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音楽が禁止された世界でお姉さんが歌う理由
  • お姉さん
  • ファンタジー
公開日2022年04月03日 21:30 更新日2022年04月03日 21:30
文字数
1753文字(約 5分51秒)
推奨音声形式
指定なし
推奨演者性別
女性演者向け
演者人数
1 人
演者役柄
指定なし
視聴者役柄
指定なし
場所
指定なし
あらすじ
音楽が禁止された世の中で歌い続けるお姉さん。
どうしてこうなってしまったのか。
お姉さんはあなたに語り始める。
そういうお話。
本編
『_』:他の登場人物が喋っている想定の間
『・・・』:その他の間
『、』:息を入れたり、伸ばしたり、区切ったりしてほしい

あくまで目安なので思い思いにやってほしいです。





お、ここを人が通るなんて珍しいね。
どう?私の歌でも聞いていかない?

_え?・・・ああ、歌っていいのかってこと?
うーん、本当はダメだね。

一年前に政府が出した、『音楽禁止令』
それによって、この町はとんでもなく静かになっちゃったよ。

前は色々な音楽で溢れてた。
街中に売れてる曲が流れて
熱い場面では激しいロックが流れて
感動的な場面では壮大なバラードが流れていた。

ライブハウスにいけば、下手なアマチュアが必死に声を涸らして
駅前の路上にはギターを弾き続ける人がいて
動画サイトでは毎日たくさんの曲が投稿されていた。

それが今は、この静けさだよ。

・・・君は、どうして音楽が禁止になったかわかるかい?

_そうか。なら教えてあげる。

そもそも芸術っていうのは、同じ作品でも、人の数だけ受け取り方が違うんだ。

一つの作品を感じて、励まされる人がいれば、冷める人がいる。
それにも背景があって、とある経験から励まされ、とある経験から冷める人がいる。

どんなに一つのテーマがある作品でも、受け取る側がどのような人生を歩いてきたかによって、どのような受け取り方をするかが細かく変わるんだ。

特に、音楽は顕著だよね。音は、文字や絵よりも明確じゃない。
同じ音でも、解釈は多種多様に別れる。

それによってプラスな感情になる人もいれば・・・もちろんマイナスな感情になる人もいる。

簡単に言えば、音楽はその「マイナスな感情」に負けたんだよ。

マイナスの感情を吐き出す人は、総じて声が大きい。
なぜなら、自分の力を示すためには、そうするしかないからさ。

その意見が正しかったり、論理的だったりする場合は、自信をもって静かにそれを語ればいい。
だけどそれらがないから、大きな声で相手を威圧するしか、自分を大きく見せる方法を持たないのさ。

まあ、そんな意見が正しいわけないんだけど。

でも、世の中はそれに負けた。
配慮に配慮を重ねて。
誰も傷つかないように表現の規制を続けて。
その結果、一切禁止になってしまった。

負けたんだよ。音楽は。『身勝手なマイナスの感情』にね。

それでも、私は歌い続ける。
なぜなら、私はこんなこと間違っていると自信をもって言えるから。

全員が傷つかないなんて不可能だ。
実際、この現状に私は傷ついてるしね。

仕方ないんだよ。マイナスの感情を持つことは。誰でも持つものさ。
さっきも言ったように、その人の歩んできた人生によって、受け取り方は無数にあるんだから。

大事なのは、その感情にきちんと向き合い、自分で折り合いをつけること。
その感情の解決を、他人に求めないこと。

自分の中で生まれた感情は、自分で処理しないといけない。
マイナスな感情が生まれたときにやるべきは、人に文句を言うことじゃないんだよ。

特に娯楽はそうだ。
アニメ、ゲーム、本、漫画、配信・・・。それから音楽。

これらは、不満があるなら摂取しなければいい。嫌なものは自分から遠ざければいい。
子どもじゃないんだから。自分の機嫌は自分で取らないといけないよ。

まあ、自分の尊厳が、理不尽に奪われている時は別だよ。
それには、声を大にして抗議しなければならない。
それが私の歌っている理由でもあるし。

・・・ちょっと話過ぎちゃったかな。でも、大切な話だよ。
君も、この状況について、真剣に考えて行動することをお姉さんは願っているよ。

・・・さて、久しぶりにお客さんの前で歌うチャンスが来たと思ったけど、どうやらお姉さんは逃げないといけないみたいだ。

_ん?ああ、違う違う。警察からじゃないよ。それよりもよっぽどタチが悪い。

警察も注意しなければいけないけど、一番注意しなければいけないのは、警察ぶってる普通の人間だ。

あの人たちは自分のことを棚に上げて、人を悪者に仕立て上げ、それを断罪しなければ気が済まないようでね。

警察は限りなく正しく裁くけど、彼らは自分たちの作り上げた悪者が立ち上がれなくなるまで叩きのめす。・・・その先には何もないのに。

ま、そういうことで、お姉さんはここでおさらばさせてもらうよ。
また会えたら、君のために歌わせてくれるかい?

ふふ、ありがとう。
それじゃあ、またね。
クレジット
・台本(ゆるボイ!)
音楽が禁止された世界でお姉さんが歌う理由
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
ありまびぃばぁ
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