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嫉妬に塗れたハッカーは機械人形になりたい。
written by シノト
  • 嫉妬
  • 切ない
  • SF
  • 監禁
  • 警察 / 刑事
公開日2022年11月15日 07:56 更新日2022年11月15日 08:31
文字数
2836文字(約 9分28秒)
推奨音声形式
指定なし
推奨演者性別
指定なし
演者人数
1 人
演者役柄
天才ハッカー
視聴者役柄
警部
場所
部屋
あらすじ
かつて命を救った子どもに監禁された。
理由を聞けば、「僕はアンドロイドであるあなたになりたい」という。
己は人間なのだが――。

七つの大罪シリーズ・第二弾【嫉妬】
※シリーズと銘打っていますが、ひと作品ごとに完結しています。続き物ではありません。

pixivにも投稿しています。
本編
おっはよーございます!
目は覚めましたか、警部さん?

はい、そうです!
僕こそが将来有望正義のハッカー!
その名も――。

あ、別に言わなくていいですよね。
知ってますもんね。

いつもお世話になっています!

そうだ!
昨日いただいたケーキ、でしたっけ?
あれ、とっても美味しかったです!

何やらかつての人類はケーキを食べて誕生日を祝ったらしいですね!

確かに昨日は僕の誕生日。
人間の僕のためにわざわざ作ってくれたんですか?

もうっ、警部さんったらやさしー。

さすが、アンドロイドにも人間にも一目置かれる存在!
この退廃した世界の希望!
よっ! 史上最高のアンドロイド!

え?
あなたはアンドロイドでしょ?
何言ってるんですか?
人間なわけないじゃないですか。

冗談はよしてくださいよー。

あ、確かにそうですね!
警部さんにとってはこの状況が冗談のよう、ですよね。

うんうん、確かに何が起こってるか分からないと思います。

えっとね。
僕、警部さんを監禁しちゃいました!

わぉ、眉ひとつ動かさないなんて。
ポンコツアンドロイドとは違いますねー。

あ、いえいえ。
こっちの話です。

さてさて、話を戻して。

警部さんは巷を騒がすアンドロイド誘拐事件の犯人を追っていた。
怪しい影を見つけ、後ろを追っていったところ、なんとなんと!
十を超えるアンドロイドに囲まれた!?

どうも彼らは正気を失っているらしい。
警部さんは優しいですから、彼らを傷つけることはできず、バカなアンドロイドに殴られ気を失ってしまいます。

目が覚めると、何やら油臭い部屋。
手足は縛られて動かない。

目の前には昔、命を救った子ども。

ああ、なんてドラマチックなんだ。
悲劇を通り越してつまんない喜劇ですよ。

あ、そうだ。
警部さんを殴ったアンドロイドはちゃーんと処分しておきました。

なんでって……。
出来損ないだから?

ちゃんとリサイクルゴミに出しましたよ!
僕はえらいんです!
どやぁん!

本当に警部さんは冷静ですね……。

なんか、こう、「いやいや、リサイクルゴミとかそういうことじゃないから!?」みたいなツッコミを待ってたんですけど。
いきなり核心に迫っちゃう……。

いや、嫌いじゃないですよ。
そういうのも。

いや、いいんですけど。
いいんですけど!

ほらぁ! やっぱり単刀直入!!

そうですよ! 僕がアンドロイド誘拐事件の犯人です!!

あ、今右眉毛ぴくってした。
警部さんにサプライズをお届けできて、僕は嬉しいです!

目的?
そうですね。

言っちゃおうかなぁ?
どうしよっかなぁ?
照れちゃうなぁ?

あの、ノーリアクションやめてくれません?

知ってたけど。
警部さんの性格はちっちゃい時からよく知ってますけど!?
ホントにリアクション薄いですよね!?

そう!
そこで謝るのがあなた!
優しいな!

あ、はい。
理由ですね。
お話します。

実は僕、アンドロイドになりたいんです。

いや、だから、アンドロイドになりたいんですって。

だーかーらー!
アンドロイドになりたいの!

もう! 何で耳遠い振りするんですか!?

「耳はよく聞こえてる、理解が追い付かないだけだ」(警部のモノマネ)

キリッと言っちゃって! かっこいいな!
ばーかばーか!

はぁ……。

そう、僕はアンドロイドになりたいんです。

だってそうでしょう?
人間ってすごく汚いじゃないですか。

内臓、体液、繁殖、生理現象。
もう生き物としての在り方が気持ち悪い。

その上、あまりに入り混じった感情や考え。
心と呼ばれるものが僕は大っ嫌いなんですよ。

その点、アンドロイドは美しい。
ボディも感情も、整然としている。
コードによって統制された理想の命。

だから、アンドロイドになりたいんです。

そして、ね?
そのアンドロイドの頂点にいるのがあなたです、警部さん。

僕はあなたほど美しい存在を知らない。
高潔な存在を知らない。

あのですねー。
僕はあなたになりたかったんです。

憧れでした。
いつかあなたのように、と僕は頑張った。

本当に頑張ったんですよ?
必死に勉強もしましたし、弱い自分にも向き合ってみた。

だけど、僕はあなたになれなかった。
どれだけ足掻いても無様な僕でしかなかった。

仕方ないじゃないですか。
僕は人間なんだから。

憧れは絶望に。
そして、絶望は嫉妬に変わりました。

アンドロイドが羨ましい。
警部さんと同じ存在であるあいつらが妬ましい!

警部さんのようになれる、そんな素質を持ったあいつらが!

それでね、僕、いっぱい誘拐していっぱい解体していっぱい研究しました。
でも、よく分からなかったや。

どいつもこいつもポンコツで警部さんに近づく手がかりは何もなかった。

向こうの部屋に行方不明になったアンドロイド共のバラバラ死体があります。

やったぁ、これで真相解明。
警部さんが僕を捕まえて事件解決、ですね。

いいですよ、それで。

でも、その前にあなたの全てを見せてください。
どうプログラミングされているのか、教えてください。

まだ人間だなんて冗談を言うんですか?
往生際が悪いですよ。

ほら、首元出してください。
他でもない警部さんですから痛めつけたくないんです。
電源落とさせてくださいよ。

……あれ?
電源が、ない?

え? え?

いや待て、あ、そっか!
背中に埋め込まれてるタイプですか!

服脱いでくれます?

あ、セクハラですね。
すいません。

だーか-らー、あなたはアンドロイドでしょ?

だって、歳取ってないじゃないですか。

は? もともと老け顔?

いやいや、ご飯食べてるの見たことないですよ?

固形食糧を十秒以内で食べる特技がある?

え、いや、その……。だって、だって……。

あなた、あの時僕を助けて刺されたじゃないですか。
あんな傷を負って人間が死なないわけがないじゃないですか。

わっ! 待ってください!
急に服を脱がないで!

え、なに……この傷……。

しゅ、修繕してないだけですよね?
あ、僕、アンドロイドの整備も得意なんで皮膚張り替えますよ!

首を横に振らないでください……。
やめてください……。

ありえない、ありえない……。

あなたが人間だなんて……。

嘘だ……嘘だ!

人間なんて気持ち悪いものなんだ!

あなたみたいな高潔な存在が!
人間のはずがない!

僕と同じ生き物のはずがない!

違う! 違う! 違う!

うわああああああ!
あああああああ……あはは、あはははははは……。

そっか。
警部さん、人間だったんだぁ……。

へぇ……へぇ……。

僕、あなたが羨ましいなぁ……。
あなたになりたいなぁ……。

おんなじ人間だもの……。
なれるよね……?
なれないかぁ……。

うん、僕にはなれないなぁ……。

だって、僕だもん……。

だから、さ……警部さん……。
僕の元まで堕ちてきてよ……。

無様になってよ……。
醜くなってよ……。

ねぇねぇねぇねぇ、警部さん……。

あはは……あはは……。

まだ、僕を心配してくれるんだね。
まだ、僕を救おうとしてくれるんだね。

あはは……あははははははは!

ああ! もう!
大好きだよ、警部さん!
そして、大っ嫌いだよ!

あまりに綺麗すぎて、僕おかしくなっちゃいそうだ!
あはは! もうおかしくなってるか!

ああ、妬ましい!
その眩しさが疎ましい!

ああ、ああ!
あはははははは!

もう決めた!

引きずり堕としてやる!
ぐちゃぐちゃに汚してやる!

あなたを! この手で!

はぁはぁ……はぁ、はぁ……。

あはは……あはは……。

……ごめんね。
クレジット
・台本(ゆるボイ!)
嫉妬に塗れたハッカーは機械人形になりたい。
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
シノト
ライター情報
主に女性演者様推奨の台本を書いています。

台本使用において、アレンジなどを加えた際は、その旨をリスナー様に伝わるよう概要欄などに必ず記載ください。
また、内容が変わるアレンジはおやめください。

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私が聴かせていただきたい。よろしくお願いいたします。

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