異世界に転移してしまったあなたを助けたのは、怠惰な人間。
それでも、愛してくれた。だから、あなたは今日も人を殺す。

七つの大罪シリーズ・第四弾【怠惰】
※シリーズと銘打っていますが、ひと作品ごとに完結しています。続き物ではありません。

pixivでも投稿しています。

おかえり。

あーあ、今日も血まみれになっちゃって。

おいで。
拭いてあげる。

うん、めんどくさいけど。
愛する君のためだからね。

どうしたの？
浮かない顔して。

またアイツらに酷いこと言われたんだ。
気にしなくていいよ。

僕は君を愛してる。
本当だよ。

ね？

ほら、ぎゅっとしてあげる。

ぎゅー。

分かってくれた？
僕の気持ち。

まだ、ダメか。

確かに君は人間だね？
奴らと同じだ。

でも、君は違う世界から来たんだろう？
だったら、僕と同じ。
異端者だよ。

そう、僕も君も外れもの。
奴らの敵だよ。

忘れたかい？
君がこの世界にやってきた時、奴らは何をした？

君を迫害しただろう？

僕は君に何をした？

そう。
君を救った。
そして、こうして愛し合ってる。

どちらが味方かなんて、分かり切ったことでしょ？

うぅん、ダメかぁ。
今日はよっぽど変なことを言われちゃったんだね。
可哀想に。

なるほど。
君だけが戦いに出るのはおかしい、と。

そっか、君もそう思ってたんだね。
僕も一緒に戦ってほしいんだね。

ふふ、ヤダよ。

だってめんどくさいから。

君も知ってるでしょ？
僕って本当に怠惰なんだよ。

そういう生き物なんだ。
ごめんね。

その代わり、毎日戦ってくれる君を、僕は甘やかしてあげる。
居場所を与えてあげる。

ウィンウィンの関係でしょ？

ああ、そっか。
僕の愛情を疑ってるんだね？

本当に自分が愛されているか。

君は心配性だなぁ。
愛してるよ。

なんて、嘘だ。

ふふ、あはは！
可愛い顔。

うん、そうだよ。
僕は君を愛していない。

僕の怠惰な生活を維持するための道具さ。

だって、君とっても都合がいいんだもん。

異世界から来た君はとてつもない力を持っている。

本当はね？
君は僕を殺す役割を与えられるはずだったんだ。

だけど、そんなの嫌じゃないか。
僕はのんびり暮らしたいだけなのに。

だから、君を貶めた。

そうだよ、君がこの世界に来た時に君を傷つけたのは僕が雇った人間共だ。
ちょっとめんどくさかったけど、君を手に入れるためなら仕方ないよね。

ああ、そっか。
どうして僕が命を狙われているか、聞いちゃったんだね。

そう。
僕は昔、たくさんの国を滅ぼした。

僕が悪魔って言われる理由はそこにある。

あの頃は面白かったんだ。
ちょっと突っついただけで、皆喧嘩を始める。

ピリピリした人間達の心を操るのなんて簡単だった。
あはは、思い出すだけで楽しくなっちゃうな。

でも、さ。
飽きた。

今は怠惰な生活が一番幸せ。

だから、大丈夫だよ。
僕はもう悪さをしない。

あは、あははは！

その通りだね。
君に人殺しをさせてるね。

何のため？

僕自身を守るため。
そして、娯楽だよ。

君が血まみれになって帰ってくるのが面白くって、あんなに純粋だった君が僕に汚されていくのが面白くって。
こんなに愉快なものがあれば、外に娯楽を求めなくてもいいでしょ？

いいよ。出て行っても。

でも、君はできないよね？
だってここが居場所だもんね？

君がここにいてくれるなら、僕はずっと君に愛を注いであげるよ？
偽物だけど、とっーっても甘い愛を。

それに、外は敵だらけ。

君は殺しすぎた。
僕の元から去ったら、すぐに捕まって死刑だ。

あーあ、泣いちゃった。

ごめんね。
嘘だよ。
全部嘘。
愛してる。

ほら、こんな言葉だけで、君の心は満たされちゃうでしょう？
僕は知ってるよ。

だって、君は僕に依存しきってるものね？

ふふ、大丈夫だよ。
君がいい子にしてれば、僕はずっと君の味方だよ。

君が望むものをあげる。
身体も心も満たしてあげる。

だから、おいで。
ぎゅーってしてあげる。

ふふ、いい子だね。

うん。
これからもずっと甘やかしてあげるよ。

だから、安心して溺れてね。

一生離さないよ。
僕の大事な道具さん。

・台本（ゆるボイ！）
怠惰な悪魔に魅入られて
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
シノト