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人間の坊やと魔女さん
written by kaman_zora
  • インモラル
公開日2021年06月05日 18:00 更新日2021年06月05日 18:00
文字数
3142文字(約 10分29秒)
推奨音声形式
指定なし
推奨演者性別
女性演者向け
演者人数
1 人
演者役柄
指定なし
視聴者役柄
指定なし
場所
指定なし
あらすじ
その世界には様々な種族がいた。
それぞれに縄張りを持っており、縄張りに入ったものには容赦をしない。というのが常識。

ここに、魔女がいた。
森の中で一人で暮らす彼女には、そんな常識なんてどうでもよかった。

とある日、魔女の家にたどり着いた少年がいた。
本編
ガチャ
うわぁ!
びっくりした!
私の家の前で何をしておる。

キミは誰だ?
どうしてこんな森の奥におる。

え?捨てられた?
キミは見たところ人間だろう?
人間とは本当に久しぶりだが。
捨てられるなんて話、あまり耳にしたことはないな。

なるほど。
家族が貧乏で、両親が夜逃げしたのか。
それでキミを置いていくなんて、とんでもないヤツらだな。
人間とは本当に醜い生き物よの。

中に入るか?
まぁ、魔女の家に入る覚悟がキミにあればの話だがな?

フフフ
坊や、怖いか?
魔女は危険だって教わってきたのだろう。
何をされるか分からんぞぉ?
フフフ

ほぅ。中に入るか。
なかなか勇気のある子だ。
いいぞ。入れ。

バタン
ガチャ

フフフ
鍵をかけさせてもらったよ。
これで、キミは私から逃げられない。

やっぱり怖くなったか?
そうだろうそうだろう。
魔女はとっても怖いんだ。
キミのような坊やにナメられるわけにはいかんからな。

ん?
別に何もせんぞ?
ただキミを試して遊んだだけだ。
鍵だってすぐに開けられる。

そんなことより、早く風呂に入ってきたらどうだい?
泥だらけじゃないか。
着替えは用意してやる。
はよ行ってこい。
話なら後で聞いてやるから。



おかえり。坊や。
うん。なかなか似合ってるじゃないか。
私のセンスが光るな。
フフフ

さっきは泥だらけで分からなかったが、キミ、悪くない顔立ちだ。
先ほど見せた勇気といい、気に入ったぞ。
しばらくここにいるが良い。


何か不満か?
キミは、ここに来てからずっと暗い顔をしているが。。
何があったんだ?

何?
キミの弟も捨てられたのか!?
その弟はどこに?

は、はぐれた、だと?
どうしてずっと手を握ってやらなかったのだ!
キミがあんなにボロボロだったということは、弟はもしかしたらもう。。

あ、いや、すまない。
無神経だった。

泣かないでくれ。
と言っても無理か。

何?昨日森で獣に襲われた!?
その時にはぐれたのか。
事情はわかった。

坊や、もう泣くな。
私が弟を探してやるから。
な?
大丈夫だ。私を信じろ。
私は魔女だぞ?
出来ないことなんて無いんだ。

あ、いや、キミの涙を魔法で止めるのは難しいが。。
それも、弟くんを見つけ出して、止めてやる。
安心しろ。

坊や、弟くんの体の一部か、弟くんがよく身につけていたものを持っていないか?
探し出すために必要なんだ。

こ、これは、靴か。随分ボロボロだな。
サイズからして、まだ相当幼いようだな。
それを貸してもらってもいいか。

ありがとう。
ちょっとここで待っていてくれ。
奥の部屋で捜し物の魔法を使う。


こ、これは。。
どう、伝える、ものかな。。


お待たせ。坊や。
弟くんの居場所がわかったから、私が迎えに行ってくるよ。

だめだ!
森はとっても危険なんだ!
子供を連れてなど行けない!

坊や、それは勇気ではない。
ただの無謀というものだ。

分かってくれ。
キミをこれ以上嫌な目に合わせたくないんだ。
私が必ずキミの弟を見つけてくる。
信じてくれ。

駄々をこねてもダメだ!
キミのためなんだぞ!
不安な気持ちは分かるが、私を信じてくれ!

ハァ
そんなにしつこいなら、仕方ないか。。

守護結界!

この部屋から術者以外が出入りできないよう、結界を作った。
これでキミはもう私について来られない。

ふん!
私は魔女だぞ。
ずる賢くて何が悪い。

じゃあな。
大人しく待っていろ。

ガチャ
バタン


弟の反応、一切動いていなかった。
身を潜めているだけならいいが。
もし、そうでないとしたら。。

坊やを連れてこられるわけない。



この辺りのはずだが。。



これは!血痕。。
獣のにおいがキツい。
弟のものではないか。。
でもこの血、まだ新しいもののようだが。。
坊や達が襲われたという獣のものだろうか。
だとすると、なぜその獣の血が。。


あ、あれは!
弟くんの靴!?
あそこにいるのか!

おい!そこの坊や!大丈夫かい!?

。。。

おい!大丈夫―
なっ!?

顔が、ない。。?

むごいな。。
こんな。。

嫌な予感が当たってしまった。
この子は、親に捨てられ、森の中で怖くて、震えて、傷ついて、辛いまま、死んだのだろうか。
そんなの、あまりにも。。報われなさすぎるだろ。


坊やに、なんて言えばいいんだ。。
「間に合わなかった」?
「私にはどうしようも無かった」?

何を言ったとしても、弟が死んだ事実は変わらない。
坊やは絶望し、自分が手を離してしまったことを恨み、自分を呪い、自ら死を選んでしまうかもしれない。

私は、このまま戻らない方がいいのか。。?
だが、坊やがあそこで長い間暮らせるわけではない。いつかは私が行って食料を届けなければならない。

見つからなかったと嘘をつくか。。?
だが、見つからなかったなんて言えば今度は自分で探そうとするだろう。
私の力で押さえつけても、坊やが素直でいてくれるとは思えない。
ひとたび家から出せば、一人で探そうと私から逃げ出すだろう。


私は、弟を連れて帰る、なんて、言ってしまった。
あの場ではそう言って坊やを宥(なだ)めるしかなかった。
だが、あの無責任な発言で、私と坊やは呪われたのかもしれない。
「希望を与えてしまった」
希望を得てしまったら、同時に絶望への感度が高まる。
私は、なんて愚かだったんだ。


私には、希望を与えた、責任をとる必要がある。
私なら、それが出来る。
人間で試したことは無いが。

いくぞ。長年の研究の成果!
蘇生魔法!

ハァハァ
くそっ!
もう一度だ!
蘇生魔法!

ハァハァ
なぜだ!
なぜ上手くいかないんだ!
蘇ってくれ!
蘇生魔法!!

ハァハァ
な、なんとか、なったか。。
ハァハァ
呼吸は戻ったし、じきに目覚めるはず。。
ハァハァ
もう、魔力が。。
ハァハァ

!?

なんだ!?
この地鳴りは!?

あれは!
オークか!
しかもあのサイズ、かなり大きいぞ。

まずい。
普段の私なら、魔法でなんとかなるが。
今は魔力が少ない。
気づかれないようにやりすごせばなんとか―

おい!坊や!
そんなに大声を上げるな!

チッ
バレてしまったか。
坊や、逃げろ!
ここは私が何とかする。
キミはとにかくこの森から出るんだ!
このお金を持っていけ!
それでなんとか過ごすんだ!
仕事を見つけろ!
兄と一緒に強く生きるんだ!

早く行け!

くそっ!
こいつ!
氷結魔法!

足止めは任せろ!
早く行け!
ハァハァ

よし、行ったな。
あとはこいつをどうするか、だが。

何!?
私の氷結魔法が破られた!?

まずい!
結界!

グッ
こいつ!強い!
なんだこのパワーは!
私の結界を、パワーだけで!!

グハァ!

グッ
ゲホッゲホッ

い、いかん。
体を、もっと、鍛えておく、べきだった、な。。
ゴホッ
動け、ない。
足が、イカれて、しまったか。
魔力が、もう、少ない。
ハハ、これは、まずいな。
あんな人間の坊や、放っておけば、良かったかな。

ハハ、無理だな。
私は、魔女、失格かな。

!?
こいつ!
私を無視して、弟くんが逃げていった方に!?

そうは、させるか!
石化魔法!

これで、足止めを―

グハッ

ゲホゲホ
ゴホッ

ヘヘッ
ざまぁないね。
私を、殴ることしか、出来ないんだね。ゴヘッ
う、動けない、でしょう?ゴホッ
私の、魔力が、尽きるまで、遊んで、貰うよ。ブタさん。

ボカッドスッドゴォ

ガハッ

まだ、だね。。
私は、死んで、ない。

バコォガスッドゴォ

ヘ、ヘヘ
もう、弟くんは、逃げたよ。
私の、勝ち、だね。。。

ドスッドゴォバコォ

。。。

ドカッボゴォバコォ








魔女の家の結界が突如解け、坊やは外に飛び出す。
その扉の前には、弟が、靴を片方だけ履いて座り込んでいた。疲れて力尽きたのだろう。
弟は生きていたんだ!
「魔女さん、ありがとう!」
しかし、その声の向く先は、無かった。
魔女はそこには居ない。
弟の手には大量のお金が入った袋。
森の中で拾ったのか?
何が何だか、分からなかった。
魔女はどこに行ったのだろう。
ひとまず弟を家に入れる。弟が目覚めるのを待つ。
帰ってくるはずのない、魔女の帰りを待ちながら。
クレジット
・台本(ゆるボイ!)
人間の坊やと魔女さん
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
kaman_zora
ライター情報
 完全に趣味でシチュボ台本を書いてます。

 メンヘラ、ヤンデレ、励まし、謎シチュなどなど、いろいろ書いてます。

 R18Gはたまに書きますが、
 恐らく、百合、BL、女性向け、R18は、ほとんど書きません。難しい!

 ぜひ自由に改変していただき、ガンガン使ってください!

 よろしくお願いしますm(_ _)m
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