とっても優しい幽霊ちゃんは、人間とお話ししたい。
今日も、人間に声を掛けては、見える人を探す。
聞こえる人は多いんだけどなぁ。。

今日も今日とて、お話しするために声を掛ける。

おーい
もしもーし
うらめしやー

。。。

はぁ〜まただめかぁ〜
誰も気づいてくれない。
幽霊って案外暇なんだなぁ。

って。あれ？

あの子、震えてる？
いや、泣いてる？

おーい
大丈夫？
って、気づくわけないか。
あははは。。

。。え、あ。あれ？
私のこと、わかるの？
すっごく目が合う！

こ、こんばんは！
あ、いや。
う、うらめしやー
みたいな。。
えへへ。
見える人なんてはじめてだから、緊張する。

あ、大丈夫だよ？
私はなんにもしないよ？
ただあなたとお話ししたいだけ。
そんなに怯えないで？

あ、えっと。
ご、ごめんね？
こわいよね？

えっとーー
それじゃぁ。
よし。
あなたには絶対に近づかない。
そーしゃるでぃすたんすを保とう。
それなら、心配ないでしょ？

よし。決まり。
楽しくお話ししよう。ね？

あ、あー。
えーと。。
結構無口なんだね。
えーとね。。

あ、そうだ。
あなたはこんな夜に一人で何してたの？
いや、私にとっては嬉しいんだけどね。
気になっちゃって。

あ。。
お家、締め出されちゃったの。。？
そっかぁ。。

。。よし！
その、締め出したヤツをとっちめてやろう！

え？
なんで。って。
あなたが泣いてたからだよ。
私のこと、こんなにすぐに受け入れてくれた優しいあなたを泣かすなんて、きっと悪いやつだ。

私が驚かして、骨抜きにしちゃうよ。
まっかせといて〜

。。あ。
いや、見える人はあなたがはじめてなんだけど。
聞こえる人は、結構いるから。。
たぶん、大丈夫！
頑張ってみる！

だから、誰から締め出されちゃったか、教えて？


あ、あんまり、言いたくない。よね。
今、はじめて会ったわけだし。
うーん。
じゃあ、一旦。
一旦ね、あの酔っぱらいのサラリーマンさんを驚かせてみるね。


「うーらーめーしーやー」
「早くおうちに帰らないと、奥さんが化けてでるぞ〜」


ほらね。
びっくりして、慌てて家に帰っていったよ？
どうどう？
すごいでしょ？

ね。
だから、私に任せといて？

うん！
ありがとう！

それで、あなたを締め出したのは？

。。。義理のお父さん。か。
何か、複雑な事情があるのかな。

あ。そんなことまで、話してくれるの。。？
ありがとうね。

そっかぁ。
お母さんが見てないところでいじめをね。。
本当にクズじゃないか。
これは本気でやらなきゃね。。

私にできることは少ないかもしれないけど。
頑張ってみるね。

案内してもらってもいい？
あと、その人の写真とか、あるかな？

ありがとう。




よし。
行ってくるね。



あ。いた。
アイツ。
なんか、やつれた顔してる。
夜、寝れてないのかな？
あ、いや、そんなことはどうでもよかった。

おい。
お前。

そうだ。
そこのお前。
聞こえるだろう。

我は地獄から来た死神だ。

その邪悪な魂を刈り取りに来た。

邪悪な魂は美味いからな。

すぐにでも、いただくとしよう。


は？
何も悪いことはしてない。。？

我を欺こうなんて、無駄なことを。

お前が邪悪な魂を持っていることはわかっているのだ。

まあお前が邪悪な魂を改めて清い魂を持ってしまうというなら、我は何も出来なくなるがな。


だから。
何も知らないって。
ふざけてるのか。

自分の子供を締め出しただろう。
その子から直接聞いたぞ？
そんな酷いことをしておいて、何も知らないなど――

お、おい。
どうした。
なぜそんなに震えている？

やめてくれ、なんて。
そんなに連呼して。
一体どうしたんだ。

お、おい。
本当に大丈夫か。
おい！おい！

気絶しちゃった。。

うーん。
よく分からないけど、一応、骨抜きにできた、のかな？

まあいいか。
あ、でも。
家の鍵を開けさせなきゃ。


ん？
家の鍵、開いてる。
なぁんだ、ちゃんと戻って来られるようにして、待ってたのかぁ。
私、必要なかったかもな。

てか、なんだこれ。
たくさん貼ってあるけど。御札？
私には、なんにも影響ないみたいだけど。
レプリカか何かかな？

まぁ、いいか。
鍵は開いてるんだし、あの子のもとに帰ろうかな。



ただいま。
戻ったよ〜

無事、あの男を骨抜きにできたよ！
どうだ〜すごいだろ〜

で、鍵も開けさせたから。
あ、いや、すでに開いてたんだけどね。
あはは。。

もう大丈夫だよ。
家に帰れるよ？

え？
帰れない。って。
なんで？
もう、なんにも心配いらないよ？
不安だったら、私も一緒に行くし。


。。。え。
結界。。？

確かに、御札がたくさん貼ってあったけど。。


まさか。

まさか。あなた。


あなたも、幽霊。。？

でも！
そんなにハッキリとした形で見えるなんて。
そんなの。

そんなの。


恨みが強い幽霊しか、いない。




ちょ、ちょっと。
こっち、来ないで。

怖いって。

やめてよ。

ちょっと！
ホントに待って！

やめ――
(ｶﾞﾌﾞｯ)

・台本（ゆるボイ！）
心優しい幽霊ちゃんと、締め出された子供
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
kaman_zora