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嘲笑いのRPG
written by シノト
  • 悪役
  • 魔王
  • 勇者
  • RPG
  • 異世界転生
公開日2022年11月08日 17:57 更新日2022年11月08日 17:57
文字数
2804文字(約 9分21秒)
推奨音声形式
指定なし
推奨演者性別
指定なし
演者人数
1 人
演者役柄
魔王
視聴者役柄
勇者
場所
酒場
あらすじ
酒場で勇者に話しかける者がいる。
気安い彼は魔王だと名乗り、そして、この世界の真実を明らかにしていく――。

作者の趣味120パーセント。

pixivでも公開しています。
本編
おーい、そこのあんた。
そう。ソワソワしてるあんた。
こっち来て一緒に飲まねぇか?

いいから、ここ座れって!

こんな酒場に一人なんて。
珍しいな。

ん?
そうだろうとも。
初対面だからな。

けど、俺はあんたを知ってる。
なぜでしょう?

正解は、あんたが勇者だからだ。

ははっ、当たってたみたいだな!

いやぁ、いろいろ聞いてるぜ?
この間は魔王軍を皆殺しにしたとか!

あ、言い方が悪かった。
壊滅させた、って方がいいな。

それにしても、あんた……。

顔がいいな。

いや、悪ぃ悪ぃ。
俺の周り、ここまで作り込まれた顔のヤツいねぇからさ。
さすが主人公。

まあ、俺も大概顔いい方だけど!

えー、だってあんた、周り見てみろよ。

顔、しっかり作り込まれたヤツ、いねぇだろ?
いわゆる没個性。
モブキャラよ。

まあ、実際モブキャラだから仕方ねぇんだけど。

そりゃ、何言ってるか分からねぇだろう。

あんたはこの世界の主役なんだから。

ほら、酒飲めよ。

なんだ? 人の顔覗き込んで。
照れるじゃねぇか。

んー?

目が赤いな?

髪は黒いな?

そして、血の匂いがするな?

さっすが、勇者様!
恐れ入りました。

そうさ、俺は魔族だ。

しかも聞いて驚けー!
魔王だぞー!

あははっ!

おーっと、剣は抜くなよ。
抜いたら、この酒場の人間全員殺すぞ?

いい顔だ。

イレギュラーなことが起こっても、性格は揺らがない、か。

いやいや、こっちの話。

まあ、席に着けや。
俺も殺し合いをしに来たわけじゃねぇ。
ただ、あんたと話がしたいだけなんだ。

そう。

よしよし、なんか奢ろうか?

そんな睨むなよ。
楽しくなっちまうだろ?

さーて、ここで違和感を覚えないか?

駄目か。
そっか。

(咳払い)

えー、さっきから、俺はあんたのことを勇者と呼んでいる。
さっきも言った通り、あんたは有名人だ。
こんな噂好きが集まりそうな酒場だったら、騒ぎにもなりそうだよなぁ?

そして、俺は魔王だと名乗った。
皆殺しにするとまで言った。
なぜ、周りの奴らは何も言わない?

聞こえてないだけ、なんていうなよ。
俺、自慢じゃねぇけど、マジ声はデカいから!

ほら聞けー、お前ら!
この勇者のせいで、お前らは今から一人残らず死ぬぞー!

ほら、誰も反応しない。

不気味だろ?

それはな、あいつらがNPCだからだ。

あ、NPCって分かんねぇか。
ノン・プレイヤー・キャラクター。
プレイヤーが操作できないキャラのことだ。
しかも奴らはNPCの中でもモブだ。
出来る会話が限られてる。
要するに作り込まれてねぇんだよ。

うん、分かんねぇだろうな。

この世界ゲームっていう概念がないもんなぁ。
説明難しいな。

まあ、それはいっか。

さて、俺は魔王として、そして、一人のプレイヤーとしてあんたに尋ねたいことがある。

あんたはなぜ戦う?

うん。

うん。

へぇ。

はぁ。

(拍手)

見事な答えだ。
設定された通り、まっすぐで明るくて、人好きのしそうな性格だな。

うーん、見事すぎてつまらん。

いやあ、俺も外側にいた時はあんたのことが好きだったよ。
でも、こうなっちまって何度もあんたに殺されてるとなぁ……。

流石に、その心根、捻じ曲げたくなるよな。

あはは。

あはは……。

あー、嫌なこと思い出した。

ん?

俺もあんたとして俺を葬ったことがあるってことだよ。
今となっては「はいはい、そんなこともありましたねー」って感じ。

何のことかさっぱりって顔だな。
そうだろうとも。

だけどさ、お前もどこかで気づいてるんじゃねぇか?
この世界のおかしさに。

窮屈さを感じてるんじゃねぇか?
勇者である自分自身に。

俺が覚えてる限りでは、あんたが一人酒場に来るシーンなんてなかったはずだ。
設定上未成年だろ、確か。
いろいろ引っかかっちまうからな。

つまり、今、あんたはあんたの意志で動いてる。

なんか変な感じするんだろ?
ソワソワするんだろ?

道を外れているような気がするんだろ?

だってそうさ。
これは筋書きにないシーン。
あんたが作り出した新たな一幕。

いうならば、バグだ。

そう、あんたが意志を持つ。
それは致命的な誤りだ。

あんたは設定に沿って、シナリオ通りに喜怒哀楽を味わう、表す、考える。
それがこの世界の理。

自我に目覚めつつあるあんたなら分かるだろう。
理という名の檻の存在、そして、その不快さが。

いい顔だ。

なあ、確かめてみないか。
俺と一緒に。

この違和感を。
この世界の正体を。

決まってるだろ?
壊せばいいんだ。

あんたが勇者を、主人公を辞める。
そうしたら、この世界の破綻は始まる。

プレイヤーはびっくりだな。

あちら側の人間はあんたを引き戻そうとするだろう。
だが、それに抗え。運命を塗り替えろ。
俺が手伝ってやるからさ。

操られた人生なんて嫌だろ?

ああ、あんたは操られてるんだ。
手に収まるくらいのコントローラーって言う小さな機械で。

あ、いや。
確かこのゲーム、キーボード操作もできたっけ。
まあいいか。

さあ、どうする?

俺と一緒に世界を潰さないか?

……。
え、ちょっと返事くれよ。

黙ってる時間長くねぇ?

あ、なるほど。
プレイヤーが入ったか。

ってことは、今のあんたには意志がない。
つまんねぇの。

さて、と。

おーい、見てるんだろ。
画面越しからこんにちは、魔王です。

RPG楽しんでるかぁ?

うんうん、ならいい。

そっちの声は俺に聞こえないんだけど。

さて、さっきの会話どこから見てた?

まあ、簡潔に言うと魔王が勇者を唆してたんだよ。
そうそう、俺が、今あんたの動かしてる勇者様を。

何でそうしたかというとだなぁ。

俺はこの世界が大っ嫌いなんだ。

いやぁどうもさ、俺、最近流行りの異世界転生ってヤツをしちまったみたいでさぁ。
気が付けば魔王よ。
酷くない?

どれだけ逃げようが何しようが勇者に殺される運命からは逃れられない。
そりゃ嫌になるよな、こんな世界。

ってことで、運命を変えるならまず勇者を変えようってな。
分かった?

さあ、これが演出か、それとも本当か。
今のあんたには判別が付かねぇだろうさ。

だけど、分かる。
近いうちに分からせてやる。

この勇者様を俺の手に堕としてな。

まあ、でも安心してくれ。
今のところ俺はこのゲームの世界から出られない。
あんたに実害を及ぼすことはねぇよ。
だから、そんな怖がるな!

だけど、そうだなぁ。

あんたがもし怖くなって、このゲームから離れれば、この世界は崩壊する。
つまり、俺のものだ。

世界を守りたいか?
それとも怖気づいて逃げ出すか?

さあ、選べよ。

おお! 勇者様が動いた!
ってことは戦うってことでおっけー?

声聞こえねぇから、分かんねぇけどたぶんそういうことだよな!

じゃあ、はじめようか。

あ、待って待って。
最後に注意事項だけ言っておかねぇと。

俺は手段を選ばない。
つまり、主人公に感情移入してるとあんたの精神、ぐちゃっぐちゃになっちまうはずだ。
やめるなら今のうちだぞ?

いいか?
いいのか?

くくっ。
いいんだな?

ふはははははは!
最高。

長くなっちまったな。
今度こそ、はじめようか。

俺は世界を壊す。
あんたは世界を守る。

そして、俺は――。
あんたの心も壊してやるよ。

絶対、絶対にだ。

楽しみにしとけよ?
クレジット
・台本(ゆるボイ!)
嘲笑いのRPG
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
シノト
ライター情報
主に女性演者様推奨の台本を書いています。

台本使用において、アレンジなどを加えた際は、その旨をリスナー様に伝わるよう概要欄などに必ず記載ください。
また、内容が変わるアレンジはおやめください。

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私が聴かせていただきたい。よろしくお願いいたします。

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