僕には彼女がいる。

でも最近、特に束縛が強い。
門限も決まっており、遅れるときには連絡を入れなければならない。
なんでそこまでされなければならないのか。

うんざりだ。

僕だって自由な時間くらい欲しいんだ。
帰り道に気の向くままに友達と寄り道するくらいしたっていいじゃないか。

そして今日、彼女に黙って寄り道をした。
もちろん連絡も入れていない。

少しの反抗のつもりだったんだ。

あ、彼氏くん！
おかえりなさい。

良かった。。
帰ってきてくれた。。

彼氏くん。
今日、遅かったね。
門限より9分も遅いよ。

何かあったの？
私、心配でたくさん電話したのに。
彼氏くん、全然出ないんだもん。
不安で不安で、今、迎えに行こうって準備してたんだよ？

心配するよ！
もし彼氏くんに何かあったら、私、私。。！
どうしたらいいか。。

でも、ちゃんと帰ってきてくれたんだもんね。
本当に良かった。。

それで、彼氏くん。
何があったの？
何か理由があって遅くなっちゃったんだよね？

。。え？
特に理由はない。。？

待ってよ。
それはおかしいよ、彼氏くん。
私と約束してくれたよね？
理由もなく、連絡もなく、門限を破ることはしないって。
ねぇ。約束、してくれたよね？

あ。
ごめんね。
ちゃんと分かってるよ。
彼氏くんはお友達みんなに優しいもん。
きっとお友達のことで、何か言えない事情があるんだよね。。？
ね。そうだよね？
だから遅れちゃったんだよね？

。。え。
それも違うの。。？

だったらなんで。。



。。え。
別れよう、って。。

え。
ちょっと。
待ってよ。
なんで？
なんでそんな事言うの。。？
冗談でもそんな事――

え。。冗談じゃない、って。。

ま、待ってよ！

なんでそんな急に。
何か私が悪いことしちゃったの？
彼氏くんの気に障るようなことしちゃった？
ねぇ教えてよ彼氏くん。
私、直すから。。
彼氏くんのためなら何でもするから。
だから、教えてよ。


疲れた。。？
付き合いきれない。。？

な、何に？

わ、私は別に詮索なんて――！

違うよ！
それは、彼氏くんのことが心配で――！

違わないよ！
私は彼氏くんが第一だから。
だから心配で電話したの。
門限も決めたの。

。。え。
自分のことだけを見ていて欲しいからだろ、って。。？

。。。

そうだよ。

私、彼氏くんに、私だけを見て欲しいよ！！

彼氏くんが他の女といるんじゃないかって、ずっと不安なの！
他の女のことばっかり見て、私なんか見なくなって！
私を捨てていっちゃうのが怖いの！

門限も！
電話も！
全部怖いから！
私の彼氏くんが、私から離れて行っちゃうのが怖いの！

ねぇお願い。
私だけを見て？
私のことだけを愛してよ。
私、彼氏くんのためならなんでもするよ？
彼氏くんの理想の彼女に、ちゃんとなるよ？

。。え。
何でもするんだったら別れてくれ。。？

なんでそんな事言うの。
そんなの彼氏くんのためじゃないよ！！
彼氏くんには私が必要だよ！
私にも彼氏くんが必要！
私たちはこんなに求め合ってるの！
愛し合う運命にあるの！
分かるでしょ！？
なんでそんなこと言うの！

あ、わかった。
私を試してるんだよね？
ちゃんと彼氏くんを愛してるかどうか。
ねぇ、そうなんだよね？
もう。
だったらそんな回りくどい事しなくてもいいのに。
私は、ずっとずっと、変わらず愛してるよ。彼氏くん。


え？
なに？

違う？
何が違うの？

それはもうわかったから。
私、彼氏くんを愛してるって、ちゃんと証明できたよね？
伝わってないのかな。

え。
ちょっと！
何してるの？
もう外は暗くなってきちゃってるよ？
それに、私と晩ごはんを食べる約束でしょ？

ま、待ってよ！
ちょっと！どこに行くの！？
私との約束よりも大事なことなの？

まさか本気で――
ちょっと！ほんとに待ってってば！！
(ｶﾞｼｯ)

ごめんね。
腕、掴んじゃったりして。

ねぇ。
私と、ちゃんと話そう？

どうしちゃったの？
彼氏くん。
私のこと、嫌になっちゃったの？

なんで？
私が魅力的じゃないから？
他に好きな人ができたから？
それとも門限が嫌になったから？

え。。？
そういうところ。。？

そういうところ、って何。。？
分からないよ、彼氏くん。
ちゃんと教えて？
私、直すから。

しつこいところ。。？

私、しつこいの。。？

ご、ごめんね。
彼氏くんが嫌なら、私、しつこくしないように気をつけるね！
だから、私と一緒にいて？

え。何も分かってないってどういうこと？
私、また彼氏くんの気に障るようなことを言っちゃったの？


。。そんな。
興味がなくなった、なんて言わないでよ。。
それなら私はどうしたらいいの。
どうしたら、彼氏くんに見てもらえるの。
教えてよ。彼氏くん。

ねぇ！教えてよ！！

無理、なんてそんな適当なこと言わないでよ！
私、ちゃんと彼氏くんに愛してもらったもん！
だから、絶対！
彼氏くんにまた愛してもらえるの！
今は興味がなくなっちゃってても、いつかは――！

あ、ちょっと！
さよならなんて言わないで！
行こうとしないで！
ごめんなさい！
待って！
お願い！


。。ありがとう、彼氏くん。
彼氏くんはやっぱり優しいね。。

あの。
ごめんね。
私がまたしつこくしたから、怒っちゃったんだよね？
私、頑張って直すから。
だから、お願い。
私を置いていかないで。。

やめて。
謝らないでよ。

謝らないで！！
本当に置いていこうとしてるってことになっちゃうよ！
そんなのだめ。
嫌だよ。
やめてよ。

だから謝らないでって言ってるでしょ！！
それじゃ本当に――！

本当に。。
私を捨てるの。。？






。。ふふふっ

あははっ！

そっかぁ！
そうなんだね！
私のこと捨てるんだぁ！！

ねぇねぇ彼氏くん！
私ね、今決めたよ？

彼氏くんが私を捨てたら、私、あなたの目の前で死ぬことにした。

ウソだと思うでしょ？
大丈夫。ちゃんと死ぬよ。
ほら。これ。包丁。

何をそんなに慌ててるの？
別にいいよね？
彼氏くんは私には興味がないんだもんね。

自分の身を切り刻んで！
心臓に包丁を突き刺して！
彼氏くんへの愛を叫びながら死んでいくの！

彼氏くんの！目の前で！！

あははっ！
なんて悲惨な最期なの？
ねぇ彼氏くん。
互いに愛し合ってきて、これからもずっとずっと永遠に続くと思ってた関係が突然絶たれて、私は愛に狂いながら死んでいくの！

きっと楽しいんだろうね！彼氏くん！


。。。

彼氏くん。
出ていかないの？


ふふふっ
嬉しい。。

私のこと、愛してくれるんだね。
私のことだけ、見てくれるんだね。
彼氏くんは、他のみんなを捨てて、私を選んでくれたんだね。
ありがとう。彼氏くん。
私、私にだけ優しい彼氏くんが大好きだよ。

ねぇ。
約束して？
もう二度と、私から離れないで？
私以外の誰にも、心を許さないで？
私だけを見て、私だけを頼って？
私を求めて、私に依存して？
私と彼氏くん、二人でひとつになりたいの。
二人でいないと生きていけない関係になりたいの。

だから、約束して？


。。ねぇ答えてよ。


なんで何も言ってくれないの。。？

え。
まず包丁を置いて欲しい？

だめだよ。
絶対にだめ。
彼氏くんが答えてくれるまで、絶対に手放さない。

私、不安なの。
私を捨てるって言った彼氏くんの言葉。
ウソだったなんてどうしても思えないの。

だから。
今、私と約束して？

約束してくれるまで。
彼氏くんに捨てられちゃう不安がなくなるまで。
絶対にこの包丁は手放さない。

いいんだよ。
私のこと、嫌いになっちゃったなら、今すぐ出て行こうとしても。
そうしたら、あなたの嫌いな私が目の前で死ぬだけだもん。
彼氏くんにとって、何も悪いことなんてないよ。

でもそうする気がないのなら、ちゃんと約束してよ。
私を早く安心させてよ。
お願い。
早くして。。
私、不安でどうにかなりそうなの。。！


。。ありがとう。彼氏くん。
二度と離れないって言ってくれて。

これでもう、私たちは一生愛し合っていけるね。
私たち、二人で幸せになれるんだね。

嬉しい。。
嬉しいよ彼氏くん。
彼氏くんもそう思ってくれてるよね？
嬉しいよね？

そっか。
良かった。。

ごめんね。
彼氏くんを疑うようなこと言って。
私、やっぱりまだ不安なのかも。。

ねぇ。彼氏くん。
私のこと、抱きしめて？
私とちゅーして？
ちゃんと、愛を確かめ合いたいの。

。。ありがとう。

(ｷﾞｭｯ)

あったかい。。
彼氏くんのぬくもりが、私のこと包み込んでくれてる。。
ｽｩｰｰ
いいにおい。
彼氏くんのにおいがするの。。

私、今、とっても幸せだよ。。？

彼氏くんも、そう思ってくれる。。？

うん。。！
大好き。

ぎゅーー


ねぇ。
ちゅー しよ？

んっ

もっとぉ。。

んむっ



彼氏くん。。

愛してるよ。

これからも、ずっと。

ずっと、一緒にいようね。
ﾁｭｯ

・台本（ゆるボイ！）
メンヘラ彼女とは別れられない
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
kaman_zora