僕の家族は自営業をしていた。

しかし、不況の波に煽られ、経営を続けることは難しくなり、収入を失った。

両親はもう50歳前後。今から新しい仕事を探すのは難しかった。

だから、僕は働いている。毎日毎日、両親と自分の生活費を稼ぐ。必要最低限のものしか買わず、髪の毛も自分で切った。
服なんてもってのほかだ。最低限、過ごせる服だけ。あとは全て生活費と僅かな貯金。

ギリギリだった。

そんなある日、美しい格好に身を包み、こちらに笑顔を向ける女性と出会うことになる。

ごきげんよう。
そこの貴方。


そうです。
そこの独特な格好をされている貴方。

貴方に言ってるのですよ。


え？
あぁ、ごきげんよう。

別に普通の挨拶でよろしいのに。
ふふっ


あ。失礼いたしました。

私、そこの屋敷に住んでおりますの。

先程、お屋敷の窓から貴方のお姿が見えまして。
貴方のことが少し気になりましたの。

それで。。

この後、お時間はございますか？

もしよろしければ、私のお屋敷までいらしてください。
そこでゆっくりお話ししませんか？
お茶菓子もご用意いたしますわ。


ええ。
そのままの格好で大丈夫ですわ。
そのままの貴方がいいんですの。
ちゃんと爺やには伝えますから、ご安心ください。

。。来てくださいますか？


よかった。。

ご案内いたしますわ。

こちらに来てください。



出迎えありがとう。爺や。

ん？
このお方？

この方は私の客よ。

部屋に連れていくわ。


なに。
爺や。

(ﾋｿﾋｿ)


爺や。

あなたはクビにするわ。

このお方に対する無礼は私が許しません。

本来であれば、このお方が汚いなどと二度と言えないように、声帯を取り除く手術を受けさせたいのだけれど。

貴方の前ですもの。
そんな血なまぐさい話は無しにいたしましょう。


はい。
なんですか。ご年配のお方。

早く出ていってくださいね。
私のお屋敷にいられたらお屋敷が汚くなりますから。

あ。安心してくださいね。
私の方からお父様には伝えておきますから。
今すぐに出ていけますよ。
良かったですね。

では。
ごきげんよう。ご年配のお方。


ほら
貴方、行きましょ？


え？
爺や？

あんな老害なんて放っておけばいいんです。
貴方が気に病むことはありませんわ。

そんなことより、もうすぐ私の部屋ですわ。


。。とってもお優しい方なのですね(小声)


いえ、なんにも言ってませんわ。

ほら、着きました。

(ｶﾞﾁｬ)

どうぞ。
入ってください。


(ﾊﾞﾀﾝｯ)
(ｶﾁｬ)

よく来てくださいましたね。

突然の私のワガママに付き合って下さり、ありがとうございます。


こちらがお茶菓子ですわ。

ごゆっくりなさってくださいね。



。。それで、突然で申し訳ないのですが、ご質問してもよろしいかしら。

貴方は、どんな方なのでしょう？

これまでの人生について、お話しいただけませんか？

どのような人生を歩まれてきたのか、とても興味があるんです。

いかがでしょうか。。？


本当ですか！？
ありがとうございます！
ぜひ、聞かせてください！


ふむふむ。。

貴方のご実家は自営業をされているのですね。

え。
していた。。？

今は。。。


あ。。

し、失礼いたしました。

。。ご両親のために働き詰めの毎日なのですね。。

そうとは知らず、私はなんて失礼なことを。。


気にしなくていい、なんて。。
貴方は本当にお優しい方なのですね。。



あの。

お付き合いされている方は

いらっしゃいますか。。？


そ、そうですよね！
先ほど働き詰めって話されていましたのに私ったら。
余計なことを聞いてしまいました。

。。いないのね。。(小声)


あ、あの！

私と、お付き合いしてください！


え。

釣り合わない。。？

そんなことありません！

貴方のその優しさ。そしてお顔。
私には勿体ないくらい素敵ですわ。
大好きです。


え。
今、付き合ってくださるって。。！

ほ、本当に？


やった！
やりましたわっ！

私の初恋が実りましたっ！

今宵はパーティーにしましょう！


あ。でも、今日はお父様がディナーパーティに呼ばれて忙しいんでした。。
せっかくのパーティーですもの。
お父様にもご紹介したいですわ。

残念ですけれど、また明日にしましょう。


なら、今日のところは、とりあえず、
子作りしましょう？


え？
どうして断るのですか？

付き合ってくださるんですよね？
結婚前提で。


私たちは結婚するんですから、
子作りだってするのは当たり前でしょう？

だから、今やりましょう？
私のはじめてを差し上げますわ。

どうしたのですか？
早く脱いでください。


え？
間違ってる？

何がですか？

貴方、付き合ってくれるって言いましたよね。

なら子作りだってしてくれるんでしょう？


え？
怖い？

急にどうしたのですか？

もしかして、貴方もはじめてなのですか？

私に話してください。

何が怖いのですか？

安心してください。
貴方のことは私が守って差し上げますから。
貴方の家族も、貴方も、何不自由なく過ごせるんです。

私と子作りしてくれるだけでいいんです。
いつも一人でしてるのを私に出すだけですよ？

何が怖いのですか？


あ、お金のことですか？


もし不安なら。。

(ﾄﾞﾝｯ)
ほら。お金。
このアタッシュケースにあるものを全て差し上げますから。
私と子作りしましょう。



。。え。

嫌だ
怖い

ですか。。


貴方。
はじめてで恥ずかしいのは分かりますけれど、もっと素直になってください。

貴方は、性欲と、金銭欲、両方を満たせるんですよ？
そして私は、貴方と愛し合える悦びを得るんです。

こんなに素敵な関係がありますか？

ないでしょう？


それとも、貴方は、このお金が欲しくはないのですか？
貴方の家族も、貴方自身も、もうお金に苦しむことはないんですよ？
愛する私と子作りできるだけじゃなくて、働き詰めの毎日から解放されるんですよ？

家族のこと、とっても大事ですよね。
仕事なんて、すぐにでもやめたいですよね。
気持ちいいことしたいですよね。


ねぇ。
貴方。


よく考えて？


「ここは私の部屋よ。」





。。ふふっ

扉にはさっき鍵をかけたの。
私しか開け方を知らない。

貴方は密室で私と二人っきり。

私がこの部屋を開けるまで、貴方はここから出られないの。


。。わかったかしら。

貴方は、私が満足するまで、私と子作りするの。

安心して？
私たちは愛し合っているのだから、きっとそのくらい出来るわ。
はじめてだって大丈夫。
私もはじめてなんだから。

一緒に、気持ちよくなりましょ？

・台本（ゆるボイ！）
貧乏人がお嬢様に見初められ。。
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
kaman_zora