こころボックスシリーズ

とある小さな喫茶店。
元気のない高校生に、喫茶店のマスターが優しく語り掛ける。

やあ、いらっしゃい

どうしたんだい……？　浮かない顔をして。
何か悩みでもあるのかい？

わかるさ。キミとは長い付き合いだ。

ふむ……なるほど。
ＳＮＳで中傷されたのか。

あははははっ！

それは大変だったね。
え、「こっちは真剣なんだ」って？
ごめんごめん。悪かったよ。そんなに怒らないでおくれよ。

だけれど、それは笑い飛ばせるくらい他愛《たあい》もないことなのさ。

ＳＮＳをやめようと思ってるって……？

うーん……せっかく始めたのに、心無い数名のために諦めてしまうなんて勿体《もったい》ないな。

じゃあ、お詫《わ》びも兼ねて僕の考えを説明しようか。

まず、キミに質問だ。

キミは「百人いたら百人に好かれたい」と思うかい……？

もし、答えがＹＥＳだとしたら、それこそ傲慢《ごうまん》な考え方だと僕は思うよ。

何故か。って？

それは、どんなに人気のあるアイドルだって、俳優だって１００％の人から好かれるなんて不可能だからさ。

わかるかい？

「あの人の悪口を聞いたことがない」なんて話を聞いたこともあるけれど、それはあくまでも比喩《ひゆ》であって統計を取った訳では無いし有り得ない。

むしろ、中傷を受けると言うことは、それだけキミのフォロワーが増えて人気が出たってことなんだ。

仮に中傷する人の割合が、フォロワーの中で１％だとしようか。

うん。１％。

１０人のフォロワーが居るとしたら、０．１アカウント

５０人のフォロワーが居るとしたら、０．５アカウント

１００人のフォロワーで、中傷する人の割合は、やっと１アカウント……だね。

これはあくまでも確率論だけれど、強《あなが》ち間違っていないと思うんだ。
むしろ、確率は、もっと低いと言って良い。

フォロワーが増えれば増えるほど、悪意を持つ人が紛れ込む可能性が高くなる。
それで、その心無い人がコメントで中傷したら、中傷を書かれた当人は、フォロワー全てを敵に回してしまった錯覚に陥《おちい》ってしまうんだ。

でも、それは全く逆の話で。
キミのファンが増えたからこそ、不純物がフォロワーに混ざり込んでしまったんだ。

むしろ自信を持って良いことさ。

心無い可哀想な人は、相手にしなければ良いだけなんだ。
間違っても、やり返そうなんて思ってはいけないよ。
その人たちはキミの人気に嫉妬して邪魔をしようとしているだけなのだから。

彼らを相手にするだけキミの時間が勿体ない。

それにキミがＳＮＳを辞めてしまったら、キミに好意を持ってくれている大勢のフォロワー達が悲しむよ。

まあ……僕としては、キミが悩むことで、キミと時間を共有できることを喜ばしく思っているけれどね。
もっと悩んでくれたら良いとさえ思ってるくらいさ。

あははは！
怒るなって。

キミが成長する姿を見守るのが私の喜びなのだからさ。

どうだい……？
ＳＮＳを続ける気になったかい？

まあ、やりすぎは良くないけれど、色々な人、つまり色んな思考と関わるのは良いことだと思うんだ。

そうか。良かった。

少しは気持ちが楽になったかい？

いや、礼には及ばないよ。
そのかわり、また君の話を聞かせておくれ。

あ、そうだ。
最後に、ひとつだけ忠告だ。

キミは、他の人の不純物には決してならないようにね。

今までの話は、例外もある。
相手のことを攻撃、否定、自分の考えを押し付ける……そんなアカウントには、今までの話が当てはまらない可能性が高い事だけは忘れないで欲しい。
せっかく場を提供されたのだから、有意義に使おうよ。

ごめんごめん。
キミには関係のない話だったね。

じゃあ、またおいで。
またキミの心の声を聞かせておくれよ。
楽しみに待ってるよ。

・台本（ゆるボイ！）
3.１％の不純物～こころボックス～
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
ﾆｸｷｭｰP