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芸術の飽き
written by シノト
  • 別れ話
  • 人外 / モンスター
  • 擬人化
  • コメディ
公開日2022年10月24日 18:08 更新日2022年11月01日 13:49
文字数
2370文字(約 7分54秒)
推奨音声形式
指定なし
推奨演者性別
指定なし
演者人数
1 人
演者役柄
芸術の擬人化
視聴者役柄
クリエーター
場所
指定なし
あらすじ
ベールゴルゴン様 (https://twitter.com/kaman_zora)企画「#タイトルシャッフル台本」参加作品です。
素敵なタイトルは、企画者であるベールゴルゴン様から頂きました。
ありがとうございます!

芸術の秋。
苦しむあなたの前に現れたのはなんと「芸術」!?
それはあなたに別れを申し込む――。

pixivでも公開しています。
本編
起きた?

ボクさ、君が寝てる間に考えたんだ……。

別れよう。

え?
別れるも何も、ボクのこと知らない?
というか、不法侵入?

待って、警察呼ばないで。
あと、呼んでもたぶん意味ない。

どういうことか?
正解は――。

なぞなぞの後!

ということで、早速ですが問題です!

秋といえばなんですか!

食欲!
うんうん。

読書!
うんうん。

もう一声!

えー?

じゃあ、次。

君が飽きたものはなに?

カニクリームコロッケ?

あ、そうなの。
飽きたの?
まあ、あれだけ食べてたら飽きるか。

その顔、本当は気づいてるんだね。

正解は「芸術」です!
そして、それはボクです!

ん?
ボクの姿が不満か?

ダビンチ、ゴッホ、シェイクスピアとまあ、名だたる偉人の姿であってほしかった、と。

ふ、無理だな。
だって、ボクは君の中の「芸術」なのだからっ!

あ、待って。
警察呼ばないで。
いや、本当に呼んでも意味ないよ。

ほら、写真撮ってみ?
映らないから。
ボク。

でしょー?

だーかーらー、幽霊じゃありません!
「芸術」です!

君が手放そうとしてる「芸術」です。

やっと分かってくれた?

……。
やっぱり筆、折るんでしょ?

知ってるよ。
君がパソコンで作品を生み出してることくらい。

そんな物理的に筆を折るかどうかなんて聞いてないよ。
というか手元に筆ないでしょ。

はぁ……。
出会った頃はこんなことになるなんて思わなかったね。

ただ、毎日が楽しくて、一緒にいるだけで世界が輝いて見えた。

君は言ってくれたよね。
ボクさえいれば、なんとか生きていけるって。

でも、今は違う。

ボクがいるから、君は苦しんでる。
ボクさえいなければ、と思ってる。

そりゃそうだよね!
分かるよ。

ボクと作品を作り上げた君。
始めは反応があれば、飛び上がるほど嬉しかった。

だけど、それにも慣れちゃって。

評価してくれる人も数字でしか見れなくなって、周りと比べて落ち込んで。
そんな自分に嫌気がさして。

それでも書きたいはずだ、書けるはずだ。
そうやって、無理矢理自分を励ました。

そして、手が止まった。

何が楽しいか分からなくなった。

「飽き」がやってきたんだね。

そう「飽き」だよ。

子どもはさ、一つのものに飽きたらすぐに別のものに移れる。
大好きと言ってたのに一時間後には興味をなくしてる。
よくある話。
誰もそんな子どもを責めない。

でも、君は大人だ。
飽きてしまったものをなかなか捨てられない。
だって、君はこれが好きだと世間に公表してしまってる。
人にどう思われるか、それに縛られてる。

そう、君はボクに飽きたんだよ。

飽きたものを続けるのは苦痛でしょ。
それは仕方ないこと。

うん?

ボクのこと好き?
それ、本当?

義務感じゃない?

自分はこれが好きでないといけない。
これが好きでないのは自分ではない。

そういった思い込み。

違うよ。

ボクは君のアイデンティティではない。
ボクが消えても、君は君だ。

君としてあり続ける。

だから、別れよう。

だってさ、ボク、辛いんだ。
君が苦しい思いをしてまでボクの隣にいるのが。

だったら、いっそボクを捨ててよ。
そして、あの頃みたいな笑顔を浮かべてよ。

まあ、それをボクが見ることはないんだけどね。

当然。
君がボクを捨てれば、ボクは消滅する。

いやいや、ボクを見た瞬間不審者扱いしたのは誰だっけ?
君だったような?

ボクは忘れないぞ!
ふんっ、だ!

ふふ、冗談だって。

あのね、消滅って言ったけどさ、ボクが消えてもまた新しい誰かが君の中に宿る。
だから、大丈夫だよ。

ボクは君の中の「芸術」。

今の君にとってはボクが「芸術」なんだ。
つまり、創作イコール「芸術」ってことだね。

だけどね、「芸術」ってそれだけじゃない。

受け取ること、それも「芸術」だ。
見たり、触れたり、味わったり、匂いを嗅いだり、耳で聴いたり。

今まで君は全て創作のためと思ってきた。

だけど、いいんだ。

ただただ、感じて、受け入れる。
それも「芸術」だ。

ボクを愛してとは言わない。

でも「芸術」のことは愛してね。

きっとそれは君を幸せにしてくれる。
折れそうな心をそっと支えてくれる、そんな存在になってくれるから。

じゃあ、ボクはそろそろ行こうかな!

うん、バイバイ。

また、君が何かを書きたくなった時、会おう。
たぶんその時は、ボクではない「芸術」だけどね。

そう。

きっとそれはボクよりも素敵な存在だ。
ちゃんと大切にしてやるんだぞー。
この、このっ。

じゃあ――。

ねえ、手、放してよ。

そんないやいやして。
子どもじゃないんだから。

ボクがいない方が君は楽になれる。

もっと楽しい人生が待ってるんだ!
ほら、進みだせ!

それでも、ボクがいいの?

産めない苦しみ。
際限ない妬み。
そんな自分に対する憎しみ。

ボクといればこの先ずっと、そんな感情に振り回されちゃうんだよ。

バカじゃないの!?
もうやめときなよ!

ボクは傷つく君を見たくないんだよ!!

それは……。

嘘じゃ、ない。
君と作り上げた世界はどれも嘘じゃないよ。

たくさん悩んで、迷って、そして、いくつもの世界を作り出したね。
いや、作るっていうより見つけたって感じだったかな。

ボクは君と二人で旅をしてる気分だった。

旅の途中で、大変な目にもあったね。
それでも、最後に見た景色は――。

ご、ごめん。
湿っぽい別れはよくないよね。

待って待って、ハンカチ持ってるはず。
えーっと、えーっと。

ありがとう、といいたいけどやっぱりいい。
だってくちゃくちゃじゃん、そのハンカチ。
使うの怖いよ。

アイロンかけてないだけ?
信じるよ?
信じるからね?

ありがと。

……。
ねえ、やっぱりボクのこと離してくれないの?

そっか。

うん、分かった。

君が決めたなら。

ボクの存在はこれからも君を苦しめる。

受け取るという「芸術」に対しても邪魔をしてしまうだろうね。
これをどう創作に生かそうかって考えちゃうだろう。

それでも、ボクを選ぶのなら。

ボクは君の「芸術」で在り続けよう。

迷いはないかい?
いや、迷ったっていい。

進もう。
一緒に。

さあ、手を取って。
新しい旅に出かけよう。
クレジット
・台本(ゆるボイ!)
芸術の飽き
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
シノト
ライター情報
主に女性演者様推奨の台本を書いています。

台本使用において、アレンジなどを加えた際は、その旨をリスナー様に伝わるよう概要欄などに必ず記載ください。
また、内容が変わるアレンジはおやめください。

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私が聴かせていただきたい。よろしくお願いいたします。

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