- 少女
- お嬢様
- 癒し
公開日2023年05月03日 15:21
更新日2023年05月24日 21:30
文字数
2281文字(約 7分37秒)
推奨音声形式
指定なし
推奨演者性別
指定なし
演者人数
1 人
演者役柄
財閥の令嬢(理律美)
視聴者役柄
指定なし
場所
指定なし
あらすじ
毎年、少女に送られてくるテディベア。
ただ、そのテディベアは、いわくつきのようです。
果たして、どのような事情があるのでしょうか。
ただ、そのテディベアは、いわくつきのようです。
果たして、どのような事情があるのでしょうか。
本編
私の部屋にテディベアが17体住んでいる。
厳密に言えば、昨日まで16体だったのが、今日、たった今17体になった。
それは、自分で買ったものでも、両親からのプレゼントでも無い。
毎年、誕生日に送られて……いや、正確には贈られてくる、か。
今日、私は16歳になった。
だから、私がこの世に生を受けたときから、毎年欠かさず私の元にテディベアが贈られていることになる。
――誕生日おめでとう。たくさんの笑顔と幸運が貴女(あなた)に訪れますように。
メッセージカードと共に。
手書き文字だけれど、その筆跡に心当たりは無い。
万年筆で書かれた、繊細で綺麗な字。
差出人は不明、発送元も国内国外バラバラだ。
複数人から贈られてくると言うよりは、贈り主を特定させないために住所不定で送ってきているように思える。
ママもパパも、送り主に全く心当たりは無いと言う。
(理津美の声)
「まあ、キミに罪は無いけれど……ね?クマちゃん。」
私は今日届いたばかりの真新しいテディベアを抱きしめた。
始まりは、ママから私が産まれた日、つまり本当の意味での誕生日。
私の出産後、ママは当然病院のベッドで横になる。横になるや否や看護師さんが、大きなテディベアを抱えママの病室に入ってきたそうだ。
看護師さんが言うには、40才くらいの中年男性からテディベアを受け取ったらしい。だけれど、その中年男性自体も、知らない人から「これを渡してくれ」と手数料と共にテディベアの配送を任されただけだと言う。
最初からそんな感じだったので、テディベアを贈った張本人は全くもってわからない。調べようにも、その取っかかりさえ掴めない。
ヒトツだけ、わかっていることは、テディベアの足裏に縫われているサインから、市販されているものでは無く、名の知れた職人によって作られたオーダーメイドであることだ。
ただ、職人さんに問い合わせても依頼主はわからなかったそうだ。
そんな訳で私の部屋には、どんどんテディベアが増えていく。仮にも私は女の子だし、テディベアは嫌いじゃ無い……むしろ好きだから良いのだけれど。
それよりも不思議なのが、ママもパパも普通に身元不明のテディベアを「何の疑問も持たず」受け取っていると言うことだ。むしろ毎年贈られてくるのを「心待ちにしている」と表現しても良いくらい。
親としては、送り主不明のプレゼントなんて、受け取り拒否するくらいが当たり前の反応だと思う。
私は、産まれたときから知らない人からのプレゼント……テディベアを受け取っているから、これが普通のことなのだけれど。
でもパパとママは大人だし、何の疑いも無くテディベアを受け取るなんてことが有り得るのかな。
良くある刑事物のドラマで、テディベアに爆弾を仕掛けている……なんて、定番の設定だったりするし。
なのに、「プレゼントです、はいどうぞ」と言われて、「ありがとう!理津美、今年も来たよ!」と、すんなり何の疑いも無く、むしろ喜んで受け取ってしまう両親は、度胸があるというか、何も考えてないと言うか…
だからこそ私は、疑り深い性格になってしまったのかもしれない。両親の分まで。
『高校一年生にしては大人っぽいね。』と良く言われるのは、単にあらゆる物事に対して、無感情、冷めているところがあるからかな、と思っている。
傍(はた)から見たら、その無感情な姿が、クールで大人っぽく映るのかもしれない。
そんな私だから、誕生日にテディベアが贈られてきたからと言って、「きゃーっ!かわいいー!」なんてリアクションをすることは絶対にない。
毎年、「ああ…今年も来たんだ。」と、他人事(ひとごと)のように受け止める。
そう、他人事。
喜び、戸惑い、悲しみ……どの感情も私の中には生まれない。
もっと言えば、贈り主の『自己満足に付き合ってあげている』とさえ思っている。
無理矢理懸念点を挙げるとすれば、このテディベア達が増えることによって、私の部屋が浸食されて狭くなっていくことくらいかな。
と言っても、まだ部屋の広さは大分余裕があるから良いのだけれどね。
それに、パパが頼んでもいないのに、テディベア用の大きな棚を作ってくれているから、置き場所には困らない。
だけれど、一体、私が何才になるまでこの子の兄弟は増えていくのだろう。
私が、おばさん、おばあさんになっても届くのかな。
出来れば二十歳(はたち)くらいでやめてくれないかな。年相応ってものがあるし、ね。まあ、年をとってもテディベア大好きな人は居るけれど、私のキャラでは無い。
それとも、あるタイミングで、贈り主が名乗り出たりするのかしら。
「実は私だったんだ。理津美、大きくなったね。」とか言って、グレーの燕尾服(えんびふく)を着た老紳士が現れるとか。
まあ、老紳士は私の勝手なイメージだけれど。
私も年を取れば、それだけ知恵が付いてくるわけで、産まれてから16年間、私に与えられたヒントを掻き集めたら、ある程度贈り主は絞られてくる……と思う。
だけれど、あえて私が贈り主を特定しないのは、今の状況を楽しんでいるところもあるからだ。
恩を仇で返すでは無いけれど、この謎を途中で解いてしまったら、贈り主に私が謎を解いてしまったことが伝わったら……ね?
だから今は、私の想像の世界で、ロマンスグレーの老紳士が、毎年私の誕生日にテディベアを贈るよう執事に言いつけている……と、妄想するくらいが丁度良い。
……これが物心ついた時から、毎年私の誕生日に私の頭の中で考えられていることだ。
そして、私は、棚のガラス扉を開けて17体目のテディベアを、『彼のために用意された場所』に納めるのだ。
それが、まるで私の誕生日のルーティンのように。
ようこそ、テディベア。
厳密に言えば、昨日まで16体だったのが、今日、たった今17体になった。
それは、自分で買ったものでも、両親からのプレゼントでも無い。
毎年、誕生日に送られて……いや、正確には贈られてくる、か。
今日、私は16歳になった。
だから、私がこの世に生を受けたときから、毎年欠かさず私の元にテディベアが贈られていることになる。
――誕生日おめでとう。たくさんの笑顔と幸運が貴女(あなた)に訪れますように。
メッセージカードと共に。
手書き文字だけれど、その筆跡に心当たりは無い。
万年筆で書かれた、繊細で綺麗な字。
差出人は不明、発送元も国内国外バラバラだ。
複数人から贈られてくると言うよりは、贈り主を特定させないために住所不定で送ってきているように思える。
ママもパパも、送り主に全く心当たりは無いと言う。
(理津美の声)
「まあ、キミに罪は無いけれど……ね?クマちゃん。」
私は今日届いたばかりの真新しいテディベアを抱きしめた。
始まりは、ママから私が産まれた日、つまり本当の意味での誕生日。
私の出産後、ママは当然病院のベッドで横になる。横になるや否や看護師さんが、大きなテディベアを抱えママの病室に入ってきたそうだ。
看護師さんが言うには、40才くらいの中年男性からテディベアを受け取ったらしい。だけれど、その中年男性自体も、知らない人から「これを渡してくれ」と手数料と共にテディベアの配送を任されただけだと言う。
最初からそんな感じだったので、テディベアを贈った張本人は全くもってわからない。調べようにも、その取っかかりさえ掴めない。
ヒトツだけ、わかっていることは、テディベアの足裏に縫われているサインから、市販されているものでは無く、名の知れた職人によって作られたオーダーメイドであることだ。
ただ、職人さんに問い合わせても依頼主はわからなかったそうだ。
そんな訳で私の部屋には、どんどんテディベアが増えていく。仮にも私は女の子だし、テディベアは嫌いじゃ無い……むしろ好きだから良いのだけれど。
それよりも不思議なのが、ママもパパも普通に身元不明のテディベアを「何の疑問も持たず」受け取っていると言うことだ。むしろ毎年贈られてくるのを「心待ちにしている」と表現しても良いくらい。
親としては、送り主不明のプレゼントなんて、受け取り拒否するくらいが当たり前の反応だと思う。
私は、産まれたときから知らない人からのプレゼント……テディベアを受け取っているから、これが普通のことなのだけれど。
でもパパとママは大人だし、何の疑いも無くテディベアを受け取るなんてことが有り得るのかな。
良くある刑事物のドラマで、テディベアに爆弾を仕掛けている……なんて、定番の設定だったりするし。
なのに、「プレゼントです、はいどうぞ」と言われて、「ありがとう!理津美、今年も来たよ!」と、すんなり何の疑いも無く、むしろ喜んで受け取ってしまう両親は、度胸があるというか、何も考えてないと言うか…
だからこそ私は、疑り深い性格になってしまったのかもしれない。両親の分まで。
『高校一年生にしては大人っぽいね。』と良く言われるのは、単にあらゆる物事に対して、無感情、冷めているところがあるからかな、と思っている。
傍(はた)から見たら、その無感情な姿が、クールで大人っぽく映るのかもしれない。
そんな私だから、誕生日にテディベアが贈られてきたからと言って、「きゃーっ!かわいいー!」なんてリアクションをすることは絶対にない。
毎年、「ああ…今年も来たんだ。」と、他人事(ひとごと)のように受け止める。
そう、他人事。
喜び、戸惑い、悲しみ……どの感情も私の中には生まれない。
もっと言えば、贈り主の『自己満足に付き合ってあげている』とさえ思っている。
無理矢理懸念点を挙げるとすれば、このテディベア達が増えることによって、私の部屋が浸食されて狭くなっていくことくらいかな。
と言っても、まだ部屋の広さは大分余裕があるから良いのだけれどね。
それに、パパが頼んでもいないのに、テディベア用の大きな棚を作ってくれているから、置き場所には困らない。
だけれど、一体、私が何才になるまでこの子の兄弟は増えていくのだろう。
私が、おばさん、おばあさんになっても届くのかな。
出来れば二十歳(はたち)くらいでやめてくれないかな。年相応ってものがあるし、ね。まあ、年をとってもテディベア大好きな人は居るけれど、私のキャラでは無い。
それとも、あるタイミングで、贈り主が名乗り出たりするのかしら。
「実は私だったんだ。理津美、大きくなったね。」とか言って、グレーの燕尾服(えんびふく)を着た老紳士が現れるとか。
まあ、老紳士は私の勝手なイメージだけれど。
私も年を取れば、それだけ知恵が付いてくるわけで、産まれてから16年間、私に与えられたヒントを掻き集めたら、ある程度贈り主は絞られてくる……と思う。
だけれど、あえて私が贈り主を特定しないのは、今の状況を楽しんでいるところもあるからだ。
恩を仇で返すでは無いけれど、この謎を途中で解いてしまったら、贈り主に私が謎を解いてしまったことが伝わったら……ね?
だから今は、私の想像の世界で、ロマンスグレーの老紳士が、毎年私の誕生日にテディベアを贈るよう執事に言いつけている……と、妄想するくらいが丁度良い。
……これが物心ついた時から、毎年私の誕生日に私の頭の中で考えられていることだ。
そして、私は、棚のガラス扉を開けて17体目のテディベアを、『彼のために用意された場所』に納めるのだ。
それが、まるで私の誕生日のルーティンのように。
ようこそ、テディベア。
クレジット
ライター情報
猫と初音ミクを溺愛しているライターです。
コメディ、日常、メンヘラ、そして百合&ライトBL
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