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ポンコツストーカーからの電話
  • ストーカー
公開日2021年06月05日 18:00 更新日2021年06月05日 18:00
文字数
1807文字(約 6分2秒)
推奨音声形式
指定なし
推奨演者性別
女性演者向け
演者人数
1 人
演者役柄
ストーカー
視聴者役柄
指定なし
場所
指定なし
あらすじ
尾行、監視、無言電話、SNSでの知人に対する嫌がらせ――悪質なストーカー被害に悩まされていた貴方はついに警察に相談。毎日ポストに怪文書が届くまでは良かったが、知人に迷惑がいったことで怒り心頭。後日、これでストーカー行為が無くなったかと思いつつも、少し寂しいなんて二律背反な気持ちを抱いていたその時、電話が鳴り響く……
本編
【着信音】

【着信音】

(しぶしぶ受話器を取る)

 …………。

 ………あっあっ。

 き、切らないで下さい。お願いします。

 無言電話じゃないです。無言電話はもう、やめますから。ほら、今も、やめてるし。

 ごっ! ごめんなさいごめんなさいごめんなさぁい!

 そうですわたしですぅ。

 わたしが貴方のストーカーなんですぅ。

 無言電話も毎日のお手紙も……あっ、たまに忘れる日があるから毎日じゃないか。

 えっ? SNSでのイヤがらせ? 

 わたしじゃないです。

 ち、違います! 貴方に絡む女にだけしかやってません!

 わたしはっ、貴方を守るために……そう守って……。

 ヒィッ! お、怒らないで……。

 …………。(生唾を飲み込む音)

 でも……嬉しい……。

 あなたの声が、またわたしに届いてる。

 誰だかわからないって……まあ、そうですよね……。

 あの日、土砂降りの雨の日、橋から飛び降り自殺しようとしていたわたしを――

(唐突に電話が切れる)

(間をおいて、再び――)

【着信音】

(受話器を取る)

 ごめんなさいぃ!

 公衆電話からかけてて、コレやり方、わかんなくて。難しい。

 あっ、ハイ、ふんふん……。

 10円を続けて入れるんですか……? はー一回じゃダメなんですねー。

 ごめんなさいわたし見通しが甘くて……周りからもいつもダメだダメだーって怒られて……。

 え……わたしのこと、覚えてるんですか……?

 そうですそうです。

 あなたが助けてくれなかったらわたし……。

 だからわたしの残りの人生はすべてあなたのものなんです。

 あなたに捧げないと生きている意味がないから、だけど股のゆるそうな女供から貴方を守ることくらいしか結局出来なくて。

 へっ!? こ、告白なんてそんな! 手紙もラブレターのつもりじゃ……!

 たまに何書いていいか分からなくて、ポエムとか日記代わりにしちゃったりしてその!

 あ、え……手紙は、嬉しかったって……面白かったって……ウソ、でしょ……。

 ひゃあぁぁ……。(照れて悶える)

 はっはっはっはっ。(過呼吸)

 だめぇ……。

 喋るだけでも……死にそうなのに……このままじゃ殺されちゃうよぉ……。(小声)

 あ、はい……。

 昨日警察が家に……来ました……警告を受けました……。

 本当にごめんなさい!

 貴方を守るとか言ってるくせに。

 ただ、貴方に気づいて欲しい欲望を抑えられなくて。

 だから今日は……おおおお別れを伝えたいというか、一方的なストーカーのお別れを。

 なんで……って。

 さっきまで怒ってたのに、急にどうしたんですか……?

 迷惑、ですよね……いや、ていうか、わたし、犯罪をして……。

 今回の件で祖父母に怒られて、引き取られることになりました……もっと田舎の方に……。

 これで一人暮らしも終わり……ん?

 ああ……親は……交通事故で両方……。

 自殺しようとしたのはそれで……。

 は!?

 なんで貴方が謝るんですか!

 やめてください! ごめんなさい! ごめんなさいごめんなさい!

 あっ……。

 ふ、ふふっ……お互い謝っちゃって……おかしいですね……はは。

 あー……勇気出して良かった……。

 やっとお話できた。

 これで気兼ねなくこの町を去ることが出来ます。

 もうここから貴方の家の窓を覗くことも、貴方の背中をちょっと離れて追うことも出来ないけど。

 わたし、今、とっても幸せです。

 これであの頃よりは、前を向いて生きていけるかも。

 ……え……。

 嬉しい……。

 待って、って言われてもその……。

 あはは、もう10円が無くて……見通し甘いなわたし……。

 ドジで間抜けなストーカーでごめんなさい。

 貴方に迷惑かけてごめんなさい。

 それと、ありがとうございました。

 ……さようなら。

(電話が切れる)

(受話器を置く)

(暫しの無言の後、急いで家の扉を開く)

(忙しなく走る足音)

(止まる)

 …………。

 ふぅ……。

 あっあっ、すみません。

 次使い……ます…………か?

 はわ……あ、あ、……あぁぁっ……。

 ~~~~~~~~~~~っ!??(声にならない悲鳴)

 どどどどどどうしてここがっ。

 えっ、さっき自分でヒントを……え?

 それにここにしか公衆電話ボックスが無いって……へ?

 あっ、ちょ、入ってこないでくださっ。

(扉が閉まる)

(公衆電話ボックス内にストーカーを追い詰める)

 あばばばば。

 近い近い近いっ……!

 あ……えあ……。

 す、好きです。

 ずっと……貴方のことが好きです……ごめんなさい……。

 ああああわたしナニ言って!?

 ……え?

 引っ越す必要はない? な、なんで。

 もう恋人同士だから?

 んん???

 …………。

 アッ。(理解)

 …………。

 こっここここ。

 こんなわたしでよけ、れば……。

 よよよろしくおねがごめんなさい!

 いやフッたわけじゃごっごめ……うああぁぁ……!

 あ、愛してます……。

 ずっと……。

 これからも……。
クレジット
・台本(ゆるボイ!)
ポンコツストーカーからの電話
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
ゼロフィリアマン
ライター情報
ゼロフィリアマンと申します。
一読していただけたら幸いです。
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