなたならその答えを出すと思っていましたよ。

じゃあ、そのまままっすぐ歩いてください。
五メートルほど行ったところに魔法陣がありますのでそちらで少しお待ちを。

それでは、はじめましょう。

燃やせ。そして、灰にしろ。
[[rb:炎の処刑人 > フレイム・エクセキューショナー]]。

さようなら、勇者様。

はぁ、やっと終わった。

勇者も死んだ、か。
まさか、あんな嘘に騙されるなんて。
馬鹿正直とは言われていたが、ただの馬鹿だな。

これで、僕は自由だ。
あの二人に愚図だのろまだと見下される日々も終わった。

やっと村に帰れる。
あの子のもとに。

いや、僕はもう人殺しだ。
しかも、勇者を殺したとんでもない大悪党だ。

あの子に合わせる顔がない。

それに、いずれ追手も来るはずだ。
僕の罪なんてすぐにばれるだろうし。

あはは、あはははははは!!

この世は地獄だな。

だけどさ、これだけは言わせて欲しい。
僕は変わってしまったけど、君への思いだけは変わらない。

大好きだよ。
僕の最愛の――。

【終わり】

***

※「炎の処刑人」はルビ通りである「フレイム・エクセキューショナー」でも、そのままの読みである「ほのおのしょけいにん」でもどちらでも構いません。
 どちらもかっこいい。
クレジット
・台本(ゆるボイ!)
勇者パーティの魔導士は。
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
シノト
ライター情報
主に女性演者様推奨の台本を書いています。

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また、内容が変わるアレンジはおやめください。

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