裏社会とのつながりがあると噂される、とある耳かき店。
警察官である貴方は、素性を隠し、客としてその耳かき店に潜入する。

いらっしゃいませ。本日はご来店ありがとうございます。
今回は「耳かき30分コース」で間違いありませんか？

はい。では、耳かきの準備をいたします。そちらにお茶をご用意しておりますので、お飲みになって少々お待ちください。

お待たせいたしました。
それでは、こちらに頭をのせてください。どちらの耳からでも大丈夫ですよ。

(膝枕に頭を載せて耳かき開始)

お客様は、当店のご利用は初めてでいらっしゃいますか？

そうですか！ ありがとうございます。
当店に来られる方の多くは、リピーターのお客様なのですが、こうしてはじめましての方がいらっしゃると、つい嬉しくなってしまいますね。

そうですね……この店、他の耳かき店と比べても、高めの料金になっているので、
正直なところ、わざわざここを選ぶという方は、あまりいらっしゃらないと思います。
ですが、お値段が高いぶん、技術に関しては、間違いなくトップクラスかと。

ええ、それはもう。
施術後には、皆様、口をそろえて『また来る』と言ってくださって。実際、そうされる方がほとんどです。
それこそ、毎日のように来られる方も、結構いらっしゃるんですよ。
それだけ、現代人は癒しを求めている、ということなのだと思います。

ところで、お客様は、ここに来られたきっかけ、みたいなのはおありですか？
……なるほど。ちなみに、そのお仕事の内容は、お伺いしても？
……ああ、エンジニア！
そういったデスクワークとなると、お仕事の間、ずっと同じ姿勢になりがちではないですか？

それは、疲れが溜まってしまうのも無理はありませんね。
本日は是非とも、日頃の疲れを忘れて、この耳かきに浸ってくださいませ。

では、ここからは梵天を入れていきますね。

(梵天開始)

ふふ、良いですね。とても力の抜けた、心地良さそうな表情をされています。
いえ、別に、何も恥ずかしがることはありませんよ？
この梵天も、素材にこだわって作られているので、絶妙に眠気を誘ってくると評判なのです。
……もしよろしければ、ひと眠りされていきますか？
ふふ、冗談です。

いえいえ、からかってなんていませんよ。
ただ、今日は普段よりもちょっと楽しんでいるかもしれません。ここ最近、お店での耳かきをしていなかったものですから……。

おや、中々するどいですね。ここ以外でも耳かきをしているかと言うと……まあ、実のところ、そうなのですが……。
それについては、ちょっとした秘密がありまして……。

ふふ、そう言われると、気になってしまいますよね？
一つ確認させていただきたいのですが、お客様は、口が堅いほうですか？
……わかりました。
ですが、その前に……。
(耳に息を吹きかける)
ふーっ……。

ふふ♪ 耳ふー、お好きですか？
では、もう一度。
(耳に息を吹きかける)
ふーっ……。

では、反対側を向けてくださいませ。

(反対側の耳を向け、耳かき開始)
さて、秘密、についてですが……。

私が……というよりも、ここの従業員が耳かきをするのは、このお店の中だけではありません。
というのも、皆、耳かき店員としてのお仕事とは別に、共通して行っていることがあるんです。

それが……スパイ、です♪

はい。お客様の想像されているであろう、あの"スパイ"です。

簡単に言うと、依頼で指定されたターゲットのもとへ向かい、隙をついて耳かきをします。
そして、耳かきの虜にした後は、機密情報を聞き出したり、こちらの指示に従わせたり……。

それが、できるのですよ。
今は抑えていますが、私が本気で耳かきをすれば、誰であろうと、飼い慣らした小犬のようになってしまいます。
……試してみますか？

……ふふ、ではそちらは、またのご機会に、ということで……。

当店の耳かきの技術は随一であると、最初に言いましたが、
それも納得いただけるかと。
耳かき棒一本で人を堕落させられるほどでないと、この仕事は務まらないのですから。

ここまで説明すれば、もうおわかりですね？
このお店の主な客層が、どういった方々なのか……。
実に合理的なシステムだと私は思うのですが、いかがでしょう。

では、こちら側も、梵天を入れていきますね。
(梵天開始)

ふふ、驚かれましたか？
それもそうですよね。お客様の新鮮な反応で、ついつい楽しくなって、少々話しすぎてしまいました。
当然ですが、先ほどのことは、他言無用でお願いいたしますね？

……大丈夫です。この話は、絶対に約束をお守りいただける方にしかしていませんから。
いえ、より正確に言うならば……絶対に約束を守ることになる方、と言うべきかもしれません。
……ねぇ？ 警・察・さん？

ふふ♪ 無駄ですよ。逃げようにも、身体を動かせないでしょう？
まさに今が、ちょうど効いてくる頃ですから。
……お茶の味は、いかがでしたか？

さて……実は店長より指示がありまして、
お客様には特別に、無料で延長サービスを提供させていただきます。

まあまあ、そうおっしゃらずに……。
(耳に息を吹きかける)
ふーっ……。

何も、命を奪われたりする訳ではありません。
ちょっと、頭が耳かきで一杯になるだけのこと……。
(耳に息を吹きかける)
ふーっ……。

そう焦らなくとも大丈夫ですよ。時間は、たっぷりありますから……。
極上の癒しを、体験くださいませ……。
ふふ、ふふふ……♪

・台本（ゆるボイ！）
怪しげな耳かき店に潜入捜査しに行った結果
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
くるっくー