自分の開発者であるあなたをパパと呼んで慕っている超高性能アンドロイドの少女。他のロボットは生産してすぐに市場へ出していく中、あなたは彼女だけには家族として接し、生産から1年経っても自分の手元においていた。アンドロイドもあなたを実の家族同然に思うようになっていたが、実はあなたは彼女に事故を起こす危険性がないか確かめていたのだった。1年の試用期間が終わり、安全性を確認したあなたは、誕生日の祝の席で彼女を購入者=雇い主と引き合わせて、別れを告げようとするのだが…

【とある高級料亭の一室にて】

ぷはーっ！
美味しかったー！
ご馳走さまでした〜

お誕生日にどんなプレゼントが貰えるのか楽しみにしてたけど、こんなに美味しいお店に連れて来てくれるなんてね！
中々やるじゃん、パパ！

えっへへ〜、はい！
お陰様で、めでたく私も1歳になることができました！
見た目は生まれた時と変わんないけどね

これからも、この身体に備わった最新鋭の技術を活かして、パパを支えられるように頑張ります！

……えー、いいじゃん！
開発者とか考案者とかそんなんじゃなくて、パパはパパなの！
だって私を設計して、組み立てて、命を吹き込んでくれたんだよ？
それも、機械の部品と生体組織を組み合わせて、本物の人間とほぼ同じ身体に創り上げてくれたんだから
あなたはこの世でたった一人しかいない、私の命の生みの親……つまり、パパってこと！

もー、誤解されるだなんて恥ずかしがっちゃってぇ…
嘘じゃないんだしいいでしょ
あ、それとも……ママの方がいい？
男親はパパ、女親はママ、って呼ぶのが一般的だけど……人間には色んな感性の人がいるもんね！
ママって呼んでほしいなら今から変えるよ？
なんたって、私はロボットと違って表面的なデータにとらわれずに、人間の感情を学習することができるアンドロイドだからね！
えっへん！

……そういうことじゃない？
うーん、なんだか難しいなぁ…
まぁ、パパはパパだから！
他の人からなんて思われようが、私はどうでもいいよ

それにしても……私が生まれてから、もう1年も経つんだね
なんだか、感慨深いな〜
最初の頃はまだ敬語で、パパのこともマスター、だなんて呼んでたんだよね

あはは、そうそう！
パパに作られた他のアンドロイド達と話すうちに、いつの間にかタメ口になってたの
でも、私は他の皆と違う特殊例というか、試作品？だから……中々馴染むのに時間がかかっちゃって

確か、パパが初めて創った超高性能アンドロイドだから、皆1号とか1号ちゃんって呼んでくれてたっけ
中には、番号で呼ぶのは可哀想だからって、1号を捩ってイチゴちゃん、なんてあだ名をつけてくれた子もいたけど……
みーんな、別々の人達に買われていなくなっちゃったね
ちゃんと元気に暮らしてるのかなぁ…

あー、はは…大丈夫！
全員、元から商品として製造されたってことはわかってるよ！
だってそうじゃないと、パパの研究とか開発の費用が確保できないもん
寂しいけど、仕方ないよね
そ・れ・に！
そのおかげでパパは私を創れて、こうやって今も一緒に生活できてるんだから
他のロボット達がいなくなっても、私だけはずーっと、パパの隣りにいるからね！
えへへ……

でも、折角の誕生日なのにカマかけてもそっけない返事するだけで、全然お祝いしてくれるような雰囲気出さなかったから、正直ちょっと不安だったんだよ
私だって悲しいとか寂しいっていう感情はあるんだから、少しぐらいはそういう所気遣ってよね！
全くもう……

……ん？なに？
どうしたの、急に真剣な顔しちゃって
私の誕生日について話したいことって、このお祝い以外に何かあるの？

[SE：個室のドアがノックされ、人が入ってくる]

えっ！
誰…？

あ、はい！
どうも、こんにちは

はい、よろしくお願いします…

パパ、この人って何の人？
パパの研究を手伝ってくれるお偉いさんとか？

……え？
あの……ごめん
ちょっと、言ってる意味がわからないかな…
私の雇い主って、何のこと？

……あ、あー！あっはは！
なるほどね！
誕生日のサプライズでちょっとショックなドッキリ仕掛けるアレね！
一度落ち込ませてから……やっぱり嘘でした！誕生日おめでとうー！ってやるやつ！
テレビで見たことあるよ！
何にも用意してないと思わせて、最後にこんなサプライズまで仕込んでたなんて……それだけ、私のことを大切にしてくれてるんだね
パパのこと、益々大好きになっちゃった♡

……はは、もう演技しなくてもいいよ
ドッキリだってわかったから

……パパ、ちょっとしつこいって
いくらドッキリでも、私を売るなんてそんなひどいことを何回も口にされたら……私だって怒るよ

ドッキリじゃなくて本当のことって……そんなわけないでしょ
だってパパは、他のロボット達がどんどん出荷されていく中で、私のことだけは手放さずに、1年も手元に置いてくれてたんだよ？
それってつまり、私は売り物じゃなくてパパの大切な家族ってことだから！
私達のことをなんにも知らないあなたはちょっと黙ってて！

……試用期間？
は？
……革新的な超高性能アンドロイドの試作品だから、暴走や故障の危険性がないか確かめるためって……何それ
じゃあ、今まで私を家族だって言ってくれてたのも、暴走させないための嘘だったってこと？
ひどい……ひどいよパパ……

……やめて、言わないで
もうそれ以上聞きたくない！
やだ、やだ……やだっ！

うああああああああっっっ！！！





――――――
【どこかの部屋】

あっ、パパ！
おはよう〜

まだ意識と身体が馴染まないだろうから、暫くは安静にしててね
って言っても、私の許可なしじゃどっちにしても動けないけど

あー……気づいちゃった？
ごめんね、パパ……私、あの時怒りで我を忘れて暴れたみたいで…

パパのことも、かなり痛めつけちゃったの
だから、私がパパを治してあげたんだ
昔私にやってくれたみたいに

でも、私だけじゃなくてパパにだって責任はあるんだからね
お前は商品じゃない、大切な家族だ！って嘘ついて、その裏では着々と私を売り飛ばす準備をしてたなんて……
いくら謝っても、到底許されるようなことじゃないよ

でも、私はやっぱりパパと一緒じゃないと嫌だから
こうやって、また二人で一からやり直すことに決めたの

ふふ……何か反論しようとしてるね
わかるよ……私の言葉に対するパパの生理反応も、感情も……全部分析されてこのモニターに出てるもん

はは……はい、ストップ！
どう、喋れないでしょ？
パパの身体を治すついでに、ちょっと中身をいじらせてもらってね…
私の意思に反する行動はできないように、セットしておいたの

これからは、ずーっと私のそばで楽しくお話をしたり、私を愛でてくれるだけでいいからね♡

あっ、生活のことは心配しないで！
これまでパパに頼ってきた分、今度は私がロボットをいっぱい創って、お金を稼ぐから

ほら、そこにいるメイドさん達も私が創ったんだよ

パパを治す過程でパーツの組立てとか色々練習もできたし、自分では結構上手く創れてると思うんだ

あのお店での後始末に情報操作、パパの治療、ロボットの生産まで……
全部、パパが私を超高性能な身体に創り上げてくれたからできたんだよ！

えへへ……本当にありがとう！
パパだーい好きっ！

今までは私をただの売り物だって思ってたかもしれないけど……同じ身体になった今なら、きっとこの気持ちがわかるはずだよ

今度こそ、本当の家族としてお互いを想い合って暮らして行こうね♡


――ＥＮＤ――

・台本（ゆるボイ！）
【ヤンデレ】自分を父親のように慕っている超高性能アンドロイドを、他人に売り渡そうとしたら…
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
Cybistar