（自分が掘った落とし穴に落ちた先輩のことを穴の上から覗き込みながら）
大丈夫ですか、怪我はないですか先輩？　……そうですか、なら良かったです。わたしが自分自身で安全確認しておいたので心配はいらなかったんですけど。

お手製の落とし穴はどうですか？　……はい、わたしが掘ったんです。先輩のことを考えながら掘ってたらこんなに深く……愛ですね。
ハロウィンおめでとうございます、先輩。　……？　ハロウィンはべつにめでたくなさそう？　そうなんですか？　それにいたずらかお菓子か選ぶ権利のないこれをハロウィンとは認めたくない？　でもこの高低差のおかげで後輩のパンツが見えて絶景なのですべてを許そうちなみに色は黒……って。

先輩のえっち！　変態！　どでかぼちゃ！！！　可愛い後輩が魔女のコスプレをしてるのに一番最初に触れるところがパンツですか。埋めますよ？

……でもいいです、わたしは寛大なので。それで変態、間違えました先輩。いつまでもそこにいたくないですよね？　穴から出たいですよね？　そんな先輩にわたしから提案があります。

手料理が壊滅的なわたしの手作りクッキーを食べると誓ってくれるならそこから出してあげます。トリートですね。もし断るなら傷心のわたしはこのまま先輩を埋めてしまうかもしれません。

悩んでるんですか、先輩。わたしはわたしが作ったクッキーを食べておなかを壊す先輩も、気持ち悪くなって吐いちゃう先輩も好きなのに……。あ、もし気持ち悪くて吐きたいのに吐けないってなったらわたしの指を口に入れて吐かせてあげますね？　それで吐いてる先輩の背中を優しくさすってあげます。終わったら苦しかったですね、吐いちゃったけど怒ったりしませんよって落ち着くまでぎゅーしてよしよしもしてあげたいなぁ。

そろそろクッキーか生き埋めか選べましたか？　……ふふ、先輩が食べるって言ってくれて嬉しいです。やっぱり先輩は優しいですね。……それじゃあ今からロープ垂らしますね。

（ロープを垂らしてから）
気を付けて登ってきてくださいね。落とし穴から出てきてお菓子を食べるまでがハロウィンなんですから。でも先輩を助けるのも助けないのもわたし次第なんだって思うとちょっとだけどきどきしますね。……あは、そんなに焦って登ってこなくてもロープを切ったりしませんよ。面白い先輩。

（地上まで登ってきた先輩に）
ふふ……ぎゅー。よしよし……無事で良かったです、先輩。怖くなかったですか？　乱暴にしてごめんなさい。まだ怖かったり不安だったりしたらしばらくこのままでいいですからね。

……ふふ、先輩はわたしから逃げようとしたり何回告白しても付き合ってくれなかったりするのに、こんな風にくっつくと抵抗しなくなるんですよね。赤くなって、こっそり興奮してて……女の子の体には勝てませんか？　あったかくて、やわらかいですよね。わたしのこと、好きになっちゃいそうですか？　背中に手まで回しちゃって……あっ、意地悪しすぎましたね、ごめんなさい。ぎゅってし返してくれて嬉しかったですよ。

じゃあクッキーを食べるためにわたしの家に帰りましょうか。でもわたし思うんですよね、今日のクッキーは食べたらきっと蕩《とろ》けちゃうんじゃないかなって……。

（聞こえないくらい小さな声で）
……先輩の理性が。

・台本（ゆるボイ！）
ヤンデレ後輩に落とされて救われてハッピーハロウィンエンド
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
白上