僕には彼女がいる。

とても、かわいい。
普段はツンケンしているが、根はとっても優しい。いわゆる、ツンデレというやつだ。

恥ずかしがって、カノジョらしいことをやってくれないのは少し残念だけど、それも彼女らしさなのだ。
僕は彼女が好きだ。

今日も、家に遊びに来てくれることになっている。そういえば、何時に来るか聞いてなかったような――
(ﾋﾟﾝﾎﾟｰﾝ)

(ﾋﾟﾝﾎﾟｰﾝ)

(ｶﾞﾁｬ)

あ。こ、こんにちは。
えっと。。

あ。はい。
息子さんの、彼女の。
えへへ
はい。そうです。

お邪魔します。

あ。自分の部屋にいるんですか？
わかりました。
ありがとうございます。

し、失礼します。



(ｺﾝｺﾝ)
あんた、いるんでしょ？
開けなさいよ。

は、はぁ？
ちょっと待って、って何よ！
あたしを廊下で待たせる気？
ふざけんじゃないわよ！
入るからね！

(ｶﾞﾁｬ)
あ。

あんた、何してんの！？
上、脱いで。。！
このヘンタイ！
準備が出来てないなら、そう言いなさいよ！

ちょっと待ってって言ったのにあたしが勝手に入ったのが悪いって？

そ、それは...！
そう、かもしれないけど。。
ていうか！なんで服着てないのよ！
ほんとにヘンタイだったの！？

あ。もしかして裸族ってやつ。。？

まぁ、あんまり口を出す気は無いけど、一人暮らしでもないんだから、裸でいるのはどうかと思うよ？
またさっきみたいなことになるかもしれないし。。

。。あの。
それで。
もう服着た？

ふぅ。よかった。
まったく。
びっくりしたじゃない。

。。あれ。
それ、なに？
スマホで何か聴いてたの？
ほら、そこにイヤホンが。

。。へぇ。
耳かきボイス？
それって、どんな感じなの？
あたし、聞いたことないんだけど。

聞いてみていい？

。。。

あんた、こういうの好きなの。。？

ふ、ふーん。

あんた、ばっかじゃないの。
こんなの、実際にやってもらった方が、気持ちいいに決まってるんだから。
聞くだけムダよ。

ムダよ、ム！ダ！
実際に耳あかが取れてないんだから、いくら聞いたってかゆいまんまじゃない。
絶対に実際にやった方が気持ちいいんだから。

だから。

ほら。
分かるでしょ？


んあぁ〜もぅ！察しが悪いわね！

何って。。

だから。その。。

み、耳かき、してあげるって言ってんの！
そのくらい察しなさいよ このばか！

な、なにをそんなに驚いてんのよ！
耳かきくらい、あたしにもできるっての！

え？
そうじゃない？
いつもはそんなこと言わないのに急にどうしたの、って。。？

べ、別にいいでしょ！
あたしが耳かきしたかっただけよ！
別にあんたのためにやってあげようとか、そういうのじゃないんだからね！
勘違いしないでよね！

ほ、ほら。
いつまでも目丸くしてないで、早くこっち来なさいよ。
(ﾎﾟﾝﾎﾟﾝ)


。。何してんのよ。
早くしなさいよ。

だ か ら！

膝枕してあげるってこと！

もう。
何回も確認しなくていいから。。
早く、来なさいよ。
恥ずかしいんだから。。


(膝枕)

ひゃ！？

あ。ごめん。
ビックリしちゃって。

誰かを膝枕してあげたことなんてなかったから。。

へ？
あ、待って！
やめないで。

いいから、黙って寝てなさい。
気にしなくていいから。


えっと。。
ま、まずは、左の耳から――
(ｺﾞｿｺﾞｿ)
あ、ちょっと！
急に動かないで！
くすぐったいって！

それはそうだけど。。！
あたしが言ってからにしなさいよ！

その。
心の準備ってものがあるんだから。。


いい？
あたしが言ったことしかしちゃダメだからね！
わかった？

はい、いい返事です。

ﾊｧ..
あんたはなんでそんなウッキウキなのよ。。

じゃあ、そっち向いて。

始めるよ？

って。。
うわ。
きったな。
あんた、前に耳かきしたの いつよ。
すっごい汚いんだけど。。

えぇ！？
覚えてない！？
そんな前なの！？

耳かきボイスなんて聞いてる暇があったら、自分で耳かきくらいしなさいよね！
まったく。。


まぁ、今日に限っては、やりがいがあるからいいけど。

じゃあ、入れるよ？

(耳かき)

どう？
気持ちいいでしょ？

あたし、よく妹にしてあげてたから、結構自信あるんだよね。耳かき。

てかあんた、ちょっと湿った耳あかしてるのね。
結構取りづらい。。

おっ。
取れた。


ほら。
あんたも見なさい。
こんなのがゴロゴロあるんだから。

これ見て、少しは反省しなさいよね。
耳が聞こえなくなっても知らないわよ。


。。あんた、さっきからニヤニヤして、なんなのよ。
何がそんなに楽しいんだか。

え？気持ちいいだけ？

ほ、ほんと。。？

は、はぁ？
最高 って、そんな。
そんなに。。？

。。え。
耳かきボイスよりも、気持ちいいかも？

あ、当たり前でしょ！
あたしが直々にやってあげてるんだから。
そこらの耳かきボイスなんて、比にならないわよ！
ふふっ

もう、分かったから。
じっとしてなさいよね。
ふふふっ

(耳かき)


(小声)ふふっ、幸せそうな顔。。かわいい。。

え？
べ、べつに何も言ってないわよ！？

い、いいから黙って目閉じてなさい。

(耳かき)


それじゃあ、仕上げね。

(梵天)


はい。おしまい。
じゃあ次は右耳ね。

ん？なに？

は、はぁ！？
耳に息をかけて、って。
無理に決まってるでしょ！
そんな――

な！？
じゃあ耳かきボイスの方がいいかも って。
あんたねぇ！
さっきはあんなに喜んでたじゃない！

た、確かに、耳かきボイスだと、耳に息をかけてたけど。。

そ、そんなに、耳、ふーってしてもらいたいの。。？

あ、あんたがそう言うなら―
って、違う！
そんなのダメよ！
そもそも、耳に息を吹きかけるのは耳に残った細かい耳あかを息で飛ばすためであって！あんたの湿った耳あかには必要ないし――

って。
そんな悲しそうにすることないじゃない。。

あたしが悪いみたいじゃない！


。。あぁもう！わかったわよ！
やればいいんでしょやれば！

(小声) なんであたしが、こんな。。

ﾊｧ..
い、いくよ？

ｽｩｰ...


やっぱダメ！


え。あ。
ちょっと！
待ってよ！

まだ右耳もやらなきゃいけないんだから！
勝手に起き上がらないでよ！

耳かきボイスの方がいい なんて言わないで。
ごめん。
ちゃんと耳に息かけるから。
お願い。
もうちょっとだけ、耳かきさせて？

うん。
ありがとう。

ここ、来て？


じ、じゃあ、いくよ。。？

ｽｩｰ...

ふーー


あんた、今変な声出さなかった。。？

気のせい？

そっか。
ならいいけど。

それで。
どうだった？

あ。一応ね！
一応感想聞いておこうかなって、そう思っただけよ。

そっか。
良かったんだ。
ふふっ
そうなんだ。
へぇ
ふふふっ

な、なんでもないわよ。
いいから、次、右耳やるから。

(ｺﾞｿｺﾞｿ)
あ、ちょっと！
(ｸﾞｲｯ)
そのままこっち向くな！
このヘンタイ！

ちゃんと体ごと動かしなさい！

えぇ〜？じゃない！
むこう向くの！
こっち向くのはダメ！

わがまま言うなら、もう二度とやってあげないわよ！
それでもいいの？

ふふっ
素直なのはいい事よね。

そっかぁ
そんなにやって欲しいんだぁ
ふふふっ

いいよ。
右耳もやってあげる。

早く寝て？

(膝枕)

それじゃ、入れるね？

(耳かき)


うん。
分かってはいたけど。
こっちも汚いね。


ほら。
これ、今取れたやつ。

ほんと、よく今まで放置してたよね。
こんなのが耳の中にたくさんあるってのに。


今後はちゃんと自分で耳かきするのよ？
いい？

はぁ！？
あたしにやってもらいたい！？
ば、ばか言ってんじゃないわよ！
こんな恥ずかしいの、何回もやってあげるわけないじゃない！
調子に乗らないでよね！
まったく。

今回は特別なんだから。。


な、なんだっていいでしょ！？
特別な日なの！


。。そうよ。
あんたの誕生日。

その。

おめでと。


。。あぁもう！
なんでこういう時だけ察しがいいのよ あんたは！
黙ってようと思ったのに、もう。。


か！？かわいいって何よ！

う、うるさいうるさい！
黙りなさい！このばか！
あんたは黙って耳かきされてればいいの！


べ、別に、ありがとう なんて言われるようなこと、できてないわよ。
ただ、耳かきしてるだけ、だし。。

そ、そう？
それでも、嬉しいの？
そっか。
そんなに、喜んでくれるんだ。。


でも。。

ごめんね。

なんで、って。。

今日は、あんたにとって特別な日、なんだから。
だから。
あたし。
頑張ってみようって。
もっと、素直になって、あんたの好きなことをしてあげて、癒してあげようって。
そう思ったのに。

それなのに。。
全然ダメだった。

やっぱり恥ずかしくって。
全然、素直になれなくて。。
あんたにひどいこと言っちゃった。

その。ヘンタイ とか、ばか とか。
そんなこと、思ってないのに。。
なんであたしは、いつもいつも、こんな。。
あんたを傷つけるようなこと言っちゃうの。。？

本当にごめんなさい。。

あたし。。！
ほんとは、あんたのこと。。

その。。

ちゃんと好きだから！
告白してくれた日からずっと！
ずっと好きだから！


。。言えた...！

へ！？
あ、あの！
あ、愛してるって！？
あいしてるってなんだっけ！？
あの、えっと。その。。！

う、うん。
深呼吸、する。

(深呼吸)


あ、あの。

ありがと。


あ、あたしも。
あんたのこと。
あ、
あ、
あの。
えっと。。

あ、あい、してる。よ？


。。えっ。と。

ほ、ほら！
耳かき耳かき！
まだ途中でしょ！
早くそっち向いた！

ちゃんと、目、つぶってなさいよね。


なによ。
案外素直じゃない。

入れるよ？

(梵天)

いつもなら、いじわるしてくるのに。
なんで急に素直に―

な！？
ち、違うわよ！
いじわるされたいなんて思ってるわけないでしょ！
このばか！

あ。
ごめん。。

また、あたしは、あんたに酷いことを。。

。。え？
そんなの、慣れっこ？

慣れっこって。。
こんな罵倒に慣れちゃダメ。
ちゃんと怒って？
あんたはそんな人じゃないの。
分かってるから。。
だから、ちゃんと怒って。。？

気が向いたらって。
あんた、ふざけないでよ。
あたしは、あんたに怒られるべきなの。
どんな罵倒を浴びせられても仕方ないくらい、あんたに酷いことを言ってきちゃったの！

だから。

怒ってよ。



え。うん。
起きて、いいよ？

。。。

あの。
なんで、
頭、撫でるのよ。

気にしてない、じゃないの。
あんたは傷ついたはずよ。
あたしの言葉で。
だから――

もう。
ちょっと。
わしゃわしゃしないでよ。
髪型が崩れるでしょ。
なんなのよ。

ほ、本当に、傷ついてない。。？
むしろ、僕のこと思っててくれて嬉しい。。？

。。。

なによ。それ。

なんなのよ。あんた。


優しすぎるのよ！
もう！
ばかばかばか！

あんたは ばかよ！
あたしなんかに優しくして！
あたしのこと、ずっと好きでいてくれて。

あんた、ほんとに ばか。。


。。好き。
ﾁｭｯ

好きでいてくれて、ありがと。
あたしも、好きだよ。。？


か、顔が、熱い。。

あんたも、そうなの。。？

ふふっ
あんたも、ドキドキ、してくれてるんだ。

嬉しいな。


ねぇ。
あたし、素直になれたかな。。？
ちゃんと、あたしの気持ち、全部、伝わったかな。。？


うん。。！
よかった。。


今日はあんたのための特別な日。

だから。

耳かき、最後まで終わったら。。
もっと。
あんたの好きなこと、いっぱい、しよ？

・台本（ゆるボイ！）
今日だけは耳かきしてくれるツンデレ彼女
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
kaman_zora