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【メンヘラ/ダウナー/女声1名】私シリーズ~その背中に翼がみえた~
written by ニクキューP
  • ダウナー
  • メンヘラ
  • 切ない
公開日2023年06月11日 21:53 更新日2023年06月11日 22:36
文字数
2842文字(約 9分29秒)
推奨音声形式
指定なし
推奨演者性別
指定なし
演者人数
1 人
演者役柄
指定なし
視聴者役柄
指定なし
場所
指定なし
あらすじ
社会人向け

主人公は社会人になって、まだ2,3年目の女の子
会社に慣れ始めてきたけれど、毎日がストレスの積み重ね。

そんな彼女が通勤時に見た輝いている光景は?
本編
★★★★★★★★★★★★
 台本をご覧いただきましてありがとうございます!
 本文中、「――」の記述がありましたら、ト書きですので音声化不要です。
★★★★★★★★★★★★


快晴!

……って、こんな日のことを言うんだろうな。
天を仰いで、手を広げて伸びをして、思い切り新鮮な空気を吸い込みたい……そんな天気。

まあ、コンクリートジャングルの中では、正直ありがたみは半減してしまうけど。

こんな良い天気の日に、公園の芝生の上で寝転がったら気持ち良いのだろうなあ……と思いながら、今日も今日とて会社に向かう。


 ――間を取る


はあ、こんな散歩日和の日に会社の中でデスクワークなんて勿体ないなあ……とは思っても、休みの日は休みの日で、ヘトヘトになって家の中に1日中引きこもっている。

だから、こんなダメ人間の私にとっては、週末に晴れても意味が無いってことだよね。

 ――間を取る
 
上司、お客さんから怒られて板挟みの毎日。

面白いように、どんどん精神が削られる。
ストレスの原因は分かっているけれど、どうしようも無さすぎて笑いがこみ上げてくる。

もう何度仕事を辞めようと思ったかわからない。

今まで色んな人から何度も『空気を読め』って言われてきたけど、実際会社では『空気の読めない社員が昇進していく』のは何故なんだろう。

空気の読めない管理職が、新しい管理職を選ぶから?

そして、空気の読めない新しい管理職に叩かれる。

ほんと世の中、矛盾で溢《あふ》れ返っている。

 ――間を取る
 
何が正しいんだろ。
そもそも正しいって何だろう?

私自身、惰性で日々を過ごしてる自覚はある。
似たような日々をルーティンのように繰り返して、ミスをして怒られて我慢して、休みが来るのをひたすら待つ。

 ――間を取る
 
みんなからは「いつもニコニコしている悩みの無い天然キャラ」と思われていることは自覚してる。

 ――間を取る

 ――同僚のセリフ(地声でOK)
「直ちゃんって、悩み無いでしょ?」

 ――自分のセリフ
「えへへ、わかる?」

 ――間を取る
 
『あいつはバカだから』なんて陰口を叩かれているのも分かってる。

だって、『バカ』と思われた方が楽じゃない?

変に期待されるくらいだったら、バカと思われていた方が百万倍楽なんだ。

休みを追って、ことなかれ主義で生きていると、あっと言う間に一ヶ月、一年が過ぎ去っていく。

そんなこと、わかりきったことなのにね。

休みを追って、休みが来て、そして、休みが終わるときの絶望を毎週味わう。


 ――間を取る
 
これは、学生時代と変わらない。
全く成長してないと言うことなのかもしれない。

今日という日は二度と来ないことなんて、頭では分かっているけれど、現実から目を逸らして、何も知らない振りをして、毎日が過ぎ去っていく。


いつか、遠い未来に、自分に良いことが起こるのではないかと、何もせずに動かず騒がず、じっと待つ。

だって、遠い未来なのだから、今は何もしなくたって大丈夫でしょう?

だから今は「誰かが私に手を差し伸べて救ってくれる」のをじっと待っている。

満員電車に乗らなくても良い日が来るのではないかと、じっと待っている。


 ――間を取る


不確実な、何の保障も無い希望。
その場から動かない私のことを、私自身が擁護《ようご》する。
何もしない自分のことを自分が正当化する。

正当化したところで、何もならないことは分かりきったことなのに。

 ――間を取る

こんな思考、これで何回目だろう。
何百、何千、何万回目なのだろう。
同じ思考、何の結論も出ない思考を意味も無くグルグル繰り返す。

そしてまた今回も、結論は出ないんだ。


 ――間を取る
 
結論なんて出るわけが無い。
だって、私自身が結論を出すことから逃げているのだから……

 ――間を取る(場面転換)

 ――子供の泣き声

「うわあぁーーーん!」

 ――間を取る


おやおや?
道ばたで小さい子が泣いている。3才くらいかなあ……ママも困り顔。

 ――間を取る
 
 ――子供を叱るママ

「ワガママばかり言うと置いてくよ!」

なんてママの言葉も、この子には通じない。

むしろ、怒られることで、更に大泣きしている悪循環。


でも私は、こういう平和な光景が大好きで、大好物で、思わず笑顔になってしまうんだ。


ほんの些細なことで泣くことができたあの頃。


でもそれは、お子ちゃま本人にとって、今すぐ願いが叶わなければ、人生が終わってしまうくらいの重大事項だ。

私は、そんなキミの脳内を想像するのが、楽しくて仕方が無いのだよ。

一部の大人達は、電車や、お店で泣く子供を「うるさい!」なんて批難するけれど、泣くのが子供の仕事じゃない?


今は大人のキミたちだって、子供の頃は大泣きして暴れ回っていたでしょう?

 ――間を取る
 
私にだって、子供の時はあった。
自分の未来に何の疑問も、不安も不満も持たない日々があったのだ。

そうなんだ。
人前で思いきり泣くことが出来なくなったのは、いつのことだろう。

泣くことが悪《あく》と思い始めたのはいつのことだろう。

誰に教えられたわけでも無いのに、自分の感情を抑えつけることが癖になってしまった。

そう考えると、お子ちゃまに対して「今のうちに思い切り泣いておきなよ!」なんて思ってしまう。

……なんて、「子供を育てたこともないくせに」とか言われてしまいそうだな。

まあ、否定はしないけれど、そこは許して欲しいな。

天を仰《あお》いで大泣きする子供。

瞳から大粒の涙が、次から次へキラキラと流れていく。

私の目には、その子の背中に翼が生えているように見えるんだ。

キミのいる空間が光に満ちあふれている。

背中に翼をつけた天使が空に向かって、今にも羽ばたきそうだ。

今、キミの可能性は未知数で、大きくなったら、戦隊ヒーローだって、魔法少女にだってなれるんだ。

そうだ、キミの未来に不可能なことなんて無いんだよ。

だって今から1秒後に世紀の大発見があるかも知れないのだから。

 ――間を取る
 
百年前に、今の世界が想像できた人は果たして居たのかな。

仮に今、私がタイムマシーンで百年前に行けたとして、当時の人々に今、私が持っているスマホのことを説明したとしても、相手にされず笑い飛ばされることだろう。

否定からは何も生まれないのだ。
もちろん、何もしなければ何も生まれないのだ。

そうだよね……何もしなければ、何も生まれないんだよね。

何かしなければ何も生まれないのだよね。

 ――間を取る

今が「その時」なのかな。

私の心の中で、すっかり錆《さ》び付いてしまった時計が再び動いた……気がする。

そして私は、再び大泣きする子を眺める。

 ――間を取る
 
泣き止まないなあ……
いいなあ……
羨ましいな。

たくさん泣いて、
たくさん笑って、
大きくなってね。

 ――間を取る
 
そしてまた私は「天然ゆるふわ女子」に戻って、ほんのちょっぴり軽くなった足取りで会社に向かう。

青い空を眺めながら。

 ――間を取る

終演:

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ニクキューP (Twitter: @tomox9209)
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クレジット
・台本(ゆるボイ!)
【メンヘラ/ダウナー/女声1名】私シリーズ~その背中に翼がみえた~
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
ニクキューP
ライター情報
猫と初音ミクを溺愛しているライターです。
コメディ、日常、メンヘラ、そして百合&ライトBL
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