事故で高校生になってからの記憶をなくした僕。
僕には、小学中学と、ずっと一人でいた記憶しかない。彼女なんて、夢のまた夢。かな。

事故から数週間後、記憶は戻らない。
とある日の夕方、謎のボクっ娘が病室を訪れる。
どうやら同じ高校の娘みたいだが。。

(ｺﾝｺﾝ)
失礼します。。
あ、先輩。起きてたんですね。
こんにちは。

もう、身体（からだ）は、大丈夫ですか？

そうですか。
良かったです。

あ。そう、ですよね。
ボクの、名前、ですよね。。
ボクの名前は(ハナ)です。
ボクのことも、先輩の親友の(たくみ)くんのことも、やっぱり覚えてないんですね。。
先輩は交通事故で高校生の期間の記憶を失ってしまったと聞きました。。
運転手の人は心臓発作で気を失い、この事故を引き起こし、そのまま亡くなってしまったことも。。

大丈夫です。きっと思い出せますよ。
少しずつ、ゆっくりでもいいんです。
焦らずに、思い出していきましょう？
ね？

そうです。その意気です。先輩。


、、、あの。先輩。
本当に、ボクのこと、なんにも覚えてないんですか。。？

そう、ですよね。。


あの、先輩。
実は、ボク、先輩の――
『カノジョ』
なんですけど。。

え。あの！先輩！？
そんな！謝らないでください！
ボクは、気にして、ませんから。。


あ、あの、先輩。
ぎゅーってしても、いいですか？
その、先輩が、こうして無事で、生きてて。
とても、嬉しいんです。だから。。

やっぱり、嫌、かな。。？

いいの？
ありがとう。先輩。
ぎゅー



、、、先輩。
なんで、何も覚えてないんですか。
なんで、たくみくんのことを覚えてないんですか。
なんで、お前だけ、生きてるんだ。

お前と一緒にいた、たくみくんは、事故で死んでしまった。なのに、お前は。お前は。。！
許さない。
なんでボクの彼氏だけが死んで、お前みたいなやつが生きてるんだ！
それだけじゃない。お前は！たくみくんのことも忘れて！のうのうと生きている！
ボクの怒りは、憤りは、どこに向ければいい！！
思い出せ！！
たくみくんのことを！
早く！思い出して謝れ！！
泣いて詫びろ！！お前がいけないんだ！！
お前が生きてるだけで！ボクはどうにかなりそうだ！

ボクの彼氏はたくみくんだ。
お前じゃない。お前なんかじゃない！

もう。ここには、ボクのあの人は、いない。
ボクも、たくみくんのところに、行きたい。。
たくみくんと抱き合いたい。。
ぎゅー


たくみくん、待ってて。
もうすぐ、そっちに行くね。


どうしてボクが、お前なんかのカノジョなんてウソをついたと思う。
こうして、お前を逃がさないためだよ。
さようなら。先輩。
お前しか恨めない。憎めない。こんな私は、おかしいかもしれないね。
でも、このまま、死んで。

(ｻﾞｸｯ)

あぁ、これで、たくみくんも、喜んでくれるかなぁ。
たくみくん、ボク、やったよ。
ボクも、すぐに行くね。

(ｻﾞｸｯ)
(ﾊﾞﾀﾝ)





(彼女の最期は、笑顔だった。)

・台本（ゆるボイ！）
記憶喪失の僕と、ボクっ娘の君
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
kaman_zora