いいんです、いいんです、言わないでください、本当にごめんなさい、今すぐ辞職させていただきます。

20200623

渡辺　ＢＬが好き　女性推奨
小林　渡辺が好き　男性推奨


小林：最近よく渡辺さんからの視線を感じる。これってもしかして、俺押したら行けるんじゃないだろうか……。
渡辺：今日も小林さんとの種々様々な絡みが見られて楽しい。部長×小林さん、小林さん×後輩、同僚×小林さん。いや、リバも捨てがたい。なんにせよ、大変な目の保養。当人にさえ伝えなければ、だれも傷つけることはない。私だけのひっそりとしたＢＬの楽しみ方……。
0：間
小林：あのさ。
渡辺：え、あ、はい。あの、なにか。
小林：いや、何かっていうか、……最近、渡辺さんと良く目が合うなって思って……。
渡辺：え、あっ！　す、すみません！
小林：あ、いや、いいんだ、謝らないで。
渡辺：いや、でもその……。気持ちが悪いですよね。
小林：そ！　んなことないよ！！　俺としては嬉しい。
渡辺：嬉しいんですか？！
小林：え？　う、嬉しいよ？　君に見てもらえて嬉しい……。
渡辺：え……小林さんってちょっとだけ変わってますね……。
小林：変わってるかな……。君のことを気になってる人は多いからね。俺だけじゃないと思うよ。
渡辺：え！？
小林：え？
渡辺：え、待っ、私、そんなに注目されてます？
小林：注目っていうか、……その……。
渡辺：あああああああ、いいんです、いいんです、言わないでください、本当にごめんなさい、今すぐ辞職させていただきます。
小林：なんで！？
渡辺：いやだって、そんな私、人様に迷惑かけないようにこっそりと生きてきたのに、まさか皆さんに気づかれてしまっていたなんて、もうこれからどうやって皆さんの顔を見ればいいんですか、退職させていただきます！
小林：待って待って、それは困るよ。
渡辺：そ、れは、あれですか……。これをネタにゆする的な……。
小林：ゆすりはしないけれど、……そうだな、そうやって付け入る隙をせっかく見せてくれてるから、ちょっとくらい付き合ってもらおうかな。
渡辺：いやいやいやいや、私はいいので、部長や後輩くんや、田中さんとお願いします！
小林：なんでそこで田中の話が出てくるの。
渡辺：いや、ちょっとマイブー……ブー……、ブータンに行ってきたって言ってたので。
小林：え、あいつブータンに行ったの？　俺には一言もそんな話しなかったのに、小林さんには話したんだ。
渡辺：え、あ、いや、ははははは……。
小林：渡辺さん。
渡辺：ひぇ。
小林：田中の事、好きなの？
渡辺：え？
小林：いや、確かに良く考えたら、最近、渡辺さんと良く目が合うな、これはチャンスかなとか思ってたんだけれどさ、田中も傍にいたなって思いだしたから。これ全部俺の勘違いなのかなって……。
渡辺：は、え？
小林：好きなの、田中の事。
渡辺：好きっていうか……。
小林：そういうのいいよ。はっきりと言ってもらってもいいかな。
渡辺：いや、あの、言ったら絶対に引くと思いますし……。
小林：人が大切にしている想いをどうして俺が引くと思うの？　君の中で俺はそんなにも薄情な男なのかな。
渡辺：（小声）あー……、こういうの私にはいらないんだよなぁ……。
小林：は？
渡辺：え？　いやいやいやいやいやいや！！！！
小林：それで？　田中の事どう思ってるの？
渡辺：本当に、引きませんか？
小林：引かないよ。君の言うことだからね。
渡辺：なら、言いますけれど……。
小林：うん。
渡辺：小林さんとの絡みは誰をとっても本当に最高で良き良きだなって！！！！
小林：ん？　……ん？？？
渡辺：あ、あのですね、角田部長との絡みも大変お美しく、その、大人の魅力あふれていてそれはもう、神が愛した二人だなと思うのですけれども、後輩の日暮くんとの絡みもこう、普段の小林さんの雰囲気とはまた一線を画す感じで何とも言えず、あのお兄ちゃん的な感じがまた「しゅき……」ってなりますし、ああああ、でも私としてはやはり、一番推したいのは田中さんとの絡みでして。やっぱり同輩としての気の置けない雰囲気が二人の距離をより一層こうグっと……。こ、小林さん？　小林さん、あの、どうしました？
小林：えっと……。どういうこと？
渡辺：え？
小林：え？
渡辺：あの……私がいつも小林さんのこと見まくっちゃってたことをお咎めに……。
小林：お咎めるつもりは毛頭なかったよ。
渡辺：私がみなさんのことをあんまりにも凝視してるから気持ち……。
小林：悪がったりはしてないね。
渡辺：え、じゃあなんで私に声をかけたんですか？
小林：だから……、最近よく目が合うから……。
渡辺：あ、はい……見てますから……。
小林：ごめん。さっきの話半分くらいしか理解できなかったんだけれど。
渡辺：あっ。
小林：え、なに。
渡辺：あああああああああああああああああああ！！！！！！！！
小林：ごめん、なになになになに！！！！
渡辺：殺してください！！！！！
小林：物騒！！！！！！　え、待って待って待って待って、なんでなんでなんでなんで。
渡辺：違うんです、違うんです、決してあの！　別にその！　殺してください！！！
小林：生きて！！！！！！
渡辺：……。
小林：……。
渡辺：殺せぇ……。
小林：いや、蚊の鳴くような声で言われても……。
渡辺：……。
小林：渡辺さんってさ、実際こうしてしゃべってみるとかなり印象違うね。
渡辺：は？
小林：あ、いや。ちょっと今のは失礼だったかな……。なんていうかさ、いつもにこにこしてて笑顔だし、いいなって思ってて……。だから、あんなに……元気なのはちょっとびっくりしたけれど、いいと思う。
渡辺：すみません、うるさくて。めっちゃ言葉選んでいただいてすみません。
小林：すごい卑屈だね！　……俺が君に声をかけたのは、渡辺さんが俺に興味を持ってくれてるからかなって思ってたんだけど、俺が思ってたのとは少しだけ違ったみたいだ。
渡辺：……すみません。
小林：俺が、他の人としゃべってるのを見るのが楽しいの？
渡辺：楽しいです……。
小林：俺はこうして渡辺さんと話してるのも楽しいよ。もっといっぱいいろんなこと聞いてみたい。
渡辺：……。
小林：渡辺さんは、一緒に話してくれないの？
渡辺：……外から、眺めているのがちょうどよくて……。
小林：俺は渡辺さんと話したいな。
渡辺：壁か空気になりたい……。
小林：ふふっ、なにそれ……。俺は、渡辺さんが壁とか空気じゃなくてよかったなって思ってる。おかげで君の、いろんな表情が見られた。
渡辺：そう！　いう！　のは！　（小声）私じゃなくて部長や後輩や田中さん相手にやって欲しい……！
小林：遠くから見てるのはきっと、すごくすごく楽しくて、……でも時々ちょっとだけうらやましくはならない？　仲間にいーれて、ってならない？
渡辺：あんまり。
小林：あんまりかぁ……。困ったなぁ、どこまでも俺たちの会話は平行線だ。
渡辺：あの……。
小林：ん？
渡辺：怒らないんですか。自分のこと、一種の観賞用みたいな感じにされてたって。人権もへったくれもないじゃないですか。
小林：はっはっはー、しょうがないよね、俺イケメンだし。
渡辺：メンタル強し！！
小林：あ、でも、そうだな……。確かにちょっと傷ついて……。
渡辺：うぐっ。
小林：結構傷ついて……。
渡辺：うぐっ。
小林：かなり傷ついてるから、
渡辺：うぐっ。
小林：ちょこっとだけゆすっていい？
渡辺：なんなりと！！
小林：その勢いはなんなんだろう。
小林：……そうだな。これから一緒に飲みに行こう。でもって、俺が渡辺さんと目が合うようになってどんなふうに思ってたのか、ちゃんと話すから、誤魔化さずに聞いてくれる？
渡辺：お安い御用です！
小林：安く済ませる気はないからね。
渡辺：……二次元の推し事（おしごと）で使えなくなるのはしんどいのでほどほどにしてください。
小林：どうしよう。ふふっ、やっぱり半分くらい言ってることがわからない。

・台本（ゆるボイ！）
とあるＢＬ好きの女子と、
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
さざなみ