とある小さな喫茶店。
元気のない高校生に、喫茶店のマスターが優しく語り掛けます。

★登場人物
・マスター
　傷ついた高校生に優しい言葉を語り掛ける。

※登場人物の性別は男性を想定して記載しています。
　性別を変更する際は、一人称、語尾等変更して演じてください。
　ただし、内容が変わってしまうような大幅な変更はご遠慮ください。

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　台本をご覧いただきましてありがとうございます！
　本文中、「――」の記述がありましたら、ト書きですので音声化不要です。
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――場所「とある小さな喫茶店」
――常連の高校生が入店する

やあ、いらっしゃい。
久しぶりだね。

どうしたんだい？
今にも泣きそうな顔をして。

そうか……

さては、『かなしみボックス』が溢（あふ）れてしまったんだね？

……え？

『かなしみボックス』って何だって？

ほら、キミのココロの中にあるじゃないか。

うん、そう、そこだよ。
胸のあたりにある。

それのことだよ。

心の中には３つの箱……
『よろこびボックス』
『いかりボックス』
『かなしみボックス』があるのさ。

箱の大きさは人それぞれ。
小さい『かなしみボックス』なら、中に入っている感情を簡単に吐き出し整理して、中身を空っぽに出来るんだ。

けれど、キミの『かなしみボックス』は、とても大きそうだね。

キミみたいに大きな『かなしみボックス』を持っている人。

その箱は、とても奥底が深くて、自分では手が届かない。
だから、奥底に貼りついている悲しみを、中々取り出すことが出来なくて、ついには腐ってしまうんだ。

その後、たくさんの悲しみが蓄積されて、ぎゅうぎゅうに詰め込まれた挙句《あげく》、ついには蓋（ふた）が閉まらなくなって……いずれ爆発してしまう。

いや？
だからって、『大きいかなしみボックス』が悪い箱とは言わないよ？

『大きいかなしみボックス』を持つ人は、自分を犠牲にしてまで、周りに気を使える高潔《こうけつ》な人なのだから。

それに、小さな『かなしみボックス』だって良いことばかりじゃない。

『こころボックス』は、使い方次第で、良い方向にも悪い方向にも転ぶのさ。

小さなかなしみボックスを持つ人達の中には、残念なことに箱を悪用する人がいるんだよ。

『かなしみボックス』に入っている感情達を乱暴に鷲掴《わしづか》みにして、『いかりボックス』に叩きこむ。

そして、悪意と言うスパイスを『いかりボックス』の中へ、たっぷり山盛り振りかけ……あらゆる手段を使って無差別に周りの人々へバラまくんだ。

本人は、自分の『かなしみボックス』、『いかりボックス』の中身《なかみ》が空になって、その時はスッキリするかもしれない。

だけれど、これは、あまりお勧めできる方法じゃない。

何故だかわかるかい？

そう。
自分の代わりに『スパイス入りの怒り』をバラまかれた人達の『こころ』が壊れてしまうんだ。

そして挙句の果てに、こころボックスを壊された人々は、彼への信用を失い離れて行ってしまうのさ。

あ、そうだ。

ひとつだけ大きい『かなしみボックス』の中身を整理する方法がある。

　――間を取る
　
その方法をキミにだけ教えてあげるよ。

それはね？
悲しみの観点をプラスの方向に変えるんだ。

意味がわからないって……？

キミが持っている悲しみ。
今、君が悲しいのは、心の視野が狭くて、一方向からしか、悲しみの形を見ていないからなんだ。

その悲しみは何故生まれたのかを、もう一度考えてごらん？

そう。
大きな悲しみの原因を細かく何等分にもわけるんだ。

キミが思う悲しみの原因は、１つだけじゃないはずなんだ。
自分が弱いから、マイナス思考だから、細かいことを気にしすぎるから……とかね。

一番大切なのは、この原因は自責、自分の責任として考えること。

何故だかわかるかい？
相手のせいにしたところで、相手の性格を変えることは難しいからさ。

キミだって、僕から何か性格を変えろと言われたって中々難しいと思うんだよ。

だから、自分の考え方を修正していくことで、光が見えてくることが多いんだ。

そうやって、細かく砕いた悲しみの原因を、ひとつひとつ丁寧に潰していく。

大きな悲しみを、一辺に解決しようとするから辛いんだ。
キミの大きな悩みが、一瞬でパッと無くなる訳が無いじゃないか。

急がなくて良い。ゆっくり何日もかけて悩みを消していこう。
そりゃあ、行き詰まることもあるだろう。

その時は、もちろん私も手伝うさ。
だから、安心して、ゆっくり悩めば良い。

そして、いつか悲しみの全てを掻き消すことが出来た時、キミから見える視界は変わって見えるだろう。

それに、もし次に同じ様な悲しみが訪れても、キミは、もっと柔軟に振る舞うことができるだろう。
それが、悲しみと気づかないくらいに。

だから、次に同じような出来事が起きたとしてもも『かなしみボックス』に想いを入れることは無いはずだ。
『かなしみボックス』は、使い方次第で誰でも幸せになれる。

むしろ、自分の目の前に来る困難を乗り越えることが楽しみになっているかもしれないね。

そうしたら、しめたもんだ。

――高校生の表情が明かるくかわっていることに気づく

……おや？
やっと笑顔をみせてくれたね。

また、ここにおいで。

次に来た時は、キミの『こころボックス』を僕に見せておくれよ。
その時には、きっと『よろこびボックス』が溢（あふ）れかえって困るほどになっているかもしれないね。

楽しみに待ってるよ。

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・台本（ゆるボイ！）
【性別不問１名】こころボックス
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