≪あらすじ≫
母が亡くなったことで、父の帰りは遅くなった。
姉も…持病の薬の関係で起きる時間より寝る時間の方が多い。

…家族仲はとてもいいけれど。
やはり将来が少し不安になる気持ちがある。

もし自分が体調を崩してしまったら…
そう思うと、急に苦しくなった。

…お風呂でも入って、洗い流そうか。

…わ。
弟君…か。

てっきりもう寝たのかと思ってた…。
顔合わせるの…1週間ぶりくらいかな…？

こんな夜中にどうしたの…？

…お風呂入ってたんだ。
全然わかんなかった…。

何か寝付きが悪くて…？

そっか…。
あのさ、弟君が良ければ耳かきしてあげよっか…？

あ、い、嫌ならいいよ…！？

いやそのね…私よく眠るときに…睡眠導入動画っていうのかな…。

耳かきの動画見てるんだ…。

でね、それがすっごく眠たくなるの…。
…いつも寝てばかりの私がいっても説得力ないよね…あはは…。

その…なんというか…日頃のお礼というかさ…。
たまにはお姉ちゃんらしいことしてあげたいな…って思っちゃって。

だめ…かな？

…ほんと？　
やった…。

えぇと…じゃあさ、そこのソファ座って？
膝枕…してあげる。

え…？
…耳かきといったら膝枕じゃないの？

えーなにー…？
もしかして照れてるのー…？

別に恥ずかしいことじゃないよ…。
私は、弟君のお姉ちゃんなんだから遠慮しないで…？

髪の毛が濡れてるくらい全然気にしないからさ…。

ん。
…素直でよろしい。

綿棒と耳かきとれる？

…うん。ありがと。

じゃあ早速耳かき始めよっか…。
そのまま横になってね…。

耳は両方やってあげるから…どっちが先でもいいよ。

うんわかった。
最初は右耳からだね…。

…どう？
ふふー…お姉ちゃんの膝枕気持ちいい？
片方のお耳痛くない？

？
…やっぱり少し恥ずかしいの？

…実は私もちょっとこそばゆいかも。
思えば、人に膝枕するの初めてかもしんない…。

まずはお耳チェックするね…。
あ、弟君のお耳意外ときれい…。

いつも自分でしてる…？

つい指でしちゃうんだ…。
あ～、弟君よくイヤホンしてるもんね…。
それで蒸れちゃって無意識にかいてるのかもね～…。

うーん…
じゃあ指でやってあげた方が気持ちいいのかな？

あ、でも指だと奥まで届かないや…。

指でかりかりできる外側と浅いところやって
仕上げに耳かき…にしよっか。

指入れていくね…。


【右耳:指かき】


…気持ち良さそう。

お姉ちゃんの指そんなに気持ちいいんだ。
…えへへ。

弟君の耳もちもちだよね…。
耳たぶずっと触ってたいかも…。

あーもー。
照れないの。

指で、かりかりしてるから…
耳すぐ熱くなってるのわかるよ。

あ、もっと真っ赤になった…。
弟君は照れ屋さんだなあ…


【右耳;指かき終わり】


よし…。
じゃあ次はこれで…。

うん、耳かき。
奥のほうやるから、頭少し抑えるよ～。

じっとしててね…。


【右耳:耳かき】


かりかり…。

わ…思ったより溜まってた…。

普段弟君も指でかいてるからかな？
大きいのはとれてないのかも…。

これなら片っぽの耳は最初から耳かきでやった方が良いかもねー…。

もしくは綿棒から…？

あんまり順番覚えてないや…。

んー？
片っぽも指かきしてほしいの…？

おねだり上手だなあ…。
…うんいいよ、わかった。

まぁたぶん、大丈夫だよね…。
一応…お耳チェックしてからにするね。

弟君が大好きな指は、お耳の汚れ次第ってことで…。


【右耳;耳かき終わり】


うん、いい感じ…。
かゆいところはない？

よかった…
頭の向き変えれる…？

うん。
ゆっくりでいいからね…。

位置は大丈夫そ…？
お耳触るよ…。

はーい。

じゃあ…念願のお耳チェック…。

あ～、うん。
…これなら大丈夫そう、かな。


【左耳:指かき】


さっき右耳でしてたみたいに指を入れて…。
かりかり…ごしごし…。

んー？
こっちの方が気持ちいいの？

うん。
息がお腹に当たってるから落ち着いてるのわかるよー…。

そんなに気持ちいいなら今度弟君にもしてもらおっかなー…。
弟君、男の子の割には手が細くて綺麗だし。きっと気持ち良さそう…。

ねぇ弟君は、人差し指でやられるのと…小指でやられるのどっちが好き…？

…どっちも好き？

そっかじゃあ…
…順番にしてあげるね。

(人差し指と小指で指かき)


【左耳;指かき終了】


はーい…。
弟君が気持ちよさそうだったから、つい長くやっちゃった…。

じゃあ、また耳かきで表面の汚れとっていくね…。


【左耳:耳かき】


耳かきは耳かきで…こう…見えない汚れがとれてくのが楽しいね…。

懐かしいなあ…。
昔はお母さんにこうやってしてもらってたよね。

弟君は特に好きでさ。
お風呂上がりに毎回してして～ってねだってたのよく覚えてる…。

私は…反抗期っていうのもあったのかな。
くすぐったいっていって、あんまりしてもらわなかった…。

…だけどいま思えばあのとき甘えとけばよかったなあ…って思うんだよね。

いなくなってから、ほんとそう思う。
耳かきだけじゃなくてご飯とか話とかちゃんと聞いてあげてればよかったって…。

大切なものはなくしてから気付く…みたいなね。
そんなありきたりのことを知るまで、時間かかっちゃったなあ…。

弟君。
私の耳かき…気持ちいい？

…お母さんみたいにうまくできてるかな？

そう…。
ならよかった。

…お母さんの耳かきの才能は私に遺伝したんだね。
それとも弟君が耳かき大好きなだけ…だったりして？

あ…奥に大きいのみつけた。
じっとしててね…。

丁寧に慎重に…。
…よし取れた。

見てみる…？
結構大物だよ。

綺麗になった耳の奥を…耳かきでごしごしするね。

うん。
これが好きなのだけはずっと覚えてるんだ…。

あまりにも弟君が気持ち良さそうでさ、嫌がってた私も頼んじゃったくらい…。

…ちょっと早めにされるのも好きでしょ。

あはは…お目めとろーんってしてきてる。
そのまま寝ちゃって良いからね…。
たまには肩の力抜いて、ゆっくりぐっすり寝ちゃお。


【左耳;耳かき終了】


はい、終わり…。

うん、やっぱり寝ちゃってる…。
かわいい寝顔…。

こうやって見るとまだ子供のときの名残があるなあ…。
かわいい…。

弟君、ごめんね。
…私がもうちょっと動ければ…弟君にこんな負担させずに済んだのにね。

いつも…私の立場理解してくれてるっていうけど。
私のせいで負担かけすぎてないかなって…。

体に何も不備がない人が大変な時代だもん…。
…私みたいな人がまともに働けるとこもなくて。

…いつも心配かけさせちゃってる。
ほんと…出来ないお姉ちゃんでごめんね？

…こういうときくらいはさ、昔みたいにお姉ちゃんらしくできてるかな。

…出来てるといいな。

弟君が頑張ってくれてるのはお姉ちゃんが一番わかってる…。

だから…甘えられるときはたくさん甘えてね。

ふぁあ…。
私もちょっと眠くなってきちゃった…。

だって弟君の身体いつもポカポカで暖かいんだもん…。
たまには、一緒に寝ちゃおっかな…。

ふふ…大好きだよ。
私の大切な大切な弟君…。

いつもありがとうね。

・台本（ゆるボイ！）
【耳かき】引きこもりの姉は日頃のお礼にと、寝付けない弟を耳かきで癒す。
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
鮎