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魔女が対価に僕自身を求めてきた
  • 魔女
公開日2022年03月31日 23:33 更新日2022年03月31日 23:33
文字数
2253文字(約 7分31秒)
推奨音声形式
指定なし
推奨演者性別
女性演者向け
演者人数
1 人
演者役柄
指定なし
視聴者役柄
指定なし
場所
指定なし
あらすじ
僕の父親は病に侵されている。
救うには、この森にあると言われている薬草を見つけ出さなければいけない。
森をさまよっていると、木でできた家を発見した。
こんな森の奥に一軒家?
疑問に思いながらも、呼ばれているような気がして、扉を開ける。
そこには、一人のお姉さんがいた。
お姉さんは父を治す薬を持っていた。
僕がそれを欲しがると、お姉さんは交換条件に、僕自身が欲しいと言ってきた。
そういうお話。
本編
(鳥の声)

あら、珍しいお客さんね。いらっしゃい。

森の中を歩いていたら、家が見えたからびっくりしちゃった?

・・・そう。まあ、来たからにはおもてなしするわ。お茶でも飲んでいって。


それで、どうしてあなたはこの森に来たの?

すごく危険とも言えないけれど、猛獣もたまに出るのだし。
あなたが一人で来るような場所じゃないと思うけど。


・・・うん。・・・うん。なるほどね。(話を聞く。相槌をうつ)
そっか・・・あなたのお父様が、ね。


まあ、あなたが探している植物はこの森にあるわよ。

でも、この植物は少々特殊なのよ。

そのまま摂取しても意味ないから、特別な煎じ方をしないといけないわ。
まあ、それを煎じたお薬は、ここにあるのだけれど。


欲しい?そうよね。欲しいに決まってるわ。

でも、このお薬を作るにはとても手間がかかるの。


まず、植物を見つけ出すのにも大変な思いをするし。

煎じてお薬にするのも、時間と労力が必要。

あまりタダでホイホイ渡せるものじゃないのよね~。



・・・ふふ。賢い子は嫌いじゃないわ。



私が欲しいものは・・・そうねぇ。


あなた自身、かしら。



若い子はとても役に立つのよ。

実験体としても使えるし、標本としても使える。

私の慰み者にしてもいいし。



あなたはこのお薬のために、自分自身を犠牲にできるかしら?



・・・ふふ、あはは!
まさか頷いちゃうなんてね。



そこまで言うのなら、あなたを頂く代わりに、このお薬をあげるわ。

はい。持って行って、お父様に飲ませてあげなさい。


三日くらいで目を覚ますと思うわ。
そうしたら、流動食を与えながら一週間ほど様子を見て。

一週間たったら、少しずつ食べ物を固形にしていっていいわ。
そしてもう一週間たったら、少しずつ外を歩かせなさい。

二か月もあれば、普通に生活できるくらいには回復できるはずよ。


それを確認したら、二か月後、またここにきてちょうだい。


森を入ってから、ピッタリ30分歩き続けて。

そしたら立ち止まって私の名前を読んでちょうだい。



私の名前は、———。(風の音で名前を隠す)



ふふ。一か月後、楽しみにしているわ。



~一か月経ちました~



(風の音。びゅ~)

(足音。ザッザッ)

(ドアを開ける。キィー、ガチャ)



あら、来たわね。


お父様の体調はどう?

・・・そう、ならよかった。

男手ひとつであなたを育ててきたんだもの。
助けられて、私も嬉しいわ。



・・・それで、君は本当にここに来たわけね。
お別れの挨拶は済ませてきた?

・・・何も言わずに出てきたの?



確かに、色々な人に引き留められはするでしょうけど・・・。

お世話になった人もたくさんいたのでしょう?
しっかりとあいさつしないと駄目じゃない。

そういうケジメはきちんとつけること。
わかった?


・・・まあ、今回はいいわ。


さて、それじゃあ、あなたのやることだけれど・・・。

ふふ。確かに前はあんなこと言ったけど、そんなに身構えないで。

実験体にするつもりはないわ。まあ、適任なのは間違いないけれど。



あなたには三年間、私の助手として働いてもらうわ。

丁度人手が足りなくて困っていたの。

せっかく助けたお父様には、しばらく会えないけれど。

ちゃんと返してあげるから、心配しないで。



・・・なに?拍子抜けって顔してるわね。

いや、いいのよ。確かにあの薬は価値があるけど、助手はそれと同じくらい価値があるんだから。

それじゃあ、手始めに・・・お昼ご飯、作ってくれない?



~三年の時が経ち~(間を開けてほしいです。風の音などで繋いでください)



・・・さて、約束の三年間が終わったわけだけれど。

あなたは良くやってくれたわ。

たくさんの植物を見分けられるようになったし、お薬の作り方をたくさん覚えた。

お陰で、私もいろいろ助かったわ。



え・・・何?

ちょっと、確かに私の身の回りの世話もやってもらったけど。

それを執事っていうのはやめなさい。

仕方ないのよ。研究で忙しいんだから。



んんっ。それはまあ、いいとして。

しっかり聞いておきなさい。私からの餞別の言葉よ。


さっきも言ったけど、あなたはたくさんの知識を得たわ。

村に帰ったら、その知識を使って、たくさんの人を助けてあげなさい。



人は小さなことで悩み、争いを起こすけれど。

あなたの大きな愛で包み込んであげなさい。

時にはあなた自身が傷つけられることもあるけれど。

それすらも、愛を持って対抗しなさい。



あなたは素敵な人に育ってくれた。

三年前、父親のために自分自身を捧げると言ってのけたあの日。

私は本当に嬉しかったのよ。



あなたは、本当にいい子に育ってくれた。

一人しかいない父親よ。大切にしなさい。



改めてお礼を言わせて。

この三年間、私はなくしたものを取り戻すことができた。

あなたに感謝するわ。



(風が吹き始める)



・・・そろそろ時間みたいね。

お父さんによろしく伝えてちょうだい。私の名前を伝えれば、それでいいわ。



・・・え?また会えるか?

・・・さあ、どうでしょうね。

でも、あなたが強く望めばきっと、ね。



・・・もうお別れよ。さようなら。

ああ、最後に一つだけ。

愛しているわ。

これからも、ずっと。


(強風が吹く)


おわり
































私は知っている
愛は世界を救えない
でも
自分を救うことはできる
近しい人を救うことはできる

愛しているからこそ結びつき
愛しているから時に離れる

私は知っている
世界は平等に愛さない
でも
あなたは人を愛すことができる
あなたは自分を愛すことができる

苦しむことも多いけれど
その二つさえできていれば
きっと人生は豊かになる

あなたに親らしいことは何もできていない
けれど
どうか覚えていて
誰よりも
この世界の誰よりも
あなたのことを愛しているわ
クレジット
・台本(ゆるボイ!)
魔女が対価に僕自身を求めてきた
https://x.com/yuru_voi

・台本制作者
ありまびぃばぁ
ライター情報
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