- ヤンデレ
- 人外 / モンスター
公開日2021年06月05日 18:00
更新日2021年06月05日 18:00
文字数
7372文字(約 24分35秒)
推奨音声形式
指定なし
推奨演者性別
女性演者向け
演者人数
1 人
演者役柄
魔女
視聴者役柄
指定なし
場所
指定なし
あらすじ
昔からよく見る夢があった。
それはとある女の夢
夢の中の女は契約だといい、赤子を抱く若い女の腕からその赤子を取り上げようとするが……母親が強く抵抗するため中々それが出来ない。
痺れを切らした魔女は魔法により母を飴玉として食べてしまうのだが、そのあまりのおいしさにその子を連れていくことを今はまだ止めておくことにする
それは、その飴玉の中に強い愛の味を感じたから。
そして、月日が流れ、あなたが立派な大人になった頃。
あなたの前に契約の魔女が現れる。
それは先祖の無責任な約束が原因だった。
七代前のその男は自分の七代後の男児を魔女に差し出すことを条件に、魔女から奇跡の魔法を授けられ一代にして巨万の富を築けあげたという。
一人だというのに、今も裕福な暮らしが出来ているのはその恩恵で……これは正当な対価であると。
しかし、魔女はあなたが断るとそこそこ素直であった。
そうか、ならばわらわは見ているとしよう。
何故なら、あなたの魂はもう自分のものであるから。
生きているほんの数十年の間、他の女と生を謳歌したいというのならそれくらいの自由は許してやろうと。
嗜虐的に笑いながら
その言葉を鵜呑みにしてあなたは一旦は安堵する。
がしかし……
それはとある女の夢
夢の中の女は契約だといい、赤子を抱く若い女の腕からその赤子を取り上げようとするが……母親が強く抵抗するため中々それが出来ない。
痺れを切らした魔女は魔法により母を飴玉として食べてしまうのだが、そのあまりのおいしさにその子を連れていくことを今はまだ止めておくことにする
それは、その飴玉の中に強い愛の味を感じたから。
そして、月日が流れ、あなたが立派な大人になった頃。
あなたの前に契約の魔女が現れる。
それは先祖の無責任な約束が原因だった。
七代前のその男は自分の七代後の男児を魔女に差し出すことを条件に、魔女から奇跡の魔法を授けられ一代にして巨万の富を築けあげたという。
一人だというのに、今も裕福な暮らしが出来ているのはその恩恵で……これは正当な対価であると。
しかし、魔女はあなたが断るとそこそこ素直であった。
そうか、ならばわらわは見ているとしよう。
何故なら、あなたの魂はもう自分のものであるから。
生きているほんの数十年の間、他の女と生を謳歌したいというのならそれくらいの自由は許してやろうと。
嗜虐的に笑いながら
その言葉を鵜呑みにしてあなたは一旦は安堵する。
がしかし……
本編
「ふふ、はっはっはっ!おめでとう。元気な男の子だなぁ? うん、母親としてよく頑張った。褒めて遣わすぞ」
軽い拍手の音
「さて、この家に嫁いだ身であるからには話くらいは聞いているだろうが……ふふ、契約によりその赤子はこの魔女たるわらわが貰い受けることとなっておる。大人しく差し出すが良い」
少しの間
「ほう……我が子が可愛いか? そのようにきつく抱いてわらわから隠しおって……くくく、安心せい。とって食ったりなどせぬ。その子はわらわにとっても愛しい子だからな。永劫の時をわらわが慈しみ、育み、そして愛すると約束しよう。これは、正当な対価なのだからな。恨むのであればその子を差し出すことを遠い過去に約束してわらわに奇跡を願った先祖を恨むがいい……といってもお前は嫁入りだったか。理不尽に思えるかもしれんが契約は契約だ」
ここで切って、足音を数回
それから耳元で
「さぁ、その子をわらわに差し出せ」
相手の答えを待つくらいの間
それから少し残念そうに
「ふむ……あくまでも子を守るというか。美しき母親の愛情よな……仕方あるまい。あまり、野蛮なことはしたくなかったが、な」
それから耳元でドスの効いた低い声で
「お前を飴玉に変えてやろう。何をされたのか意識のないまま、わらわの口の中でかみ砕かれてこの世を去るがいい」
離れて
「さようならだ」
軽いものが落ちる音(飴玉をコップの中に落とす)
それから拾い上げてしみじみと
「安心しろ。先ほども言ったが、お前の愛する子には危害など加えぬさ。わらわにとっても待ち望んだ愛しき子だからな」
飴を口に含んで転がす音
「……ん?ほう、これは……甘いな。愛しい愛しい、我が子を思う母の愛の味だな。ふむ」
少し考え込むように
飴玉を転がして
「……そうか、それほどまでに我が子のことを思う、か。そうか」
最後だけは優しい声で言って
愛する存在に呼びかけるように
「すまぬな。本当なら、今にでもわらわの元に置こうと思ったのだが……お前の母はお前をもう少し自由に生きさせたいらしい。だから、な」
近くで
「名残惜しいがしばしの間お別れだ……その内、迎えに行くからな。病気やけがなどせず幸せに過ごすのだぞ?」
囁き
「傍に居なくとも、わらわは常に見守っておるからな?」
優しい声で語り掛けて
場面転換
間を開けて、高圧的な魔女の感じで
「やぁやぁ、久しぶりだな? わらわの愛しき契約の子よ。迎えに来たぞ?寂しくはなかったか?」
「うん?何だ?その顔は?初めまして、ではないだろう? もう何度も顔を合わせたはずだ。夢の中でわらわの顔を見たはずだ。あれは実際にあった出来事……お前自身の記憶の欠片だ」
「あぁ、そうだ。わらわは夢の中の魔女……確か、お前はわらわのことを飴玉の魔女と呼んでおったかな?ふふ……本当はもっと色々な魔法が使えるゆえ、その呼び名はそこそこ不本意ではあるのだが……他でもないお前が呼ぶのならわらわは喜んで許してやるとも」
近くで
「そう、飴玉の魔女だ」
離れて
「ん?どうした?その怒りの形相は? わらわが、憎いのか?」
少し間を開けて
「ふぅむ……ふふ、それとも、怯えているのか?顔が、少し引きつってるぞ?」
「あぁ、そういえば小さな頃のお前はあの夢を見て大いに怖がっていたものだったな。お母さんが飴玉に変えられたように僕もいつか怖い魔女に飴玉に変えられて食べられてしまうんだ、とな」
「ふふっ……いや、笑うのはよくないが……うぅん、あれは今にして思えばとても幼い子供らしい微笑ましい姿であったな。ふふ」
ここの笑いは優しく笑う感じで
「大丈夫だ。安心せい。わらわはお前に危害を加えたりなどせぬ、永劫の時を共に生きることとなる大切な相手にそのような真似をするはずがなかろう?」
「お前は、わらわの大切な花婿となるのだからな」
「父親からは聞いてはおらぬか?これは予てよりの契約だ」
「ふむ……まぁ、お前はこの話を夢の中でも多少は聞いたとは思うがな」
思い出すように少し間を開けて
「お前から数えて七代前の男だな、お前がこのようなことになった無責任な契約の元凶は」
「その昔、お前の先祖……以降は便宜的に始祖と呼ぶがな。お前の家をここまで大きなものとした始祖は不幸のどん底におった」
「金もなく、食い物もなく……支える家族も居なければ住む家もない……そんな、絵にかいたような凡夫がな、なんとこの魔女であるわらわの元まで辿り着いたのだ」
「言葉では簡単なように聞こえるだろうが、これは凄い奇跡なのだぞ?」
「なにせ、わらわは平常時は現実と虚構の狭間の世界を依り代としておる。そこに居るが、同時に居ない……夢現の蜃気楼のような存在だ。わらわがその気になって姿を現す分には非常に簡単なことだが……普通の人間がそれと分かってわらわを探し出そうとするのは非常に難しい」
「なにせ、わらわがこちらの世界に姿を現さなければ良いだけの話だからな」
「居ない者は見つけられない。出てこない者には会うことが出来ない」
「しかし、お前の先祖はほんのわずか……わらわがどこかに姿を現すその一瞬にばったりと出くわす、そのほんのわずかな奇跡としか言いようがない偶然にだけ頼って、実際にわらわと遭遇した」
「そんなわけだ。流石にとんでもない出来事にわらわも奴には興味を持ったさ」
「そして、奴は言うんだ。奇跡をくれ、と」
「俺は奇跡を起こしてあんたに会ったんだ、だから代わりに俺に奇跡を与えてくれ、とな」
面白そうに
「くく、どうじゃ?滅茶苦茶だろう?わらわも笑ったさ。あまりの暴論に、思うさま罵倒をして足元を見てやったとも」
「別に構わんが、お前が起こした奇跡などわらわの起こす奇跡の対価には到底吊りあわぬ。その埋め合わせとして何を寄越すんだ?とな」
「くく、するとあ奴はな……くく、そうさ!こともあろうにお前の家の始祖はな、子孫を差し出すといってきおった。自分から数えて七代後の男児をわらわの永久の伴侶として差し出すと」
「つまり、お前は契約により定められた運命の花婿というわけだ。ふふ」
近づく足音
愛しい者に話しかけるように
「のう?わらわは待った……長い時を、お前を傍に置くことを夢見てずっと待ち焦がれた。どのように愛そうかと夢想を重ねてきた」
耳元で囁くように
「好きだぞ? 愛してる」
キス
離れて
「わらわがずっと欲しかったもの……それが何だか分かるか?」
相手が答えるくらいの間
「そう。お前だ……わらわと共に肩を並べて生きてくれる存在がずっとず~っと欲しかった。その点で言えばお前の先祖である始祖は非常に理知的で狡猾だったと言えような?」
「わらわの望みを把握しておった。気まぐれにこちらの世界を覗きに来るのが何故なのかを正確に予測し、その胸の内を頭の中で暴き立てていた。腹立たしいことにな?」
最後は言葉とは裏腹に楽しそうに
「だが、おかげでわらわは欲しいものが遂に手に入った。契約の術は七代の時を経て徐々に徐々にその力を結実させていきおった……魔法とは、奇跡のことなんだ。迂遠で、遠大にも思えることを誰にも知られることなく……失敗の脅威に晒されながらも成就したときにこそ強い力を持つ。それこそ、次元の壁を越えて生きるわらわと同一存在にまでなれるくらいの奇跡をな?」
「……すまんな。本当は、もっと早くにお前のことを愛したかった。共に傍で生きたかった。だが……な」
「夢で見ただろう?お前の母親の姿を」
耳元で
「お前を守り……恐ろしい魔女にも毅然と立ち向かい、赤子であるお前を我が身を呈して守ろうした母の姿を」
離れて
「わらわはそんなお前の母を容赦なく飴玉に変えてやった。わらわは既に幾度もの奇跡を成し遂げた身だ。このような術など容易く行使できる、存在そのものが奇跡を行使する機関となったとでも言っておこう」
少しだけ優しい声で↓
「飴玉に変えられたお前の母は、わらわに口の中で転がされ……じっくりと味わったあとに、無残にもかみ砕かれて殺されたわけだが……味が、な」
それから普通の調子で
「のう?知っているか?人を飴玉に変えるとその者が持つ強い思いが反映された味になるということを」
「浅ましき心を持つものは苦く、とても口にしがたい」
「怒りを抱えるものの味は辛く、お菓子だなどとは口が裂けても言えやしない」
「悲しみを抱えるものもそうだ……ひどく渋い……口の中に嫌なものを残す味がする」
「だから、わらわはこの魔法はあまり好かぬ。飴玉になどしても旨くはない。そんなことをするくらいならさっさと殺してしまった方が後腐れがなくて楽で良い……あ、勘違いするなよ?これは魔法の制約的な意味でだ。食べ物に変えた以上は必ずその者が口にしなければならない、それが人を食べ物にする際のルールであり制約だからだ。不味いものなど誰であろうと好んで食いたがらんだろう?」
説明するように言って
それから思い出すように
「だが、な……あぁ、今思い出してもとても幸せな気分になれる」
耳元で
「……お前の母親はな。とても甘い極上の蜜の味がした。強く、そして優しい……子を思う母の優しい愛の気持ちだ」
離れて
「だから……わらわはしばらくの間お前をこうして人の世界で生活させることとした」
「だから……連れていきたい気持ちを抑え込んで、見守るのに徹した」
「お前の母が……子の自由な未来を望んでおったからな」
しみじみと、優しく見守る母のように
「あれから十八年……お前はもう立派な大人になった。どうだ? 幸せな生活は満喫できたであろうな?」
「くくっ、まぁ、わらわは全てを見ておったから知っておるがな。モラトリアム……という奴か?ぼんやりと将来に悩む多感な時期といったところだな」
「だが、心配はいらぬ。もうお前の進み道は決まっておる」
「悩む必要はない。将来の不安に心を苛まれることもない」
優しい母のような声で
「さあ、契約の成就を宣言しわらわの胸に飛び込んでくるがいい」
「それで、この魔法の奇跡は完成だ。お前は晴れて、わらわの隣に並び立つ存在となる……共に永劫の時を生きる狭間の世界の住人となる」
「ん~……そうさな。わらわが魔女……飴玉の魔女だから、お前はさしずめ飴玉の包み紙、包み紙の魔法使いというのはどうだ?」
少し間を開けて
「……うん?何だ?嫌か?意味が通じなかったか?これはな、お前が名付けた飴玉の魔女という二つ名を別視点から解釈してだな。そうさな、飴玉の魔女、というのはわらわが人を飴玉に変える魔法を使ったことに対するお前のネーミングなわけだが、ここに飴玉の魔法を使ったというフレーズはない……ただ単に『飴玉』の魔女だ。そこを利用して、わらわ自身をその飴玉という部分の比喩表現に繋げることでそのわらわを上から包み込むように支えてくれるお前はさながら包み紙のようだ、と」
相手の言葉を聞くくらいの間
「ん?何だ?そんなことを聞きたいわけではないだと?」
「なら、なんだというのだ?」
少し間を開けて
「ん?お前にその宣言をする気はないと申すか? わらわの隣に並び立つ存在になる気はない、と?」
「わらわの伴侶になる気はない、と?」
少しだけ長く間を開けて
「ふむ……まぁ、お前がそういうのであればそれもいいだろう。もう契約の魔法術式は成立している。あとはお前が宣言するのを残すのみ……」
「あぁ、そうさ。わらわは随分長いことこの時を待った」
「だから、お前が残りほんの数十年……わらわ以外の者と生を謳歌したいというならそれくらいは許してやろう」
「なにせ……くく、お前の魂はわらわのモノとなることが既に決まっているからな?」
耳元で
「あぁ、確か……好きな女が居るのだったな?」
耳元で嗜虐的に
「頑張れ?残された生を謳歌するのだろう? くく、あっはっはっはっはっはっはっ!」
離れて
「楽しめるといいなぁ? 人としての生を、存分に」
存分に、の部分は相手を詰るようにゆっくりと嗜虐的に
「わらわは変わらず見守っておるぞ? わらわは……お前のことが大好きだからな?」
嗜虐的に相手を罵倒するかのように言って
場面転換
間を開けて
飴を口の中で転がす音
「おお、遅かったな?やっと帰ったか、待ちくたびれたぞ?」
飴玉を口の中で転がす音
それからあっけらかんと
「ん?なんだ?その顔は?何か嫌なことでもあったか?」
少し間を開けて
「ああ、そうだな。お前の恋人が行方不明になったな。あの後せっかく告白して結ばれたというのに、残念なことだなぁ?」
相手を嘲笑うように言って
それから普通の調子で
「ふむ……だがなぁ、あの女は居なくなって正解だったと思うぞ?」
口の中で飴玉を転がす音
「うん……愛の気持ちは蜜の味だと以前には言ったがな。この甘みは少し雑多に過ぎる。この女、少し恋心が敏感すぎるのではないか?」
「色んな男への愛の気持ちで……ひどく吐き気がする甘さだ」
飴玉を口の中で転がす音
「うん?どうした?わらわの口を凝視して?」
近くで
「なんだ~?わらわの舐めてる飴玉が欲しいと言う
のか?」
囁き
「わらわの唾液にまみれた……口の中の飴玉を、自分も口の中に含みたいと?」
少しだけ間を開けて強調するように
「舌の上で転がしたいと?」
そして甘く囁き
「大胆だな♡」
それからくすくすと笑いながら離れて、可愛い女の子のように
「ふふ、冗談だ。そんなに赤くなるな。こっちまでドキドキしてくるではないか? ベッドに押し倒したくなる」
ベッドに押し倒したくなる、はゆっくりと相手を誘うような感じで官能的に
「まぁ、残念ながらこれはお主に渡すわけにはいかない飴玉ゆえそれは叶わぬわけだがな」
「あぁ、察しの通り。わらわが今口の中で転がしている飴玉はお前の恋人となった女の慣れの果てだ」
「お前から離れた後、他の男のもとに向かいあまりにも見境がないゆえ黙って見ていることが出来なんだ……お前を馬鹿にされることはわらわにとってはもっとも許しがたい行為であるからな」
コロコロと飴玉を転がす音
それから少し暗い声で
「噛み砕きたくなる」
ガリッと飴玉を噛み砕く音
「ふん……酷い味だ。わらわの大切な伴侶たるお前に相応しい者では到底ない」
ガリガリと噛んで飲み込む音
それから疲れたふうに
「やれやれ、だからこの魔法はあまり使いたくないんだ。大抵酷く不味い拷問のような味がするからな……お前の母のような、愛に溢れたモノは本当に稀なんだ」
「馬鹿なことをしたと笑うか? 一時の感情で、選択を誤り過ぎだとでも?」
少し間を置いて
「だが、な」
カランと幾つかの飴玉が瓶の中を転がる音(ビー玉でもコップに入れて音を立てよう)
「すでにこの通りだ。一度タガが外れたら制御が利かなかった……愛するお前に酷い視線をやるものだからな」
耳元で
「抑えきれなかった」
離れて
「この女ども……誰も彼もが、お前が騙されてると陰で嘲笑いおって……そのような権利があるとでも思っておるのか?下種な淫売どもが」
怒りを抑え込んでるかのような感じで
「お前はわらわのモノだ。わらわの大切な伴侶となる契約の花婿だ……それを……脳が足りてないだの、普通は気付くだの、馬鹿にしおって……!」
「わらわはな、お前が生を謳歌する分には許すとあの時に言った。だが、大切なお前を馬鹿にする者を許して放置するなどとは一言もいっておらぬ。これは当然の報いだ」
カラランと飴玉が転がる音(コップの中のビー玉を転がそう)
「さて、この飴玉は誰だったかな?」
少し考え込むように
「あぁ……確か、お前をお兄ちゃんだのと呼んでいた知らぬ家の子だったな」
カラランと飴玉が戻される音(コップの中にビー玉を落とす、そしてもう一つ取り出して)
「そしてこれが……親切面してお前に「あの女は止めておきなさい」だのと偉そうに命令をして勝手に失望をしていた年上の女だったか……馬鹿はどちらだと思っておるのか」
カラランともう一度飴玉を戻す音
「わらわ以外の女がお前にそのように偉そうな口をきくことなど許さぬ」
それからコップの中で飴玉が転がる音
「お前も見るか? どれが気になる? 可能な限り説明をしてやるが」
少し間を開けて
「うん、まぁ、結果的にそうだな。お前の身近にいた女は殆ど飴玉になったことになるな。まぁ、わらわは別に哀れとは思わんがな。さっきも言ったが、当然の報いだ」
「お前を馬鹿にする者はわらわが許さぬ」
カラランと飴玉の音
「ん?どうした?そんな泣きそうな顔をして?」
少し間を開けて
「ああ、そうだな。お前の言う通り……あの時、お前がわらわの伴侶となることを宣言しておればこのようなことにはならなかったな」
「だが、それは今更いうことか?」
「人は誰しも生きる以上何かを選択して人生を送っておる。全てが全て、自分で選択してつかみ取った結果だ。だというのに、ありもしない過去を夢想して後悔をするというのは意味のないことなのではないか? もう変えられないのだから、真摯に受け止めて次の機会に活かすしかなかろうて?」
「だが……そうだな。悲しみに暮れるお前の顔はわらわには見るに堪えぬ。まさか、このようなことを自分から言うことになろうとはな……」
耳元で
「のう?奇跡が、欲しいか?」
少し待って
継続して耳元で
「わらわの考えは先にも語った通りだ。ありもしない結末などを夢想するのは愚かしいことだ、至らなかった過去を反省して未来へと活かせ、とな」
「だが、わらわはお前が好きだ。愛してる……そのように悲しんだ顔などを見たくはない」
「だから、な……このようなことをしても結局は自分自身で同じ選択をして同じ道を辿るとは思うが……チャンスをやろう」
「お前が望めば……これまでに起きた全ては無かったことになり、わらわの手によって引き起こされたすべての事態は白紙へ戻る」
「すべての記憶は失われ……あの日、わらわがお前の母親を飴玉を変えた日の以前に戻すと誓おう」
「だが……な。それは、簡単に失われてしまう程度の奇跡。お前がまた人生を始めれば容易く失われるだろう薄氷の上のモノに過ぎない。奇跡とはそれほど万能なものでもないんだ。それでも……」
「お前は、奇跡を望むか?」
「全ての出来事を……白紙に戻すことを望むか?」
少し待って
「そうか。分かった、なら奇跡をお前にやろう。もうここに戻ってくるでないぞ?」
「しばしのさよならだ。だが……わらわは、例え記憶を失おうとも、白紙に戻ったとしてもお前のことを心の底から好きでいる」
「ずっとずっと待っている」
優しい声で言って
耳元で
「またな? わらわの、運命の花婿よ」
囁き
「わらわの愛は、永遠だからな?」
最後にキスをして終了
最初に戻る
軽い拍手の音
「さて、この家に嫁いだ身であるからには話くらいは聞いているだろうが……ふふ、契約によりその赤子はこの魔女たるわらわが貰い受けることとなっておる。大人しく差し出すが良い」
少しの間
「ほう……我が子が可愛いか? そのようにきつく抱いてわらわから隠しおって……くくく、安心せい。とって食ったりなどせぬ。その子はわらわにとっても愛しい子だからな。永劫の時をわらわが慈しみ、育み、そして愛すると約束しよう。これは、正当な対価なのだからな。恨むのであればその子を差し出すことを遠い過去に約束してわらわに奇跡を願った先祖を恨むがいい……といってもお前は嫁入りだったか。理不尽に思えるかもしれんが契約は契約だ」
ここで切って、足音を数回
それから耳元で
「さぁ、その子をわらわに差し出せ」
相手の答えを待つくらいの間
それから少し残念そうに
「ふむ……あくまでも子を守るというか。美しき母親の愛情よな……仕方あるまい。あまり、野蛮なことはしたくなかったが、な」
それから耳元でドスの効いた低い声で
「お前を飴玉に変えてやろう。何をされたのか意識のないまま、わらわの口の中でかみ砕かれてこの世を去るがいい」
離れて
「さようならだ」
軽いものが落ちる音(飴玉をコップの中に落とす)
それから拾い上げてしみじみと
「安心しろ。先ほども言ったが、お前の愛する子には危害など加えぬさ。わらわにとっても待ち望んだ愛しき子だからな」
飴を口に含んで転がす音
「……ん?ほう、これは……甘いな。愛しい愛しい、我が子を思う母の愛の味だな。ふむ」
少し考え込むように
飴玉を転がして
「……そうか、それほどまでに我が子のことを思う、か。そうか」
最後だけは優しい声で言って
愛する存在に呼びかけるように
「すまぬな。本当なら、今にでもわらわの元に置こうと思ったのだが……お前の母はお前をもう少し自由に生きさせたいらしい。だから、な」
近くで
「名残惜しいがしばしの間お別れだ……その内、迎えに行くからな。病気やけがなどせず幸せに過ごすのだぞ?」
囁き
「傍に居なくとも、わらわは常に見守っておるからな?」
優しい声で語り掛けて
場面転換
間を開けて、高圧的な魔女の感じで
「やぁやぁ、久しぶりだな? わらわの愛しき契約の子よ。迎えに来たぞ?寂しくはなかったか?」
「うん?何だ?その顔は?初めまして、ではないだろう? もう何度も顔を合わせたはずだ。夢の中でわらわの顔を見たはずだ。あれは実際にあった出来事……お前自身の記憶の欠片だ」
「あぁ、そうだ。わらわは夢の中の魔女……確か、お前はわらわのことを飴玉の魔女と呼んでおったかな?ふふ……本当はもっと色々な魔法が使えるゆえ、その呼び名はそこそこ不本意ではあるのだが……他でもないお前が呼ぶのならわらわは喜んで許してやるとも」
近くで
「そう、飴玉の魔女だ」
離れて
「ん?どうした?その怒りの形相は? わらわが、憎いのか?」
少し間を開けて
「ふぅむ……ふふ、それとも、怯えているのか?顔が、少し引きつってるぞ?」
「あぁ、そういえば小さな頃のお前はあの夢を見て大いに怖がっていたものだったな。お母さんが飴玉に変えられたように僕もいつか怖い魔女に飴玉に変えられて食べられてしまうんだ、とな」
「ふふっ……いや、笑うのはよくないが……うぅん、あれは今にして思えばとても幼い子供らしい微笑ましい姿であったな。ふふ」
ここの笑いは優しく笑う感じで
「大丈夫だ。安心せい。わらわはお前に危害を加えたりなどせぬ、永劫の時を共に生きることとなる大切な相手にそのような真似をするはずがなかろう?」
「お前は、わらわの大切な花婿となるのだからな」
「父親からは聞いてはおらぬか?これは予てよりの契約だ」
「ふむ……まぁ、お前はこの話を夢の中でも多少は聞いたとは思うがな」
思い出すように少し間を開けて
「お前から数えて七代前の男だな、お前がこのようなことになった無責任な契約の元凶は」
「その昔、お前の先祖……以降は便宜的に始祖と呼ぶがな。お前の家をここまで大きなものとした始祖は不幸のどん底におった」
「金もなく、食い物もなく……支える家族も居なければ住む家もない……そんな、絵にかいたような凡夫がな、なんとこの魔女であるわらわの元まで辿り着いたのだ」
「言葉では簡単なように聞こえるだろうが、これは凄い奇跡なのだぞ?」
「なにせ、わらわは平常時は現実と虚構の狭間の世界を依り代としておる。そこに居るが、同時に居ない……夢現の蜃気楼のような存在だ。わらわがその気になって姿を現す分には非常に簡単なことだが……普通の人間がそれと分かってわらわを探し出そうとするのは非常に難しい」
「なにせ、わらわがこちらの世界に姿を現さなければ良いだけの話だからな」
「居ない者は見つけられない。出てこない者には会うことが出来ない」
「しかし、お前の先祖はほんのわずか……わらわがどこかに姿を現すその一瞬にばったりと出くわす、そのほんのわずかな奇跡としか言いようがない偶然にだけ頼って、実際にわらわと遭遇した」
「そんなわけだ。流石にとんでもない出来事にわらわも奴には興味を持ったさ」
「そして、奴は言うんだ。奇跡をくれ、と」
「俺は奇跡を起こしてあんたに会ったんだ、だから代わりに俺に奇跡を与えてくれ、とな」
面白そうに
「くく、どうじゃ?滅茶苦茶だろう?わらわも笑ったさ。あまりの暴論に、思うさま罵倒をして足元を見てやったとも」
「別に構わんが、お前が起こした奇跡などわらわの起こす奇跡の対価には到底吊りあわぬ。その埋め合わせとして何を寄越すんだ?とな」
「くく、するとあ奴はな……くく、そうさ!こともあろうにお前の家の始祖はな、子孫を差し出すといってきおった。自分から数えて七代後の男児をわらわの永久の伴侶として差し出すと」
「つまり、お前は契約により定められた運命の花婿というわけだ。ふふ」
近づく足音
愛しい者に話しかけるように
「のう?わらわは待った……長い時を、お前を傍に置くことを夢見てずっと待ち焦がれた。どのように愛そうかと夢想を重ねてきた」
耳元で囁くように
「好きだぞ? 愛してる」
キス
離れて
「わらわがずっと欲しかったもの……それが何だか分かるか?」
相手が答えるくらいの間
「そう。お前だ……わらわと共に肩を並べて生きてくれる存在がずっとず~っと欲しかった。その点で言えばお前の先祖である始祖は非常に理知的で狡猾だったと言えような?」
「わらわの望みを把握しておった。気まぐれにこちらの世界を覗きに来るのが何故なのかを正確に予測し、その胸の内を頭の中で暴き立てていた。腹立たしいことにな?」
最後は言葉とは裏腹に楽しそうに
「だが、おかげでわらわは欲しいものが遂に手に入った。契約の術は七代の時を経て徐々に徐々にその力を結実させていきおった……魔法とは、奇跡のことなんだ。迂遠で、遠大にも思えることを誰にも知られることなく……失敗の脅威に晒されながらも成就したときにこそ強い力を持つ。それこそ、次元の壁を越えて生きるわらわと同一存在にまでなれるくらいの奇跡をな?」
「……すまんな。本当は、もっと早くにお前のことを愛したかった。共に傍で生きたかった。だが……な」
「夢で見ただろう?お前の母親の姿を」
耳元で
「お前を守り……恐ろしい魔女にも毅然と立ち向かい、赤子であるお前を我が身を呈して守ろうした母の姿を」
離れて
「わらわはそんなお前の母を容赦なく飴玉に変えてやった。わらわは既に幾度もの奇跡を成し遂げた身だ。このような術など容易く行使できる、存在そのものが奇跡を行使する機関となったとでも言っておこう」
少しだけ優しい声で↓
「飴玉に変えられたお前の母は、わらわに口の中で転がされ……じっくりと味わったあとに、無残にもかみ砕かれて殺されたわけだが……味が、な」
それから普通の調子で
「のう?知っているか?人を飴玉に変えるとその者が持つ強い思いが反映された味になるということを」
「浅ましき心を持つものは苦く、とても口にしがたい」
「怒りを抱えるものの味は辛く、お菓子だなどとは口が裂けても言えやしない」
「悲しみを抱えるものもそうだ……ひどく渋い……口の中に嫌なものを残す味がする」
「だから、わらわはこの魔法はあまり好かぬ。飴玉になどしても旨くはない。そんなことをするくらいならさっさと殺してしまった方が後腐れがなくて楽で良い……あ、勘違いするなよ?これは魔法の制約的な意味でだ。食べ物に変えた以上は必ずその者が口にしなければならない、それが人を食べ物にする際のルールであり制約だからだ。不味いものなど誰であろうと好んで食いたがらんだろう?」
説明するように言って
それから思い出すように
「だが、な……あぁ、今思い出してもとても幸せな気分になれる」
耳元で
「……お前の母親はな。とても甘い極上の蜜の味がした。強く、そして優しい……子を思う母の優しい愛の気持ちだ」
離れて
「だから……わらわはしばらくの間お前をこうして人の世界で生活させることとした」
「だから……連れていきたい気持ちを抑え込んで、見守るのに徹した」
「お前の母が……子の自由な未来を望んでおったからな」
しみじみと、優しく見守る母のように
「あれから十八年……お前はもう立派な大人になった。どうだ? 幸せな生活は満喫できたであろうな?」
「くくっ、まぁ、わらわは全てを見ておったから知っておるがな。モラトリアム……という奴か?ぼんやりと将来に悩む多感な時期といったところだな」
「だが、心配はいらぬ。もうお前の進み道は決まっておる」
「悩む必要はない。将来の不安に心を苛まれることもない」
優しい母のような声で
「さあ、契約の成就を宣言しわらわの胸に飛び込んでくるがいい」
「それで、この魔法の奇跡は完成だ。お前は晴れて、わらわの隣に並び立つ存在となる……共に永劫の時を生きる狭間の世界の住人となる」
「ん~……そうさな。わらわが魔女……飴玉の魔女だから、お前はさしずめ飴玉の包み紙、包み紙の魔法使いというのはどうだ?」
少し間を開けて
「……うん?何だ?嫌か?意味が通じなかったか?これはな、お前が名付けた飴玉の魔女という二つ名を別視点から解釈してだな。そうさな、飴玉の魔女、というのはわらわが人を飴玉に変える魔法を使ったことに対するお前のネーミングなわけだが、ここに飴玉の魔法を使ったというフレーズはない……ただ単に『飴玉』の魔女だ。そこを利用して、わらわ自身をその飴玉という部分の比喩表現に繋げることでそのわらわを上から包み込むように支えてくれるお前はさながら包み紙のようだ、と」
相手の言葉を聞くくらいの間
「ん?何だ?そんなことを聞きたいわけではないだと?」
「なら、なんだというのだ?」
少し間を開けて
「ん?お前にその宣言をする気はないと申すか? わらわの隣に並び立つ存在になる気はない、と?」
「わらわの伴侶になる気はない、と?」
少しだけ長く間を開けて
「ふむ……まぁ、お前がそういうのであればそれもいいだろう。もう契約の魔法術式は成立している。あとはお前が宣言するのを残すのみ……」
「あぁ、そうさ。わらわは随分長いことこの時を待った」
「だから、お前が残りほんの数十年……わらわ以外の者と生を謳歌したいというならそれくらいは許してやろう」
「なにせ……くく、お前の魂はわらわのモノとなることが既に決まっているからな?」
耳元で
「あぁ、確か……好きな女が居るのだったな?」
耳元で嗜虐的に
「頑張れ?残された生を謳歌するのだろう? くく、あっはっはっはっはっはっはっ!」
離れて
「楽しめるといいなぁ? 人としての生を、存分に」
存分に、の部分は相手を詰るようにゆっくりと嗜虐的に
「わらわは変わらず見守っておるぞ? わらわは……お前のことが大好きだからな?」
嗜虐的に相手を罵倒するかのように言って
場面転換
間を開けて
飴を口の中で転がす音
「おお、遅かったな?やっと帰ったか、待ちくたびれたぞ?」
飴玉を口の中で転がす音
それからあっけらかんと
「ん?なんだ?その顔は?何か嫌なことでもあったか?」
少し間を開けて
「ああ、そうだな。お前の恋人が行方不明になったな。あの後せっかく告白して結ばれたというのに、残念なことだなぁ?」
相手を嘲笑うように言って
それから普通の調子で
「ふむ……だがなぁ、あの女は居なくなって正解だったと思うぞ?」
口の中で飴玉を転がす音
「うん……愛の気持ちは蜜の味だと以前には言ったがな。この甘みは少し雑多に過ぎる。この女、少し恋心が敏感すぎるのではないか?」
「色んな男への愛の気持ちで……ひどく吐き気がする甘さだ」
飴玉を口の中で転がす音
「うん?どうした?わらわの口を凝視して?」
近くで
「なんだ~?わらわの舐めてる飴玉が欲しいと言う
のか?」
囁き
「わらわの唾液にまみれた……口の中の飴玉を、自分も口の中に含みたいと?」
少しだけ間を開けて強調するように
「舌の上で転がしたいと?」
そして甘く囁き
「大胆だな♡」
それからくすくすと笑いながら離れて、可愛い女の子のように
「ふふ、冗談だ。そんなに赤くなるな。こっちまでドキドキしてくるではないか? ベッドに押し倒したくなる」
ベッドに押し倒したくなる、はゆっくりと相手を誘うような感じで官能的に
「まぁ、残念ながらこれはお主に渡すわけにはいかない飴玉ゆえそれは叶わぬわけだがな」
「あぁ、察しの通り。わらわが今口の中で転がしている飴玉はお前の恋人となった女の慣れの果てだ」
「お前から離れた後、他の男のもとに向かいあまりにも見境がないゆえ黙って見ていることが出来なんだ……お前を馬鹿にされることはわらわにとってはもっとも許しがたい行為であるからな」
コロコロと飴玉を転がす音
それから少し暗い声で
「噛み砕きたくなる」
ガリッと飴玉を噛み砕く音
「ふん……酷い味だ。わらわの大切な伴侶たるお前に相応しい者では到底ない」
ガリガリと噛んで飲み込む音
それから疲れたふうに
「やれやれ、だからこの魔法はあまり使いたくないんだ。大抵酷く不味い拷問のような味がするからな……お前の母のような、愛に溢れたモノは本当に稀なんだ」
「馬鹿なことをしたと笑うか? 一時の感情で、選択を誤り過ぎだとでも?」
少し間を置いて
「だが、な」
カランと幾つかの飴玉が瓶の中を転がる音(ビー玉でもコップに入れて音を立てよう)
「すでにこの通りだ。一度タガが外れたら制御が利かなかった……愛するお前に酷い視線をやるものだからな」
耳元で
「抑えきれなかった」
離れて
「この女ども……誰も彼もが、お前が騙されてると陰で嘲笑いおって……そのような権利があるとでも思っておるのか?下種な淫売どもが」
怒りを抑え込んでるかのような感じで
「お前はわらわのモノだ。わらわの大切な伴侶となる契約の花婿だ……それを……脳が足りてないだの、普通は気付くだの、馬鹿にしおって……!」
「わらわはな、お前が生を謳歌する分には許すとあの時に言った。だが、大切なお前を馬鹿にする者を許して放置するなどとは一言もいっておらぬ。これは当然の報いだ」
カラランと飴玉が転がる音(コップの中のビー玉を転がそう)
「さて、この飴玉は誰だったかな?」
少し考え込むように
「あぁ……確か、お前をお兄ちゃんだのと呼んでいた知らぬ家の子だったな」
カラランと飴玉が戻される音(コップの中にビー玉を落とす、そしてもう一つ取り出して)
「そしてこれが……親切面してお前に「あの女は止めておきなさい」だのと偉そうに命令をして勝手に失望をしていた年上の女だったか……馬鹿はどちらだと思っておるのか」
カラランともう一度飴玉を戻す音
「わらわ以外の女がお前にそのように偉そうな口をきくことなど許さぬ」
それからコップの中で飴玉が転がる音
「お前も見るか? どれが気になる? 可能な限り説明をしてやるが」
少し間を開けて
「うん、まぁ、結果的にそうだな。お前の身近にいた女は殆ど飴玉になったことになるな。まぁ、わらわは別に哀れとは思わんがな。さっきも言ったが、当然の報いだ」
「お前を馬鹿にする者はわらわが許さぬ」
カラランと飴玉の音
「ん?どうした?そんな泣きそうな顔をして?」
少し間を開けて
「ああ、そうだな。お前の言う通り……あの時、お前がわらわの伴侶となることを宣言しておればこのようなことにはならなかったな」
「だが、それは今更いうことか?」
「人は誰しも生きる以上何かを選択して人生を送っておる。全てが全て、自分で選択してつかみ取った結果だ。だというのに、ありもしない過去を夢想して後悔をするというのは意味のないことなのではないか? もう変えられないのだから、真摯に受け止めて次の機会に活かすしかなかろうて?」
「だが……そうだな。悲しみに暮れるお前の顔はわらわには見るに堪えぬ。まさか、このようなことを自分から言うことになろうとはな……」
耳元で
「のう?奇跡が、欲しいか?」
少し待って
継続して耳元で
「わらわの考えは先にも語った通りだ。ありもしない結末などを夢想するのは愚かしいことだ、至らなかった過去を反省して未来へと活かせ、とな」
「だが、わらわはお前が好きだ。愛してる……そのように悲しんだ顔などを見たくはない」
「だから、な……このようなことをしても結局は自分自身で同じ選択をして同じ道を辿るとは思うが……チャンスをやろう」
「お前が望めば……これまでに起きた全ては無かったことになり、わらわの手によって引き起こされたすべての事態は白紙へ戻る」
「すべての記憶は失われ……あの日、わらわがお前の母親を飴玉を変えた日の以前に戻すと誓おう」
「だが……な。それは、簡単に失われてしまう程度の奇跡。お前がまた人生を始めれば容易く失われるだろう薄氷の上のモノに過ぎない。奇跡とはそれほど万能なものでもないんだ。それでも……」
「お前は、奇跡を望むか?」
「全ての出来事を……白紙に戻すことを望むか?」
少し待って
「そうか。分かった、なら奇跡をお前にやろう。もうここに戻ってくるでないぞ?」
「しばしのさよならだ。だが……わらわは、例え記憶を失おうとも、白紙に戻ったとしてもお前のことを心の底から好きでいる」
「ずっとずっと待っている」
優しい声で言って
耳元で
「またな? わらわの、運命の花婿よ」
囁き
「わらわの愛は、永遠だからな?」
最後にキスをして終了
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クレジット
ライター情報
ASMR、シチュボ台本を主に書いています。
細かい指定や、指示が書いてあることがありますが、不可能な場合や不明瞭なことがあれば代替あるいは無視してもらっても結構です。
また勢いのまま書き連ねているため誤字や脱字が見られる場合がありますのでご使用の際はお気をつけ下さいますようお頼み申し上げます。
細かい指定や、指示が書いてあることがありますが、不可能な場合や不明瞭なことがあれば代替あるいは無視してもらっても結構です。
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