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こころボックス~人の善意と固定概念~【性別不問1名】
written by ニクキューP
  • 癒し
  • カフェ
  • 喫茶店
公開日2023年06月07日 20:57 更新日2023年06月07日 23:28
文字数
1870文字(約 6分14秒)
推奨音声形式
指定なし
推奨演者性別
指定なし
演者人数
1 人
演者役柄
指定なし
視聴者役柄
指定なし
場所
指定なし
あらすじ
とある小さな喫茶店。
今日は喫茶店のマスターが、常連のお客に語りたいことがあるようです。

※登場人物の性別は男性を想定して記載しています。
 性別を変更する際は、一人称、語尾等変更して演じてください。
 ただし、内容が変わってしまうような大幅な変更はご遠慮ください。
本編
★★★★★★★★★★★★
 台本をご覧いただきましてありがとうございます!
 本文中、「――」の記述がありましたら、ト書きですので音声化不要です。
★★★★★★★★★★★★

一体、人の善意ってなんなのだろう……
あ、突然申し訳ない。

今日、こんなことがあったんだ。
少し僕の話を聞いてくれるかい?

 ――間を取る

毎朝同じ電車の同じ車両に乗る女性がいるのだが……
年で言うと、30代半ばくらいかな。 

この女性、私と乗車駅、降車駅が一緒でね。 

彼女は杖《つえ》をついていて……そう、折りたたみできる杖だった。

たぶん、三段階くらいに伸び縮みするような。 

彼女が、杖をついて居る姿を毎日見ていて、満員電車に乗るのも大変なのだろうなぁ……と思っていた。 

だけれど、『体の不自由な人に席をゆずりましょう』精神は、意外と浸透《しんとう》しているらしく。 

あ、いや。
意外なんて言ったら失礼かな。でもこれは、喜ばしいことだよね。

話を戻そう。
その杖を突いている女性は、満員電車の中、かなりの高確率で席を譲られていた。 

当然のようで、スゴいことだね。
満員電車で多くの人が、ひしめく中、スクっと席を立ち、席を譲《ゆず》るなんてことは中々出来ることでは無いし、勇気のいることだと思う。 

自己満足ではない、心からの善意。
素晴らしい。

しかも、朝の通勤時間帯。 
仕事が始まると考えただけで、憂鬱《ゆううつ》になって、今のうちに寝て体力を温存しようと少しの時間でも眠りたい。

運良く座れた人は特に、そう思うだろう。
何なら、立ちながら寝ている器用な人も多くいる。

私だって電車で座れたら、すぐに寝てしまうかもしれない。

でもね? 
譲るんだ。
その方達《かたたち》は、イヤな顔ひとつせずに席を彼女に譲るんだ。 

たまたま目の前に彼女がいたわけじゃなくて、遠く離れた席に座っていても譲る人は譲るんだ。
 
その女性もね。 
有難く会釈して座るみたいなね。 

素晴らしい。 
今の、この心のすさんだヒトが多い時代。

私も見習わなければと思った。
と言っても、私は、そもそも満員電車で座れた試しがないのだけどね……

 ――間を取る
それは、ある日のことだった

今朝も例外なく席を譲って貰った女性。

良かった。
今日も席に座れたのだと、僕は安堵《あんど》した。

 ――間を取る
 
だがしかし。

突然、電車が急停止!!

車掌の社内アナウンスで『線路内に人が立ち入ったため、少々運転を見合わせます』との声が聞こえる。

ざわめく車内。
それはそう。満員電車に乗る殆《ほとん》どの方は、会社だったり、学校だったりある訳だ。

すると、席を譲られた女性も、腕時計をチラチラ見ながら時間を気にしている様子。

彼女は、とても急いでいるようだった。会社に間に合わないのかもしれない。

 ――間を取る
そして、数分が経ち電車は運転を再開した。 
その後も前の電車が詰まっているとかで、途中、電車が一時停止したり、徐行運転を繰り返した。
そして、やっとのことで降車駅《こうしゃえき》に着いた。 

プシューと、音をたてて電車のドアが開く。 

遅刻だ!
急がなきゃ!!

って。 
……え? 

杖をついていた女性……
立ち上がったと同時に伸ばした杖を折りたたむ。 

そして、

『走った』

自然に、綺麗なフォームで。

今までの歩みが嘘のように

『走った』

そして、階段を駆け上り姿を消した。

つまり、『あの杖はフェイク』だったってこと、か?

なんだろう…… 

この脱力感。
この虚無感。
 
なんだったんだろう……

席を譲ってくれた人たちの善意。 

彼女に『悪意』はあったのか。

それは彼女にしかわからない。

 ――間を取る
そして、昨日のことがあったからか、次の日から彼女は姿を消しました。 

本当に足が悪くて頑張って走って、でもバツが悪くて来れなくなったのか。 

それとも……
今まで騙していたことを反省して消えたのか。 

それとも…… 
遠くの違う車両に移って同じことを繰り返すのか。

それは彼女にしかわからない。

 ――間を取る
これが人の善意について考えさせられた理由。

バカ正直な人は損をする。
ズルく賢く生きなきゃ儲《もう》からない。 

良く私は、ヒトから『バカ正直』と言われるんだ。

でも、私はバカ正直で良いと思っている。 

優しいウソは良いけれど、人の善意は裏切りたくない。 

ほんのちょっぴり悲しくなった話。 
いや、ちょっぴりじゃないか。

さてキミは、どう思う?

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ニクキューP (Twitter: @tomox9209)
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クレジット
・台本(ゆるボイ!)
こころボックス~人の善意と固定概念~【性別不問1名】
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
ニクキューP
ライター情報
猫と初音ミクを溺愛しているライターです。
コメディ、日常、メンヘラ、そして百合&ライトBL
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