高飛車なお嬢様と幼馴染の貴方。幼い頃は結婚を約束した密な間柄。しかし別々の学校に進学してしまったが為に、会える日は少ない。加えて、徐々に貴方への当たりが強くなっていくお嬢様。興奮してきたな。そろそろわからせてやるか……

　……まったく。

　いつまで待たせたら気が済むのよ。荷物持ちの分際で。

　決まってるでしょ。今日は執事とメイドの代わりに、あなたはこのわたしの荷物持ちという大役を務めるの。

　光栄でしょ。

　理解したなら付いてきなさい。

　ねえ……隣じゃなくて、わたしの3歩後ろを歩けって何度言えば分かるのかしら。

　いい？　昔とはもう違うの。由緒ある名門校に通うわたしと、しみったれた公立校に通うあなたとじゃ格が違うんだから。

　あなたと幼馴染なんて汚点がご学友に知られたらと思うと……。

　虫酸よ。虫酸が走るわ。やっぱり5歩離れて歩きなさい。なるべく他人を装って。

　お父様にも困ったものだわ。いくらあなたを気に入ったからといって、ウチの会社に入社させようだなんて。

　いい気にならないでね。

　ハッキリ言うけど、わたしはまだ結婚なんて認めてないんだから。

　はあ？　どうして結婚になるんだって……理由なんて、それくらいしかないじゃない。

　だから！　お父様はあなたを婿として迎え入れようとしてるの！　わたしの夫として！（ムキになりながら）

　今日だって別に、お父様にあなたと仲良くしてるって虚偽の報告をする為であって。

　いいからつべこべ言わずに付いてきなさい。

　今日は服を探したり、映画を観たり……色々と忙しいんだから！

・・・

　これが休日のショッピングモール……。

　流石は庶民のたまり場ね～。

　展示されてる服も安物ばかりだったわ。

　ま、あなたがこのワンピースが良いって言うから仕方なく選んであげたけれど。

　それより……さっきの映画。

　あなた、声をあげて泣いてたでしょ。

　みっともない。もっと離れた席にするべきだったわ。

　なあに？　好きなアイドルが頑張って演じてたから……ですって？　

　……なにそれ。

　…………。

　あんな女がタイプなのね。

　意外。絵の中の女にしか興味がないと思ってた。

　学校でも女子と一切会話してないって聞いたわよ。ウフフフ。（めちゃくちゃ嬉しそうに）

　それもそうか。物心がつく前からわたしと出会ってしまったのだから、判断基準が高くなるのも仕方ないものね。

　なによその顔。

　文句があるのならいいなさいよ。

　言っておくけど、お父様だって最終的にはわたしの判断を尊重するわ。

　あなたと縁を切る……いえ、あなたの一族ごと葬り去るなんて容易いんだから。

　よぉーーーく覚えておくことね。アハハハ！

・・・

　はーあ……。

　ま、こんな外界に降りて羽根を伸ばす休日も悪くないわ。

　もう、早く来なさいよ荷物持ち。置いてかれたいのって――

（ドサッと荷物を地面に投げ捨てる）

　……なんのつもり？

　さっさと拾いなさいよ。

　そしてたった今、わたしの気分を損ねた事を謝罪しなさい。

　……は？

　……冷め、た……？

　は？　いや、え、何を言っているのかしらこの男は……。

　さっきも言ったわよね。あなたの人生なんてわたしの一存で……ちょっと！　どこ行くのよ！　

　待ちさな……待ってよ！

　冷めたってなに？

　嫌いになったってコト？　違うわよね！？　

　へ……？　他に……好きな人が、いる……？　

　う、嘘よ。

　そんなの報告に無かった。

　あなたの学校生活は逐一監視させてるんだから。

　誰？　名前は？　

　教えなさい！　今すぐに！

（手を掴まれるが、勢いよく振り払う）

　痛っ……！

　は……え……？（混乱）

　なんで……なんでそんなこと言うの……？

　だってあなたが……結婚しようって約束したから……。

　でもわたし、学校別のとこに……たまにしか会えないから……今日、久し振りで、嬉しかったからわたしっ……。

　イヤ……イヤイヤイヤ！　

　行かないで！　行かないでってば！

（後ろから抱きつかれる）

　お願いだから行かないでよぉ……！

　ごめんなさい……ごめんなさいごめんなさい！

　ううぅ……ぐすっ……やだよぉ……（泣く）

（しばらく顔グシャグシャにして泣いてる）

　きょっ今日のこと謝るからぁ……！　嫌いにならないでっ……！

　……ふぇ？

　わたしのこと……嫌いにならない……？

　冗談……嘘、ついたの……？

　わたし以外に好きな子いない？

　…………。

（徐々に冷静になっていく）

　……許さない。

　絶対に許さない。

　い、今に見てなさ……あうっ。

　いたっ……足、力抜けて、立てない……。

　…………。

　……おんぶ。

　おんぶ！　このままじゃ帰れないでしょ！

　さっさとおんぶしな……！　

　うっ……して、下さい……。

・・・

　……なんであんな嘘ついたの。

　わたしの本音が聞きたかった……から？

　そんなの……好きに、決まってるでしょ……。

　あーもう！　何度でも言ってあげるわよ！　

　好き！　好き好き好き好き…………！（フェードアウト）

・台本（ゆるボイ！）
生意気なお嬢様を突き放してみた
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
ゼロフィリアマン