地上で起きた災害から人々を救う為、神によってとある小さな町に遣わされた天使のあなた。町の復興が順調に進んでいたある日、あなたはよく話している人懐っこい町娘に、見せたいものがあると言われる。町娘の案内する場所へあなたが足を運ぶと、そこでは町の住民が皆であなたと彼女の婚姻を祝福していて…

【町の内外をつなぐ橋の前にて】

そっちは大丈夫ですか？
脆くなってる所とか、歩いてみて危ないって思った部分はもうなさそうですか？

……了解です！
それじゃ、吊り橋の復旧はもう完璧ですね！

天使様、一緒に向こう岸まで歩いて行ってみましょう！

[SE：あなたと町娘が橋を歩く]

おっとと……ふふ
このぐらぐらする感じ、久しぶりだなぁ

どうですか、天使様？
復旧前と比べて変な所とかないですか？

……あー、はは
そうですよね
天使様はこういう足元が危ない場所は、足で渡らずにその翼で空を飛ばれてることが多いので、あんまり歩いた感触とかはわからないですよね
でも、そんな天使様でも特に違和感を感じることなく歩けてるってことは、もうどこにも問題はないってことだと思います！
あっ……すみません！
今の、なんかすごい失礼な感じになっちゃってました…

…あはは、ありがとうございます
天使様は別にいいって言ってくれますけど、教会の皆様の前で今みたいなこと言ったら、顔真っ赤にして怒られてるところでした
もっと考えてから話すように心がけます

……なんて話してたら、もう渡りきっちゃいましたね
でも、よかったです！
これで町の外の人々とも、また滞りなく交流することができますよ

橋の復旧作業が終わったばかりで疲れている所申し訳ないんですけど……天使様に見せたいものがあるので、ちょっとついてきてもらえませんか？

…はい！
あたし達から天使様への感謝を込めて、ヒミツで用意していた贈り物があるんです
先に天使様に言っちゃうと、絶対に謙遜して断られちゃうので、皆でこれだけはナイショにしておこうって決めてました

へへ……皆天使様が来るのを向こうで待ってるので、早く行きましょう！





――――――
【暫く歩いた後】

こっちです！
あともうちょっとで着きますからね〜
いや〜、きっと喜んでくれると思いますよ

……はい？
あはは、そうですか？
自分ではいつも通りで、特に普段よりも機嫌が良いとは感じてないんですけどね〜

あ、でも最近1個だけすごく嬉しいことがあったんです
天使様の導きで町が復興してから、様々な催し物もまた開催されるようになって…
この間、「花嫁にしたい子選手権」っていうのが行われたんですよ
あたし、あんまり見た目には自信なかったんですけどどうしてもそれは優勝したくて、色々と対策を練って立候補したんです

そしたら、なんと最終選考まで残って、最後は満場一致で優勝に選ばれたんですよ！
えへへ……ありがとうございます！

それ以来、町を歩いてるといいお嫁さんになれるように頑張って！なんて応援されることも増えちゃって、まだ嫁入りもしてないのにもう幸せ気分なんです

それもこれも、全部天使様があたし達を天災から守ってくれたおかげですよ！
自然の脅威の前では、こんな小さな町なんて跡形もなく消し去られてしまうことだって珍しくありません
それでも、あなたはあたし達を見捨てずに身を挺して救って下さった

天使様はご自分を神の使いだと仰っていますが、あたし達からすれば天使様自身が神様なんですよ
本当に、感謝してもしきれません

……さあ、着きましたよ
天使様に見せたかったのは、この大きなお屋敷です

はは……周りの歓声が凄いですね
皆、天使様が来るのを待ち侘びてたんですよ

だってこのお屋敷…とても立派でしょう？
町の大工さん達も、天使様のお住まいだからって、他のお仕事を中断してまで建ててくれたんですから

……はい？
そうですよ、これは天使様がお住まいになるお屋敷です
……冗談じゃないですって、もう…

あっ、長老様！
この間はどうもありがとうございました

……はい！
もう今は、常に天使様との新婚生活が頭に浮かんで、気持ちが昂ぶっちゃって仕方ありませんよ！
皆様のご期待に応えられるように頑張ります！

あれ、どうしたんですか天使様？
来る途中にも行ったじゃないですか
これはあたし達町民からの感謝を込めた贈り物だ、って
このお屋敷は、天使様とあたしのためだけのものなんですよ

……あはは、そうです！
さっき言った「花嫁にしたい子選手権」っていうのは、あなたの花嫁を決めるための催しだったんです
でも、「天使様の花嫁」なんて付けたら、あなたの耳に入って断られてしまいますから
あくまでも普通に一番可愛い子を決めるっていう体で進められたんですよ
ま、天使様と教会関係者以外の殆どの町民は事前に内容を知らされていたんですけど

それであたしが一番天使様の花嫁に相応しいと選ばれたので、こうやって結ばれることができたんですよ！
えへへ……こんなに大勢の人に祝福されるとなんだか恥ずかしいですね

……あー、説明しなくていいですよ
神様が地上の民を救う為に、天使様達を一時的にこうした町へ遣わせたっていうのは、もう耳に穴が開くほど聞きましたから
でも、よく考えてみて下さい
折角町を救って英雄になれたのに、今天界に帰ったらまたただの下っ端に逆戻りですよ？
それなら、ここに留まって生きる伝説として崇められた方がいいと思いませんか？

……いいえ、神様や天使様のことを侮辱するつもりなど全くありません
むしろ、皆あなたを尊敬しているからこそ、これだけの贈り物を用意してくれたんです
さあ、行きましょう天使様

[SE：あなたが逃げようとする]

あっ！
誰か取り押さえて！

[SE：複数人によって、地面に組み伏せられる]

はぁ……危なかった
もう少しで逃げられる所だった

でも、天使様に翼が生えてる限りはいつまたこうなるかもわからないので、先に不安要素は取り除いておきましょう

[SE：町娘があなたの翼を引きちぎる]

あっはは！
あの崇高な天使様が、こんなに苦しそうに悲鳴をあげられるなんて…
これでもう、空を飛んで逃げることはできませんね

ああ……天使様
涙を流すお顔も、とても美しいです
この翼は、あたし達の結婚式で着る礼装の飾り付けに使いましょう

そんなに悲しまないで下さい
妻子を持ち、一人の町民として暮らす時間が長くなれば、あなたもきっとこの町で生きることに誇りを持てるようになります

あたしも、良き妻としてあなたを支えられるように努めますから

これからは、町の皆に愛される夫婦として仲睦まじく暮らしましょう
あなたが守った、この小さな町で…


――ＥＮＤ――

・台本（ゆるボイ！）
【ヤンデレ】天使として災害から町を救ったら、町娘と強制的に結婚させられることになって…
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
Cybistar