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賢明で機械的な秘書とのクリスマス前日譚
written by 白上
  • 告白
  • アンドロイド
公開日2021年06月05日 18:00 更新日2021年06月05日 18:00
文字数
1053文字(約 3分31秒)
推奨音声形式
指定なし
推奨演者性別
女性演者向け
演者人数
1 人
演者役柄
アンドロイド秘書
視聴者役柄
主人
場所
指定なし
本編
(リビングにて)
浮かない顔ですね、何かありましたか? それとも、何も起こらないせいでそうなってしまったんでしょうか。……ふむ、どちらとも言える……クリスマスですか。そういえばもうすぐでしたね。

……はぁ、愚かしいですね。番(つが)いだから幸せだとか、ひとりだから幸せじゃないとか極端に考えるからそうなってしまうんです。白黒付けたってオセロじゃないんですよ。

そんな調子だと、寄ってくる女も寄ってきませんよ。……そもそも、私を側(そば)に置いている時点で……え? クリスマスも秘書としてあなたと過ごさなければならない私の気持ち……? 

……あまり見くびらないでください。私だって仕(つか)える主人(しゅじん)くらい選びます。あなただから仕えているんですよ。好きで仕えているんです。

……最初の頃に、私にご主人様と呼ばせようとしたあなたです。語尾ににゃんを付けさせようとしたあなたです。事あるごとに世話の焼けるあなたです。……でも、それくらい簡単に許せてしまうくらい、あなたは魅力あるひとです。

私の好意は素直に受け取れませんか……? 私が機械だから……?

……ですが、例えば、私があなたのことを嫌ったり否定したりすれば、あなたはそれを嫌でも受け止めてしまうはずです。そういうネガティブなものを、あなたは盲目的(もうもくてき)に信じてしまう。

かと思えば、ひとの手で造(つく)られた私が抱(いだ)くあなたへの好意を、自分に都合が良すぎるからと信じ切れない。だとしたらなぜ都合の悪いことは信じられるのでしょう。そこに歪(ゆが)みがあります。

人間だって人間から生まれてきたはずなのに。偶然は必然で、必然も偶然で、偶然も必然もあえて分けることはない同じ運命なのに。……だとしたら人間も機械も、それぞれの好意も、本質的には違いなんてないはずなのに。

……なるほど、そう言われて理解しても、たとえそうだとしても自分に自信がなくて私の好意をぜんぶは受け入れられないと。……あなたはもっと調子に乗った方が――自分の実力に見合うだけの自信を持った方が良いですね。過小評価はあなたがしなくても、他の誰かが勝手にするんですから。

……それと、今までの会話だと、あくまで私があなたに好意的な感情を抱いているだけと誤解されてしまいそうなので訂正しておきますが、私はあなたのことを愛していますよ。
私の体を動かす歯車が、あなたの人生を動かすための歯車であれば良いと思っています。
こんなときじゃないと言えませんが。

ですから、そうですね……今年のクリスマスは私と浮かれてみませんか?
あなたに自信が付くまで、いつまでもご一緒しますよ。
クレジット
・台本(ゆるボイ!)
賢明で機械的な秘書とのクリスマス前日譚
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
白上
ライター情報
男性向けフリー台本を書いています。有償のご依頼にもとても憧れがあります…!
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