- メンヘラ
- ギャグ
- 罵倒
- 切ない
- 少女
- メイド
公開日2023年05月22日 21:54
更新日2023年05月27日 19:49
文字数
7541文字(約 25分9秒)
推奨音声形式
指定なし
推奨演者性別
指定なし
演者人数
4 人
演者役柄
指定なし
視聴者役柄
指定なし
場所
指定なし
あらすじ
まりんは貧乳だ。
貧乳だって男にモテるのだ。
世の中、情けない男が多すぎる。
貧乳美少女まりん、男を金ヅルとしか思っていない。
今日は、どんな手を使って男から金を奪うのか……?!
★登場人物
☆星屑《ほしくず》魔鈴《まりん》 (女)
:高校二年生
:萌え声で男を魅了する。
:だがしかし、あるキッカケでキャラ豹変《ひょうへん》しドスのきいた声に変化する。
:男から金を搾り取ることしか考えていない。
☆ツトム (男)
:高校二年生
:萌えアニメ大好きアキバ系オタク
:挙動不審で、自信なさげにドモりながら話す情けないキャラ。
☆マモル (男)
:絵にかいたような理系メガネ男子。
:理路整然と自信を持って話をする。
:《男性以外のキャストさんでもOK》
☆語り部 (性別不問)
:この物語のストーリーテラー
:物語の中での配分が圧倒的に多いです。
:
:リズミカルに面白おかしく解説をお願いします。
:この物語を面白くするかどうかは、語り部にかかっているので、できるだけ前読みしてください。
貧乳だって男にモテるのだ。
世の中、情けない男が多すぎる。
貧乳美少女まりん、男を金ヅルとしか思っていない。
今日は、どんな手を使って男から金を奪うのか……?!
★登場人物
☆星屑《ほしくず》魔鈴《まりん》 (女)
:高校二年生
:萌え声で男を魅了する。
:だがしかし、あるキッカケでキャラ豹変《ひょうへん》しドスのきいた声に変化する。
:男から金を搾り取ることしか考えていない。
☆ツトム (男)
:高校二年生
:萌えアニメ大好きアキバ系オタク
:挙動不審で、自信なさげにドモりながら話す情けないキャラ。
☆マモル (男)
:絵にかいたような理系メガネ男子。
:理路整然と自信を持って話をする。
:《男性以外のキャストさんでもOK》
☆語り部 (性別不問)
:この物語のストーリーテラー
:物語の中での配分が圧倒的に多いです。
:
:リズミカルに面白おかしく解説をお願いします。
:この物語を面白くするかどうかは、語り部にかかっているので、できるだけ前読みしてください。
本編
★★★★★★★★★★★★
台本をご覧いただきましてありがとうございます!
本文中、「――」の記述がありましたら、ト書きですので音声化不要です。
★★★★★★★★★★★★
語り部:彼女は貧乳だ。
語り部:だがしかし、あえて自分の適正サイズより2カップ上のブラを身につけている。
語り部:念のために断っておくが、見栄を張っている訳ではない。……たぶん。
語り部:Cカップブラの中で、Aカップの胸がぷるんぷるん楽しそうに泳いでいる。
語り部:それはもう鯉《こい》のぼりもビックリだ。面白そうに泳いでいるのだ。
語り部:……まあ、揺れる胸があるのかは、彼女の幸せのために触れないでおこう。
語り部:そして彼女の服装だが、秋葉原に居るメイド喫茶のメイドような服装である。
語り部:しかも胸元が大きく開いている。
語り部:谷間が無いのに、胸元の大きく開いたメイド服。
語り部:ある意味、チャレンジャーと言えるだろう。
語り部:だがしかし、ここは秋葉原ではない。
語り部:道歩く人たちが、次々と振り返り彼女を見つめ、そして驚愕《きょうがく》する。
語り部:『なんだあの痛い女は……!』
語り部:まあ、そうでしょう、そうだろう。
語り部:『痛女』だけに、いたって当然の感想である。
語り部:彼女の活動範囲は、神奈川県の藤沢《ふじさわ》駅周辺。
語り部:拓《ひら》けているのは駅周辺だけで、10分も歩かないうちに住宅街に迷い込む。
語り部:大きな建物と言えば、マンションか寺くらいだ。まあ、一言で表現するならば、のどかな街である。
語り部:だがしかし、彼女は陰口《かげぐち》なんて気にしない。
語り部:彼女の標的《ターゲット》は、ちょろい男……ただ1人なのだから。
――(間)
語り部:さて、本題に入ろう。
語り部:ここは、藤沢駅改札前。
語り部:改札前には、キョロキョロと辺《あた》りを見回す挙動不審《きょどうふしん》な男が居た。
語り部:その男は、赤いチェック柄シャツの前ボタンを全開にして、萌えTシャツを見せつけている。そう、絵にかいたようなオタクだった。
語り部:誰かと待ち合わせているのだろうか。
語り部:まあ、良い所、オタク同士が集まって萌えアニメについて語り合うのだろう。
語り部:間違いない。
語り部:こんな男が、女に縁がある訳が無い。訳がないのだ。
まりん:ツトムきゅーんっ!
語り部:ぐはぁ! ちょっと待ってくれ。
語り部:見間違えでなければ、オタクは、少し離れた場所に居る女の子から声を掛けられているように見える。いや、きっと見間違えだな。まさかな。
語り部:だがしかし、女の子はオタクを見つけると大きく手を振った。
語り部:そして、細かく足をちょこまかと動かしてオタクに駆け寄ったのだ。
語り部:信じたくないが、どうやら見間違いではなかったらしい。
まりん:おまたせにゃん。もしかして待った……にゃん?
語り部:心配そうに首を傾げる女の子。
ツトム:ま、まままりんちゃん……!
ツトム:い、いや、今来たところ……だよ。
語り部:そんな訳はない。
語り部:待ち合わせ時間は13時、そして今は15時だ。
語り部:もし彼が、本当に来たばかりなのだったら、彼も大遅刻していると言うことだ。
語り部:誰が聞いてもわかる嘘をついてしまうのは、男の悲しい性《さが》である。
まりん:よかったにゃん!
まりん:まりんー……
まりん:ツトムくんとデートできるなんて幸せにゃん!
語り部:心にも無いことを言う女の子。
語り部:彼女の名は、星屑《ほしくず》魔鈴《まりん》。
語り部:彼が何時間でも待つだろうことを見越して、ワザと遅れて登場する。
語り部:自分が良ければそれで良い。
語り部:それどころか、待たせてナンボだと思っている、まさに痛い女なのだ。
ツトム:う、うん……
ツトム:僕も、まりんちゃんと二人きりなんて夢のようだよ。
まりん:えへっ!
まりん:まりん、うーれーしーいー、、、にゃん!
ツトム:え、えへへへへ。
語り部:キモい、そして怖い。
語り部:色んな意味で怖い。
語り部:彼らの近くに人が近寄らず、周囲に不自然な空間が作られているのも仕方のないことだろう。
まりん:あ、いっけなーい!
語り部:何やら、まりんのポケットからハンカチが落ちたらしい。
語り部:と言うか、明らかに行動がワザとらしいと言うか、不自然だ。
ツトム:ど、どうしたの?
まりん:ハンカチ落ちちゃったーあ。まりんったらドジっ娘《こ》だにゃあ。拾わなきゃ。
語り部:落としたんだったら、『とっとと黙って拾え』と言いたいところだが、ツトムは、ハンカチを落としたまりんに対してさえ、萌《も》えていることだろう。
語り部:まったく、男ってヤツは……
まりん:よいしょ、よいしょ
語り部:まりんは萌え声で呟《つぶや》きながら、前屈《まえかが》みになり、ハンカチを拾う姿勢を取った。
語り部:だがしかし、何故《なぜ》か膝《ひざ》を曲げずにハンカチを拾おうとしてる。
語り部:体が固いのか中々拾えないようだった。
語り部:ドンくさいな、膝を曲げろよ。膝を。
ツトム:うおぉ……
語り部:ツトムが声にならないうめき声をあげた。
語り部:一体何があったのだ。
語り部:彼の視線《しせん》は、斜《なな》め下、まりんの胸元にロックオンだ。
語り部:そう。賢明なる視聴者様ならお気づきの通り、ツトムの視線の先で、まりんの胸の谷間が、見え隠れしているのだ。
語り部:しかも、この話の最初に紹介した通り、ブラジャーの中身はガバガバなのだ。
語り部:守備力が弱々《よわよわ》なのだ。
語り部:今、魔物が現れたら一撃でやられてしまうくらい、まりんの胸元は弱々装備だった。
語り部:そして、彼の位置からだと丁度《ちょうど》ブラの空間、嬉し恥ずかし魅惑《みわく》の危険領域《デインジャーゾーン》が見え隠れするのだった。
ツトム:ゴ、ゴクリ……
語り部:条件反射で思わず唾《つば》を飲み込むツトム。
ツトム:ハァ、ハァ……
語り部:ツトムの息遣《いきづか》いが荒《あら》くなってきている。二次元の女子しか知らないDTの彼には刺激が強すぎるようだ。
語り部:それも無理はない。生まれてからこの方、女子の秘密の扉を開けたことが無いのだから。
語り部:そもそも本来ならハンカチを拾ってあげるのが、男ってものだ。
語り部:だがしかし悲しいことに、彼の脳内に『ハンカチを自《みずか》ら拾って渡す』、その選択肢は、どこにも無かった。
語り部:前屈《まえかが》みになったまりんの胸の谷間が、ピンクの髪によって見え隠れしている。
語り部:そう、見えそうで見えない、これが『チラリズム』だ。
語り部:谷間が見えたその瞬間、ブラの隙間《すきま》から魅惑《みわく》の小さな膨《ふく》らみが彼の視界に現れる。
語り部:もう少し、もう少しで頂上が……!
語り部:と思ったのも束の間、まりんのピンクの髪が希望の魅惑ゾーンを隠してしまう。
ツトム:ああっ!
語り部:思わずツトムは溜息《ためいき》をつく。
語り部:でもチャンスはまだある。
語り部:次だ、次をくれ!
語り部:額《ひたい》に薄《う》っすら汗を掻《か》きゴクリと唾《つば》を飲み込む。
語り部:そして彼は、自分の全神経をまりんの胸元に集中した。
語り部:うむ。普通にキモい。
語り部:そして……
ツトム:おおっ……!
語り部:ついに小さな胸の膨らみの頂上が見えそう……と思ったその瞬間。
まりん:よいしょっと。
語り部:ツトムの努力も虚《むな》しく呆気《あっけ》ないほどに……まりんは何事も無かったかのように、一瞬にしてハンカチを拾いあげた。
ツトム:ああっ……!
語り部:2回目のああっ!と共に、ツトムは目を逸《そ》らした。
語り部:何故か。答えは明確である。まりんは起き上がってからすぐに、ツトムのことをジッと睨《にら》みつけたのである。
語り部:ツトムは、まりんが何を考えているのか皆目見当がつかなかった。
語り部:まりんは、ジッと三白眼《さんぱくがん》でツトムのことを見つめている。
語り部:そして、ツトムの期待の汗は、一瞬にして『冷や汗』にシフトチェンジしたのだった。
語り部:ツトムは思った。
語り部:『胸元見てたの気付かれてないよね。まりんちゃんハンカチを拾うことに必死だったし』
語り部:ツトムの脳内は、思考がグルグルと駆《か》け巡《めぐ》り錯乱状態《さくらんじょうたい》になっていた。
語り部:だがしかし、ようやく一つの答えを導きだしたのだ。
語り部:そうだ、まりんへの気づかいだ。
ツトム:ま、ままままりんちゃん、大丈夫……?
語り部:遅すぎる。もはや遅すぎた。今更《いまさら》ながらの気づかいだ。
語り部:そして、わかりやすいほどに、ドモッている。
語り部:ところが、まりんはニッコリと微笑《ほほえ》んだ。
まりん:うん大丈夫……! ありがとうツトムきゅん! ツトムきゅんは優しいね!
ツトム:い、いやあ……そんなことな……
語り部:照れると共に、安堵《あんど》の表情を受かべるツトム。
語り部:まりんにはバレていない。
語り部:うん、良かった。本当に良かった。めでたしめでたしだ。
語り部:ここで完と打ってもよいくらいだ。
語り部:だが、そうは問屋《とんや》が卸《おろ》さないのだった。
語り部:ツトムの謙遜《けんそん》の言葉は、別の声でかき消された。
まりん:……と、言うとでも思ったのかクソオタク!!
ツトム:えっ、ええっ?!
語り部:まりんの顔が般若《はんにゃ》の表情に変貌《へんぼう》し、ツトムへの恫喝《どうかつ》が始まった。
まりん:お前、俺の胸元見てたよな? 正直に言わないと、いてこますぞコラ。ああん?
ツトム:い、いや……それは……
まりん:み、て、た、よ……な?
ツトム:う、は、はい。ごめんなさい
語り部:まりんの迫力に思わず自白してしまったツトム。
語り部:無理もない、今のまりんの言葉には、「にゃん」の「に」の字も無い。
語り部:もはやヘビに睨《にら》まれたカエルの如《ごと》く、まりんのその目からツトムは逃れられないのだ。
まりん:おいこら童貞っ!
まりん:童貞の分際《ぶんざい》で、このアタシの胸を見ようだなんて900万年早いんだよっ!
ツトム:は、はひいいいいっ
語り部:900万年とかキリが良いのか悪いのかわからない数字を使うのだったら、いっそのこと1000万年にすれば良いのに。
語り部:なんて細かいことは、さて置き、小動物のように怯《おび》え切ってガタガタ震えるツトム。
語り部:多くの男は……いや、ツトムでなければ間髪入れずに、こう突っ込むことだろう。
語り部:『いや、お前さ、最初からそれが狙いだったんじゃね?』
語り部:だがしかし、残念ながら自宅警備員《じたくけいびいん》のツトムには、コミュニケーションスキルが皆無《かいむ》だった。
語り部:もはや平静を失っているツトムには、冷汗を掻き、ひたすら困ることしかできない。
語り部:どうする、どうするツトムっ?!
まりん:おいこら童貞! お前、良いもの見れたんだからさあ……わかるだろ?
ツトム:……え、なんのことですか?
まりん:すっとぼけてんじゃねえぞコラ。これだよ、これ!
語り部:まりんは右手の親指と人差し指で〇《まる》を作り、残りの指を広げる昭和のゲスいジェスチャーでツトムに金銭を要求する。
ツトム:ええっ?! そんな……ひどい
まりん:おいおいおい、何を言っちゃってくれてるのさ?
まりん:むしろ、胸を見られた私の方が被害者だっつーの。このセクハラ野郎が。
ツトム:そんな、見えてないし……
まりん:はあ……?!
まりん:見えてないとか、どの口が言ってんだよ?
まりん:しらばっくれてるんじゃねえよ。警察突き出すぞオラ。
まりん:あははは。警察は、童貞と可愛い女の子、どっちの味方するんだろーな?
まりん:いいから、はよ出すものだせや、警察に突き出すぞコラ!
語り部:もうここまで来ると恐喝《きょうかつ》だ。
語り部:だがしかし、追い詰められたツトムは、警察に突き出されては敵わないとリュックの中に入っている財布を探した。
語り部:彼のリュックには、当然のようにアニメキャラの缶バッジが所狭《ところせま》しと並んでいる。
語り部:リュックの中から、人気アニメキャラの財布を取り出し、小銭入れをジャラジャラと弄《まさぐ》った。
語り部:まりんは彼の行動を見逃さない。
まりん:はあ?!
まりん:バカか……?! 小銭入れ覗いてるんじゃねえよ。クソが!
まりん:いいから貸せオラっ!
ツトム:あ、ああ……!!
語り部:モタモタしているツトムから、まりんはスパッと財布を奪い取った。
語り部:すると、まりんは札入れに入っている札を全て一気に取り出した。
語り部:そして、空っぽになった財布を「ほらよっ」とツトムに叩きつけ、再び萌え声で言ったのだった。
まりん:ツトムきゅん、ありがとにゃん!
ツトム:あ、そんなに……
語り部:再び招き猫ポーズ、萌えゼリフに戻ったまりんは、もうツトムに用は無いと背を向け走り去る。
語り部:そして、急に振り返り、叫んだのだった。
まりん:ちょろいんだよバーカ!
まりん:この童貞クソ野郎!!
語り部:呆然《ぼうぜん》と立ち尽くすツトムを尻目に、まりんは二度と振りかえることなく走り去った。
――(間)
語り部:その後、ツトムは人間不信に陥り、二度と二次元の世界から出ることは無かったと言う。
まりん:まったく、これだけしか無いのかよ。しけてんな。
語り部:まりんは、ツトムから奪い取った金を自分の財布にしまいながら毒づいた。
語り部:もう「にゃん」なんて言葉を発する素振《そぶ》りは全くない。
語り部:あのキャラはツトムに向けたキャラ作りだったようだ。
語り部:そして、上機嫌に歩いていたまりんだったが、何かを見つけたのか、不意に立ち止まった。
まりん:あれ、マモルじゃないのか?
語り部:まりんの視線の先には、理系男子を絵にかいたような男、マモルが居た。
まりん:よし、ちょっとからかってやるか……。
まりん:おおーい、マモルきゅーん!!
語り部:ツトムの時と同じように、大きく手を振りパタパタと小走りでマモルに駆け寄る。
語り部:再び萌えキャラのお出ましである。
マモル:ああ、星屑《ほしくず》。
語り部:リアクション薄っ!
語り部:さすが理系男子。
語り部:まりんのメイド服を見ても、何の感情も示さない。
語り部:唯一のリアクションと言えば、メガネのブリッジを人差し指で押し上げたくらいだ。
まりん:友達なんだから、星屑じゃなくて、まりんでいいにゃん!
マモル:……そうか、考えておく。
まりん:よろしくにゃん!
語り部:出た……!
語り部:男を腑抜《ふぬ》けにするスキル「名前で呼んでいいよ」だ。
語り部:この一言は、名前呼びを要求することによって「こいつ、俺に気があるんじゃね?」と期待させてしまう上級者向けのテクニックだ。
マモル:じゃあ。
まりん:あ、ちょ、ちょっと待つにゃん!
語り部:おっとー。
語り部:マモルには名前呼びスキルが通じない。特に何も感じていないようだ。
語り部:マモルは躊躇《ちゅうちょ》なく、まりんの横を通り抜けようとした。
語り部:これには、まりんもショックだったようで、思わず慌《あわ》ててマモルを呼び止める。
語り部:するとマモルは、通り過ぎようとした足を止め、振り返った。
マモル:……何か用か?
まりん:え、えーと。あ、いっけなーい!
語り部:出たーーー!!
語り部:ツトムを腑抜けにしたハンカチ落とし大作戦だ。
語り部:胸元をチラつかせることでマモルの気を引く作戦。
語り部:まりんは、マモルの位置から胸元が見えるよう、正確にポジション取りをする。
まりん:よいしょ、よいしょ。
語り部:モタモタとハンカチを掴《つか》もうとするまりん。
マモル:…………
語り部:おお!
語り部:マモルが無言で、まりんの胸元を見ているぞ。
語り部:明らかにブラの中を凝視《ぎょうし》している。
語り部:まあ、クールとは言え、所詮《しょせん》マモルも男だ。
語り部:まりんの術中《じゅつちゅう》にハマるのも仕方のないことである。
語り部:まりんは、マモルの視線を感じて、よいしょと起き上がる。
語り部:これでチェックメイトだ。
まりん:マモルくん、私の胸元見てたでしょ?
マモル:ああ。見た。
まりん:あ、……え?
語り部:言い切った。
語り部:清々《すがすが》しいほどに、悪ぶりもせずに言い切った。
語り部:むしろ、そうすることが当然のように。
語り部:想定外のリアクションに、まりんは狼狽《ろうばい》する。
語り部:大抵の場合、男の方が狼狽《ろうばい》するシチュエーションなのにも関わらず、だ。
語り部:しかし、ここまで来て引き返すわけにはいかない。
語り部:ここで、まりんが啖呵《たんか》を切る。
まりん:お、おい、おま……
――まりんの言葉を遮《さえぎ》るマモル
マモル:星屑、お前、ブラジャーのサイズが合っていないな。
マモル:……垂《た》れるぞ
まりん:え、えええええっ?!
まりん:そっちいいいいい?!?!?!?!?!
語り部:まりんは、マモルからの想定外の口撃《こうげき》に悲鳴を上げた。
語り部:それはそうだ。
語り部:まりんが、胸の谷間を見せつける離れ技をやってのけたにも拘《かかわ》らず、そしてマモルもガン見したにも拘らず、マモルは恍惚《こうこつ》するどころか、まりんにダメ出しを喰らわせたのだ。
語り部:いやいや、男子高校生なら、100%食いつくところだ。
語り部:むしろ体の一部に変化が起きてもおかしくない。
語り部:そして、マモルは更なる口撃を仕掛けたのだった。
マモル:ただでさえ、バストの下垂《かすい》は10代後半から徐々に始まって、30代で大きく変化が現れる。
マモル:にも関わらず、形の合わないブラジャーをつけ続けることで、更にバストの下垂は進んでしまうのだ。
マモル:たとえ、貧乳の星屑でも、だ。
まりん:う…………
語り部:ぐうの音も出ないまりん。
語り部:何か言い返す言葉は無いかと脳内を隅から隅まで検索していた。
語り部:だがしかし、残念なことに彼女の小さな脳みそでは、そもそも探す場所が限られていた。
語り部:そして、まりんは両手をグッと握《にぎ》り……例のアレを叫ぶのだった。
まりん:お、覚えてやがれ! これで勝ったと思うなよーっ!!
語り部:昭和にしか聞けない貴重な捨てゼリフを残し、マモルの元から走り去るのだった。
マモル:ふむ、今日は、あの日……か。
語り部:マモルは、何かを察した様子で、その場を立ち去るのだった。
語り部: ――今日の戦績 まりんの一勝一敗――
まりん:悔しくなんかないもん!
まりん:ばーかばーか!
――(間)
終演:
★★★★★★★★★★★★
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★★★★★★★★★★★★
台本をご覧いただきましてありがとうございます!
本文中、「――」の記述がありましたら、ト書きですので音声化不要です。
★★★★★★★★★★★★
語り部:彼女は貧乳だ。
語り部:だがしかし、あえて自分の適正サイズより2カップ上のブラを身につけている。
語り部:念のために断っておくが、見栄を張っている訳ではない。……たぶん。
語り部:Cカップブラの中で、Aカップの胸がぷるんぷるん楽しそうに泳いでいる。
語り部:それはもう鯉《こい》のぼりもビックリだ。面白そうに泳いでいるのだ。
語り部:……まあ、揺れる胸があるのかは、彼女の幸せのために触れないでおこう。
語り部:そして彼女の服装だが、秋葉原に居るメイド喫茶のメイドような服装である。
語り部:しかも胸元が大きく開いている。
語り部:谷間が無いのに、胸元の大きく開いたメイド服。
語り部:ある意味、チャレンジャーと言えるだろう。
語り部:だがしかし、ここは秋葉原ではない。
語り部:道歩く人たちが、次々と振り返り彼女を見つめ、そして驚愕《きょうがく》する。
語り部:『なんだあの痛い女は……!』
語り部:まあ、そうでしょう、そうだろう。
語り部:『痛女』だけに、いたって当然の感想である。
語り部:彼女の活動範囲は、神奈川県の藤沢《ふじさわ》駅周辺。
語り部:拓《ひら》けているのは駅周辺だけで、10分も歩かないうちに住宅街に迷い込む。
語り部:大きな建物と言えば、マンションか寺くらいだ。まあ、一言で表現するならば、のどかな街である。
語り部:だがしかし、彼女は陰口《かげぐち》なんて気にしない。
語り部:彼女の標的《ターゲット》は、ちょろい男……ただ1人なのだから。
――(間)
語り部:さて、本題に入ろう。
語り部:ここは、藤沢駅改札前。
語り部:改札前には、キョロキョロと辺《あた》りを見回す挙動不審《きょどうふしん》な男が居た。
語り部:その男は、赤いチェック柄シャツの前ボタンを全開にして、萌えTシャツを見せつけている。そう、絵にかいたようなオタクだった。
語り部:誰かと待ち合わせているのだろうか。
語り部:まあ、良い所、オタク同士が集まって萌えアニメについて語り合うのだろう。
語り部:間違いない。
語り部:こんな男が、女に縁がある訳が無い。訳がないのだ。
まりん:ツトムきゅーんっ!
語り部:ぐはぁ! ちょっと待ってくれ。
語り部:見間違えでなければ、オタクは、少し離れた場所に居る女の子から声を掛けられているように見える。いや、きっと見間違えだな。まさかな。
語り部:だがしかし、女の子はオタクを見つけると大きく手を振った。
語り部:そして、細かく足をちょこまかと動かしてオタクに駆け寄ったのだ。
語り部:信じたくないが、どうやら見間違いではなかったらしい。
まりん:おまたせにゃん。もしかして待った……にゃん?
語り部:心配そうに首を傾げる女の子。
ツトム:ま、まままりんちゃん……!
ツトム:い、いや、今来たところ……だよ。
語り部:そんな訳はない。
語り部:待ち合わせ時間は13時、そして今は15時だ。
語り部:もし彼が、本当に来たばかりなのだったら、彼も大遅刻していると言うことだ。
語り部:誰が聞いてもわかる嘘をついてしまうのは、男の悲しい性《さが》である。
まりん:よかったにゃん!
まりん:まりんー……
まりん:ツトムくんとデートできるなんて幸せにゃん!
語り部:心にも無いことを言う女の子。
語り部:彼女の名は、星屑《ほしくず》魔鈴《まりん》。
語り部:彼が何時間でも待つだろうことを見越して、ワザと遅れて登場する。
語り部:自分が良ければそれで良い。
語り部:それどころか、待たせてナンボだと思っている、まさに痛い女なのだ。
ツトム:う、うん……
ツトム:僕も、まりんちゃんと二人きりなんて夢のようだよ。
まりん:えへっ!
まりん:まりん、うーれーしーいー、、、にゃん!
ツトム:え、えへへへへ。
語り部:キモい、そして怖い。
語り部:色んな意味で怖い。
語り部:彼らの近くに人が近寄らず、周囲に不自然な空間が作られているのも仕方のないことだろう。
まりん:あ、いっけなーい!
語り部:何やら、まりんのポケットからハンカチが落ちたらしい。
語り部:と言うか、明らかに行動がワザとらしいと言うか、不自然だ。
ツトム:ど、どうしたの?
まりん:ハンカチ落ちちゃったーあ。まりんったらドジっ娘《こ》だにゃあ。拾わなきゃ。
語り部:落としたんだったら、『とっとと黙って拾え』と言いたいところだが、ツトムは、ハンカチを落としたまりんに対してさえ、萌《も》えていることだろう。
語り部:まったく、男ってヤツは……
まりん:よいしょ、よいしょ
語り部:まりんは萌え声で呟《つぶや》きながら、前屈《まえかが》みになり、ハンカチを拾う姿勢を取った。
語り部:だがしかし、何故《なぜ》か膝《ひざ》を曲げずにハンカチを拾おうとしてる。
語り部:体が固いのか中々拾えないようだった。
語り部:ドンくさいな、膝を曲げろよ。膝を。
ツトム:うおぉ……
語り部:ツトムが声にならないうめき声をあげた。
語り部:一体何があったのだ。
語り部:彼の視線《しせん》は、斜《なな》め下、まりんの胸元にロックオンだ。
語り部:そう。賢明なる視聴者様ならお気づきの通り、ツトムの視線の先で、まりんの胸の谷間が、見え隠れしているのだ。
語り部:しかも、この話の最初に紹介した通り、ブラジャーの中身はガバガバなのだ。
語り部:守備力が弱々《よわよわ》なのだ。
語り部:今、魔物が現れたら一撃でやられてしまうくらい、まりんの胸元は弱々装備だった。
語り部:そして、彼の位置からだと丁度《ちょうど》ブラの空間、嬉し恥ずかし魅惑《みわく》の危険領域《デインジャーゾーン》が見え隠れするのだった。
ツトム:ゴ、ゴクリ……
語り部:条件反射で思わず唾《つば》を飲み込むツトム。
ツトム:ハァ、ハァ……
語り部:ツトムの息遣《いきづか》いが荒《あら》くなってきている。二次元の女子しか知らないDTの彼には刺激が強すぎるようだ。
語り部:それも無理はない。生まれてからこの方、女子の秘密の扉を開けたことが無いのだから。
語り部:そもそも本来ならハンカチを拾ってあげるのが、男ってものだ。
語り部:だがしかし悲しいことに、彼の脳内に『ハンカチを自《みずか》ら拾って渡す』、その選択肢は、どこにも無かった。
語り部:前屈《まえかが》みになったまりんの胸の谷間が、ピンクの髪によって見え隠れしている。
語り部:そう、見えそうで見えない、これが『チラリズム』だ。
語り部:谷間が見えたその瞬間、ブラの隙間《すきま》から魅惑《みわく》の小さな膨《ふく》らみが彼の視界に現れる。
語り部:もう少し、もう少しで頂上が……!
語り部:と思ったのも束の間、まりんのピンクの髪が希望の魅惑ゾーンを隠してしまう。
ツトム:ああっ!
語り部:思わずツトムは溜息《ためいき》をつく。
語り部:でもチャンスはまだある。
語り部:次だ、次をくれ!
語り部:額《ひたい》に薄《う》っすら汗を掻《か》きゴクリと唾《つば》を飲み込む。
語り部:そして彼は、自分の全神経をまりんの胸元に集中した。
語り部:うむ。普通にキモい。
語り部:そして……
ツトム:おおっ……!
語り部:ついに小さな胸の膨らみの頂上が見えそう……と思ったその瞬間。
まりん:よいしょっと。
語り部:ツトムの努力も虚《むな》しく呆気《あっけ》ないほどに……まりんは何事も無かったかのように、一瞬にしてハンカチを拾いあげた。
ツトム:ああっ……!
語り部:2回目のああっ!と共に、ツトムは目を逸《そ》らした。
語り部:何故か。答えは明確である。まりんは起き上がってからすぐに、ツトムのことをジッと睨《にら》みつけたのである。
語り部:ツトムは、まりんが何を考えているのか皆目見当がつかなかった。
語り部:まりんは、ジッと三白眼《さんぱくがん》でツトムのことを見つめている。
語り部:そして、ツトムの期待の汗は、一瞬にして『冷や汗』にシフトチェンジしたのだった。
語り部:ツトムは思った。
語り部:『胸元見てたの気付かれてないよね。まりんちゃんハンカチを拾うことに必死だったし』
語り部:ツトムの脳内は、思考がグルグルと駆《か》け巡《めぐ》り錯乱状態《さくらんじょうたい》になっていた。
語り部:だがしかし、ようやく一つの答えを導きだしたのだ。
語り部:そうだ、まりんへの気づかいだ。
ツトム:ま、ままままりんちゃん、大丈夫……?
語り部:遅すぎる。もはや遅すぎた。今更《いまさら》ながらの気づかいだ。
語り部:そして、わかりやすいほどに、ドモッている。
語り部:ところが、まりんはニッコリと微笑《ほほえ》んだ。
まりん:うん大丈夫……! ありがとうツトムきゅん! ツトムきゅんは優しいね!
ツトム:い、いやあ……そんなことな……
語り部:照れると共に、安堵《あんど》の表情を受かべるツトム。
語り部:まりんにはバレていない。
語り部:うん、良かった。本当に良かった。めでたしめでたしだ。
語り部:ここで完と打ってもよいくらいだ。
語り部:だが、そうは問屋《とんや》が卸《おろ》さないのだった。
語り部:ツトムの謙遜《けんそん》の言葉は、別の声でかき消された。
まりん:……と、言うとでも思ったのかクソオタク!!
ツトム:えっ、ええっ?!
語り部:まりんの顔が般若《はんにゃ》の表情に変貌《へんぼう》し、ツトムへの恫喝《どうかつ》が始まった。
まりん:お前、俺の胸元見てたよな? 正直に言わないと、いてこますぞコラ。ああん?
ツトム:い、いや……それは……
まりん:み、て、た、よ……な?
ツトム:う、は、はい。ごめんなさい
語り部:まりんの迫力に思わず自白してしまったツトム。
語り部:無理もない、今のまりんの言葉には、「にゃん」の「に」の字も無い。
語り部:もはやヘビに睨《にら》まれたカエルの如《ごと》く、まりんのその目からツトムは逃れられないのだ。
まりん:おいこら童貞っ!
まりん:童貞の分際《ぶんざい》で、このアタシの胸を見ようだなんて900万年早いんだよっ!
ツトム:は、はひいいいいっ
語り部:900万年とかキリが良いのか悪いのかわからない数字を使うのだったら、いっそのこと1000万年にすれば良いのに。
語り部:なんて細かいことは、さて置き、小動物のように怯《おび》え切ってガタガタ震えるツトム。
語り部:多くの男は……いや、ツトムでなければ間髪入れずに、こう突っ込むことだろう。
語り部:『いや、お前さ、最初からそれが狙いだったんじゃね?』
語り部:だがしかし、残念ながら自宅警備員《じたくけいびいん》のツトムには、コミュニケーションスキルが皆無《かいむ》だった。
語り部:もはや平静を失っているツトムには、冷汗を掻き、ひたすら困ることしかできない。
語り部:どうする、どうするツトムっ?!
まりん:おいこら童貞! お前、良いもの見れたんだからさあ……わかるだろ?
ツトム:……え、なんのことですか?
まりん:すっとぼけてんじゃねえぞコラ。これだよ、これ!
語り部:まりんは右手の親指と人差し指で〇《まる》を作り、残りの指を広げる昭和のゲスいジェスチャーでツトムに金銭を要求する。
ツトム:ええっ?! そんな……ひどい
まりん:おいおいおい、何を言っちゃってくれてるのさ?
まりん:むしろ、胸を見られた私の方が被害者だっつーの。このセクハラ野郎が。
ツトム:そんな、見えてないし……
まりん:はあ……?!
まりん:見えてないとか、どの口が言ってんだよ?
まりん:しらばっくれてるんじゃねえよ。警察突き出すぞオラ。
まりん:あははは。警察は、童貞と可愛い女の子、どっちの味方するんだろーな?
まりん:いいから、はよ出すものだせや、警察に突き出すぞコラ!
語り部:もうここまで来ると恐喝《きょうかつ》だ。
語り部:だがしかし、追い詰められたツトムは、警察に突き出されては敵わないとリュックの中に入っている財布を探した。
語り部:彼のリュックには、当然のようにアニメキャラの缶バッジが所狭《ところせま》しと並んでいる。
語り部:リュックの中から、人気アニメキャラの財布を取り出し、小銭入れをジャラジャラと弄《まさぐ》った。
語り部:まりんは彼の行動を見逃さない。
まりん:はあ?!
まりん:バカか……?! 小銭入れ覗いてるんじゃねえよ。クソが!
まりん:いいから貸せオラっ!
ツトム:あ、ああ……!!
語り部:モタモタしているツトムから、まりんはスパッと財布を奪い取った。
語り部:すると、まりんは札入れに入っている札を全て一気に取り出した。
語り部:そして、空っぽになった財布を「ほらよっ」とツトムに叩きつけ、再び萌え声で言ったのだった。
まりん:ツトムきゅん、ありがとにゃん!
ツトム:あ、そんなに……
語り部:再び招き猫ポーズ、萌えゼリフに戻ったまりんは、もうツトムに用は無いと背を向け走り去る。
語り部:そして、急に振り返り、叫んだのだった。
まりん:ちょろいんだよバーカ!
まりん:この童貞クソ野郎!!
語り部:呆然《ぼうぜん》と立ち尽くすツトムを尻目に、まりんは二度と振りかえることなく走り去った。
――(間)
語り部:その後、ツトムは人間不信に陥り、二度と二次元の世界から出ることは無かったと言う。
まりん:まったく、これだけしか無いのかよ。しけてんな。
語り部:まりんは、ツトムから奪い取った金を自分の財布にしまいながら毒づいた。
語り部:もう「にゃん」なんて言葉を発する素振《そぶ》りは全くない。
語り部:あのキャラはツトムに向けたキャラ作りだったようだ。
語り部:そして、上機嫌に歩いていたまりんだったが、何かを見つけたのか、不意に立ち止まった。
まりん:あれ、マモルじゃないのか?
語り部:まりんの視線の先には、理系男子を絵にかいたような男、マモルが居た。
まりん:よし、ちょっとからかってやるか……。
まりん:おおーい、マモルきゅーん!!
語り部:ツトムの時と同じように、大きく手を振りパタパタと小走りでマモルに駆け寄る。
語り部:再び萌えキャラのお出ましである。
マモル:ああ、星屑《ほしくず》。
語り部:リアクション薄っ!
語り部:さすが理系男子。
語り部:まりんのメイド服を見ても、何の感情も示さない。
語り部:唯一のリアクションと言えば、メガネのブリッジを人差し指で押し上げたくらいだ。
まりん:友達なんだから、星屑じゃなくて、まりんでいいにゃん!
マモル:……そうか、考えておく。
まりん:よろしくにゃん!
語り部:出た……!
語り部:男を腑抜《ふぬ》けにするスキル「名前で呼んでいいよ」だ。
語り部:この一言は、名前呼びを要求することによって「こいつ、俺に気があるんじゃね?」と期待させてしまう上級者向けのテクニックだ。
マモル:じゃあ。
まりん:あ、ちょ、ちょっと待つにゃん!
語り部:おっとー。
語り部:マモルには名前呼びスキルが通じない。特に何も感じていないようだ。
語り部:マモルは躊躇《ちゅうちょ》なく、まりんの横を通り抜けようとした。
語り部:これには、まりんもショックだったようで、思わず慌《あわ》ててマモルを呼び止める。
語り部:するとマモルは、通り過ぎようとした足を止め、振り返った。
マモル:……何か用か?
まりん:え、えーと。あ、いっけなーい!
語り部:出たーーー!!
語り部:ツトムを腑抜けにしたハンカチ落とし大作戦だ。
語り部:胸元をチラつかせることでマモルの気を引く作戦。
語り部:まりんは、マモルの位置から胸元が見えるよう、正確にポジション取りをする。
まりん:よいしょ、よいしょ。
語り部:モタモタとハンカチを掴《つか》もうとするまりん。
マモル:…………
語り部:おお!
語り部:マモルが無言で、まりんの胸元を見ているぞ。
語り部:明らかにブラの中を凝視《ぎょうし》している。
語り部:まあ、クールとは言え、所詮《しょせん》マモルも男だ。
語り部:まりんの術中《じゅつちゅう》にハマるのも仕方のないことである。
語り部:まりんは、マモルの視線を感じて、よいしょと起き上がる。
語り部:これでチェックメイトだ。
まりん:マモルくん、私の胸元見てたでしょ?
マモル:ああ。見た。
まりん:あ、……え?
語り部:言い切った。
語り部:清々《すがすが》しいほどに、悪ぶりもせずに言い切った。
語り部:むしろ、そうすることが当然のように。
語り部:想定外のリアクションに、まりんは狼狽《ろうばい》する。
語り部:大抵の場合、男の方が狼狽《ろうばい》するシチュエーションなのにも関わらず、だ。
語り部:しかし、ここまで来て引き返すわけにはいかない。
語り部:ここで、まりんが啖呵《たんか》を切る。
まりん:お、おい、おま……
――まりんの言葉を遮《さえぎ》るマモル
マモル:星屑、お前、ブラジャーのサイズが合っていないな。
マモル:……垂《た》れるぞ
まりん:え、えええええっ?!
まりん:そっちいいいいい?!?!?!?!?!
語り部:まりんは、マモルからの想定外の口撃《こうげき》に悲鳴を上げた。
語り部:それはそうだ。
語り部:まりんが、胸の谷間を見せつける離れ技をやってのけたにも拘《かかわ》らず、そしてマモルもガン見したにも拘らず、マモルは恍惚《こうこつ》するどころか、まりんにダメ出しを喰らわせたのだ。
語り部:いやいや、男子高校生なら、100%食いつくところだ。
語り部:むしろ体の一部に変化が起きてもおかしくない。
語り部:そして、マモルは更なる口撃を仕掛けたのだった。
マモル:ただでさえ、バストの下垂《かすい》は10代後半から徐々に始まって、30代で大きく変化が現れる。
マモル:にも関わらず、形の合わないブラジャーをつけ続けることで、更にバストの下垂は進んでしまうのだ。
マモル:たとえ、貧乳の星屑でも、だ。
まりん:う…………
語り部:ぐうの音も出ないまりん。
語り部:何か言い返す言葉は無いかと脳内を隅から隅まで検索していた。
語り部:だがしかし、残念なことに彼女の小さな脳みそでは、そもそも探す場所が限られていた。
語り部:そして、まりんは両手をグッと握《にぎ》り……例のアレを叫ぶのだった。
まりん:お、覚えてやがれ! これで勝ったと思うなよーっ!!
語り部:昭和にしか聞けない貴重な捨てゼリフを残し、マモルの元から走り去るのだった。
マモル:ふむ、今日は、あの日……か。
語り部:マモルは、何かを察した様子で、その場を立ち去るのだった。
語り部: ――今日の戦績 まりんの一勝一敗――
まりん:悔しくなんかないもん!
まりん:ばーかばーか!
――(間)
終演:
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