僕の部活の先輩は、いわゆるボーイッシュな先輩だ。口調はキツめかもしれないけど、根は優しくて、いい先輩なんだ。

今日も放課後、先輩が待ついつもの教室へ。

でも、今日はいつもとは違う。

遂に手に入れたこのメイド服！
先輩に絶対似合うと確信している！
今日はこれを着てもらうんだ！
土下座でも何でもして、必ずや着てもらおう！
先輩は優しいから、きっと着てくれるはずだ！
ワクワクしてきたなぁ。。

お、アンタか。
授業おつかれ。
今日はやけに元気だな。
なんかあったのか？

え？
アタシに用事？
なんだよ。

うぅわ。なんだそれ。
メイド服？
アンタ、女装趣味かよ。
結構ヤベェやつだったんだな、アンタ。
いやまぁ好きにすればいいとは思うけどさ。
あんまそこらの人に見せびらかすもんじゃねぇと思うけどな、アタシは。


は？
違う？
じゃあその服はなんだよ。


はァ〜！？
アタシに着てほしい！？

あ、アンタ、ふざけてんのか！
そんな服、アタシに似合うわけねぇだろうが！
早くしまえ！
こっちに差し出すな！


お、おい。
そんな目をしたってダメだ。
あたしは着ないぞ！

。。着ないからな！


な、泣いてんのか！？
そこまで！？
そんなにあたしに着てほしいのかよ！？


うん。って。。

なんだよ。
急にしおらしくなりやがって。

わかったよ。
着てやるよ。

着てやるから！
涙ぐむんじゃねぇ！

な？


お、おう。
そんなにかわいい笑顔向けんなよ(小声)。


お、おい。
これって、どう着るんだ！？


あぁ。
そこをそうするのか。。
あ、ありがと。

って！
アンタ、さっきまであんなしおらしくしてたくせに！
もうそんなノリノリになりやがって！
アタシを騙したなぁ！？

い、いや。
ここまで来たら、着るって。
だからそんなしょんぼりすんなよ。

てか。
これ。
なんだ。この。
ふりふり〜、って感じ！
しゃららら〜ん、って感じは！

絶対アタシには似合わねぇと思うんだが。


そ、そうかぁ？
ほんとかよ。。

はぁ。。

だいたい着方はわかったから。
ほら。


。。おい！
察しろよ！
早く出てけ！
着替えるから！
廊下で待ってろ！

はぁ。。

ほんとになんなんだ。アイツは。。
こんな服アタシに着せて、なんかの罰ゲームかっての。


。。待てよ。

本当に罰ゲームなんだとしたら？

。。あの野郎っ！

(ｶﾞﾗﾗﾗｯ)

おいテメェ！
こんなの罰ゲームに決まって――！

は？
なんだよ。その反応は。
もっとビビって――

あ！？
アタシ、着て出てきちまった！！

や、やめろ！
見るな！

ちょっ、こっち来んな！
おい押すな！

(ﾊﾞﾀﾝｯ)

お、おい！
着替えるから廊下に――！

か！？
かわいい！？

そ、そんなこと言うな！
ううう ウソつくんじゃねぇ！

アタシには、こんなの似合うわけねぇんだ！

もうアンタがいてもいい！
アタシは脱ぐぞ！

(ｶﾞｼｯ)
な！？
ちょっ！
離せ！

この！

おい！

わかったから！

脱がねぇから離せ！



ったく。
なんなんだアンタは。

アタシにこんな格好させて、なんの罰ゲームだよ！
まったく。。


はぁ？
罰ゲームなんかじゃない？

そんなくだらねぇウソつくなよ。

こんな格好、絶対に似合わねぇアタシにさせて、陰で笑ってんだろ。

ったく。何が楽しいんだ。

おい。
早く廊下に出ろよ。
着替えるから。

それともなにか？
写真撮ってこいとでも言われたのか？あぁ！？


おい。
ちょっ、アンタ、なんで泣いてんだ。

はぁ。。
度胸もねぇくせにこんなことすんなよな。

ったく、しょうがねぇな。

誰に言われてやったんだ。
言え。
無理やりやらされたんだろ？

アタシが直々にシメてやっからよ。
言えよ。


。。は？

かわいすぎて、感動して、涙――
ちょ、ちょっと待て！
何言ってんだアンタ！

アタシにキレられて泣いてんじゃねぇのか！？

なんだ感動して涙が出たって！
どういう涙腺してんだ！アンタは！


はぁ。。

罰ゲームじゃねぇのな？

アンタは、本気で、
アタシに、この格好をさせたかったんだな？

。。それはそれでだけどな！
わけわからんけどな！？

んぁ？
かわいい？

はいはい。
もう聞き飽きたっての。


な、なんだよ。
じっと見つめて。

恥ずいからやめろよ。


はァ！？
セリフリクエストだぁ〜！？

ふざけんな！
この格好でいるの自体、恥ずいんだぞ！？
セリフなんて――！

アンタさ。
土下座って。
マジかよ。。

これじゃ、断ったらアタシが悪いヤツみてぇじゃねぇか！

。。なぁ。
ホントに、かわいいのか？

も、もちろん。か。
即答かよ。。

で？
そのセリフを言ったら、もっとかわいくなるんだな？

お、おう。
そんなに目を輝かせるな。
分かったから。

じ、じゃあ、言ってみる。。


い、一回だけだぞ！？


。。や、やっぱり、言わなきゃダメか？

そ、そんなに強く言わなくてもいいだろ。
わかった、わかったから。

(深呼吸)

い、いくぞ？

ｽｩｰｰ...

「お、おかえり、なさいませ。。。ご、ご、ごしゅじんしゃま！」

。。。


み。


見るなぁ〜〜！！

こっち見んなぁ〜〜！！


な！？
噛んだからもう一回！？
いや、一回だけって話じゃ――！

か、噛んだけど！
もう。
ムリだって。。

は、恥ずいって。。
限界だってぇ〜〜

か！？
かわいいとか言うな！！

アンタはなんなんだ！
アタシにこんな恥ずい思いさせて！
なんのつもりなんだよ！？


。。は？

好き。って。。

はァ！？

あ、ああああ アンタっ！
何言って―！
好き！？
アタシのことが！？

じ、冗談言ってんじゃねぇ！
こんなかわいげの欠片もねぇアタシの一体どこが！？
ありえねぇって！


す！？
ま、また言った！？
アンタ、誰かと勘違いしてねぇか！？
アタシはこんなだぞ！？


大好き。。って。
そんな、真剣な目で。。

本気、なんだ。。

そっ。か。。


あ。
えぇと。。

な、なんだ。

えぇっとぉ。。

あ、アタシは！


ちょっと。わかんない。。


あ、アタシさ！
こ、こういうの、慣れてなくてさ！

えぇと。。
なんて、答えたらいいか。
わかんなくてさ。。

ご、ごめんな？

でも。
アンタの気持ちは、すごく、嬉しい。。

そ、その。
好き。って。
言ってくれたこと。。
嬉しいよ。

でも、付き合うとか、アタシにはよくわかんなくてさ。
だから、どう答えたらいいか。。



い、一度、付き合ってみてほしい。か。。
そ、そんなんでいいなら。。

いいよ。


お、おい！
そんなに喜ぶな！
アタシは一度だけ付き合うって言っただけで―！
っておい！！
聞いてんのか！？


は、はァ！？
で、ででででで デートォ！？

なんでそうなるんだ！！


そ、そりゃ、付き合ったらそうなのかもしれないけど。。
はじめてだぞ！？

は？
当たり前だろ！？
こんなのはじめてに決まってんだろ！


な、なに笑ってんだ。変なヤツだな。。

で、デートか。。
考えたこともなかったな。。

こ、こういうのは、男の方がリードするもんじゃ、ねぇのか。。？

だ、だよな！
なら任せた！

アンタのこと、信じてやっから！
(ﾎﾟﾝﾎﾟﾝ)

よ、よし。
今日は疲れちまったし、帰るか。
アンタも帰るか？

なら早く出ろよ。

は？
何してんだ。
早くしろよ。
待ってんだろうが。

(ｶﾞﾗｶﾞﾗ)
(ﾊﾞﾀﾝｯ)

はぁ。
まさか、アンタと付き合うことになるとはなぁ。。
な〜んか、ぜんっぜん実感ねぇわ。

。。なんだよ。
さっきからジロジロ見て。
アタシの体になんかついて――

あ！？
アタシ、また着たまんま出てきちまった！！

おい！！
気づいてたなら言えよバカ野郎！！

おいこら！
待ちやがれ！！
逃げんなこの野郎〜！！

・台本（ゆるボイ！）
ボーイッシュな優しい先輩にメイド服を着せてみる。
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
kaman_zora