身に覚えのない国家反逆の疑いをかけられ、追われる身となったあなた。
あなたのメイドは、それでも従者としてついてきてくれました。
彼女に信頼を寄せるあなた。すべては彼女の計画とも知らずに……

(息を切らしながら走る)
あっ、こっちにも追手が。
ご主人様、こちらへ。

ただ背が高い草が生い茂っているだけですが、雲が出ていて月明かりもない今夜なら、ここに身を潜めていれば見つかることはないかと。
追手をやり過ごした後、眠る場所を確保しましょう。

雨、ですね。
お風邪をひいては大変です。
すぐに雨をしのげる場所を探しましょう。

(でも、追手がまだいるかも)

追手であれば、問題ありません。
雨の中では視界が悪くなります。それに雨音が私達の足音をかき消してくれるはずです。
さ、参りましょう。

あばら屋で申し訳ありませんが、ここで夜を明かしましょうか。
お顔がすぐれませんね。どこか怪我でもなさいましたか？

(どうして、こんなことに)

どうか、気を強くお持ちください。
私も悲しいです。
ご主人様が、国家反逆の疑いをかけられ、勘当された上に追われる立場になってしまわれるなんて……
きっと、何者かがご主人様の失脚を狙って濡れ衣を着せたのでしょう。

(私のことを君は信じてくれるんだね)

何をおっしゃいますか。主を信じるのは、従者として当然です。
身分にかかわらず人々に接し、この国の問題を洗い出し解決しようと尽力する姿を一番近くで見てきたのは誰だとお思いですか？
国家反逆だなんて、ご主人様には一番縁遠い言葉です。

ご主人様は一人ではありません。私がついています。
ご自身の潔白を証明なさるにしても、どこか遠く異国の地に身を隠されるにしても、私はついてゆきます。
私は、これまで以上にご主人様をお支えしたいのです。

(主人、泣き出す)
ご主人様？　泣いていらっしゃるのですか？

(巻き込んですまない)

謝らないでください。私は巻き込まれたとは思っておりませんよ。
私は私の意志でここにいるのです。

どうぞこちらへ。
抱きしめて差し上げます。

ぎゅー。
もっと、私に頼ってくださいね。

さぁ、今晩はもうお休み致しましょう。
ここは安全です。
どうぞお眠りください。

もう眠ってしまわれました。
お疲れだったのですね。
無理もありません。
追われることは、精神的にも肉体的にも疲弊しますから。

申し訳ありません、ご主人様。
政敵に捏造した反逆の証拠を送り付け、あなたをその地位から追いやるように仕向けたのは私なのです。

でも、悪いのはあなたなんですよ？
世のため人のためと、私のことを見てくれなかった。
私は誰よりも想っていたというのに……

誰もがあなたを疑い、悪人だと罵る。
そんな中、信じてくれるのは私だけ。
そうなれば、あなたは私を頼りにせざるを得ない。

そして、いずれ私に依存してくれるようになる。
私だけを見てくれるようになる。

今はどん底かもしれませんが、必ずあなたを幸せにしてみせます。

どんな手を使ってでも。

・台本（ゆるボイ！）
ヤンデレメイドと落ちぶれ貴族
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
メロンフランスパン