ヴァンパイアハンターであるあなたが追うのはドMでよく喋る吸血鬼。
今日もひたすら蔑んでほしいだ、斬ってくれだ、なんだかんだ言ってくる。
お前、本当になんなんだ――。

pixivでも投稿しています。

こんばんは、ヴァンパイアハンターさん。

今夜は月が綺麗ですね。

二重の意味で。

ええ、だって私はあなたが好きですから。

確かに私は吸血鬼です。
しかし、それはあなたを思う気持ちと何も関係がない。

もう一度言いましょう。
私はあなたのことが好きです。

だから、こうしてあなたに会うために後をつけていたんです。

おっしゃる通り、ストーキングです。
得意なんですよ、こういうの。
ドヤッ。

ああ、いいですね。
あなたのその嫌そうな顔。
大好きです。

本当に好きで好きでたまらないので――。

もっと蔑んでくれませんか？

そうそう、その目です！
まるで、ひとつだけ取り入れ忘れた洗濯物を見るような目！

諦めと憂いと苛立ちの混ざったその目です！

いや、そういう日に限って雨だったりするんですよね！
ええ、わかります！

はい！
ということでいつも通り戦いましょう！
ほら、早く！

私のこと、斬って♡

どうして、剣を向けてくれないんですか！？

あなたから与えられる痛みが私の悦び。
ご褒美なんです！

ほら、この世って生きているだけで苦痛じゃないですか？

正直、ヴァンパイア界も厳しいんですよ。
吸血音、動画投稿サイトで規制されちゃったじゃないですか。
宣伝活動がね……上手くいかないんです。
あなたもヴァンパイアになりませんか、みたいな。

はぁ……私も宣伝部なんでいろいろ回ってるんですがね。
上手くいかなくて。

生きてるだけで褒められていいと思うんですよ。
生活に潤いが欲しいんですよ。
つまり、あなたからのご褒美が欲しいんですよ！

その目で見られるのは大好きですよ！
でも、もっと痛いのがいいです、ご主人様！

あ、すいません。
私、いつも心の中であなたのことをご主人様って呼んでいて。
ええ、私はあなたの下僕という設定で。
この設定、めちゃくちゃ妄想がはかどるんですよ、ええ。

どうしてそんなに痛いのが好きか？

はぅ……。
まさかあなたから質問していただけるなんて。
嬉しい……私、すっごく嬉しい。

お話しましょう。

私は吸血鬼。
あなたもご存じの通り、不死の存在です。

斬られても、刺されても、何をされても、大体死にません。

でも、それってつまらないですよね？

私はね、人間の、痛みに苦しみ、逃れようと足掻き、最後に絶望する様が大好きなんです。

とっても可愛らしいじゃないですか。

だから、私もそうなりたい。

そうです。
私は人間ごっこをしたいんです。

痛くて、痛くてたまらないのが、楽しいんです。
人間みたいに可愛い存在になれているような気がして。

分かりませんか？

じゃあ――。

（刃物の音）

ほぅら。
あなた、少し腕を切られただけでとっても痛そうじゃないですか。

その顔が、とっても、可愛い。

血を舐めてもいいですか？
とっても美味しそうなんで。

ふふ、濃厚な味。
たまりません。

（刃物の音）

ああ、やっと切ってくださいましたね！
ご主人様ぁ♡

あ、間違えました。
すいません。

やっぱり、あなたは最高です。
好きです。

ええ、あなたが私を嫌えば嫌うほど、私はあなたを好きになっていく。

あなたは私が嫌い。だからこそ、私はあなたが好き。
これはもう相思相愛ですね！

え、違う？
いや、そうでしょ。

おっと、少し深く斬りすぎてしまいましたか？
その出血量だと人間であるあなたは危ないかもしれませんね。

仕方ありません。
私と一緒に行きましょう。

まさか！
あなたを死なせるなんてことはしません！

だって、あなたは私の大切な人ですからね。

ああ、そうですね。
この際、あなたを本当に私のご主人様にしてしまいましょうか。
あなたを吸血鬼にして、記憶を消して、心を操って。

そうすれば、私はあなたに一生蔑んでもらえる。
毎日毎日、命令され、痛みを与えられ、ふふ、ふふふふ。

最高。

あ、ヨダレが……。

大丈夫です。
そうなるように、そうなりたくなるように、少しずつ変えていってあげますから。

そんなに暴れないでください。
優しくします。

だから、今はおやすみなさい。
未来のご主人様。

【終わり】

・台本（ゆるボイ！）
ドMでヤンデレな吸血鬼のご主人様にされる。
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
シノト