ある日、女騎士団長は『悪魔が出る』という噂を聞きつけて森へやってきました。
そこにいたのは、腕の立つ剣士の男の子でした。

(林の中を歩く)

この辺か？
悪魔が出るってのは。

これは……盗賊？
とっくに死んでる。
急所を的確に斬られているな。

腕利きの剣士の仕業だな、これは。

ん？　あれは、子供か？

(後ろから)
悪魔が出ると聞いて来てみれば、ずいぶんと可愛らしい悪魔がいたものだ。

(飛び退く)
おっと、そういきり立って剣を抜くなよ。
危ないだろう。

って、問答無用か。

(剣戟音)
挨拶の一つ、したらどうなんだっ。

(剣を払う)
その剣、見たことがないな。
我流か？

(剣戟音)
ちょっとは会話をする気はないのか、君は。

(頭の中で)
小柄な割に力強い太刀筋。
確かにこの腕前なら、そこらの盗賊程度なら圧倒できる、が。

今回は相手が悪かったようだ、なっ！

(地面を転がる音)

(驚いた様子で)
君は丈夫だな。
まだ動けるのか。
気絶させるつもりだったんだが。

(盛大に腹の虫が鳴く)

アッハッハッハ！
腹が減っているのか。

ほうら、パンだぞぉ。
剣を収めたら、君にあげよう。

よだれを垂らしてる。
もう一押しだな。

私も腹が減ってきたなぁ。
早くしないと食べてしまうぞぉ。

おっ、いい食い付きだな。
そんなにがっつかなくても、パンは逃げないぞ。

何日、まともに食べてないんだ？

(５日)

５日！？
それであの動きか。

よし、パンをもう一枚やろう。

美味しそうに食べるな。
みんなからは、固くて不味いと不評なんだが。

(頭を撫でる)
よしよし、今まで頑張ってきたんだな君は。

手首を掴んでどうした？
撫でるのを止めるなと？
わかった、わかった。

その、君。私の子にならないか？

私は、この先の王国で騎士団長をしていてな。

騎士団に入って貰うことにはなるが、食べ物や寝るところに困ることはない。
近く入団試験があるが、君の実力なら問題ないだろう。

どうだ？

頷いたな。

よし、今から君は私の子だ。

名前は？　

(名前？)

ええと、君はいつもなんて呼ばれてるんだ？

(悪魔)

悪魔って、それは通り名だろう……

名前はないってことでいいんだな。
じゃあ、私の家に着いたら考えよう。

ついてこい。

体を洗って、服も見繕って。
やることはいっぱいあるぞ。

・台本（ゆるボイ！）
女騎士、悪魔を拾う
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
メロンフランスパン