あなたは、とある国の小さな国王。
若くして国王になったあなたの国に、
突然、隣の大国が戦争を仕掛けてきました。
でも、大丈夫。
あなたの隣には、最強の女騎士が控えています…

陛下（へいか）！！お怪我（けが）はありませんか！？

ああ、良かった！

いけませんよ！そんなに前線に出ては！！

陛下はまだ小さいのですから…

ここは、陛下の側仕（そばづか）えたる最強の騎士！

そう、この私（わたくし）めにお任せを！

ご安心ください！
ええ、もちろん、陛下には、指一本触れさせませんとも！

さぁ、陛下はお下がりください。

大丈夫、いくら敵が大国と言えども、私が振るうのは、
陛下のための正義の刃（やいば）！！そして、深き愛の刃！！

あんなやつらに遅れをとる私じゃありませんとも！！

私の戦いっぷり、どうぞ後方にて、ごゆるりとご覧ください！！

陛下のためなら、不肖（ふしょう）この私！鬼にも、悪魔にもなってみせましょう！！

え？

無理するな…？

私のことが、心配…？

や、やだなぁ！！もう！！

陛下は、すぐにそうやって、私の心をかき乱す！！

戦闘中ですよ！？時と場合を考えて、

そういった愛の囁きは、もっと夜もふけた、陛下の部屋の褥（しとね）にて…

え？敵が来た？

あわわわわわ！！陛下、お下がりください！！お早く！！

（少し間を空ける）

失礼致します、陛下。

はい。奴らは、今夜のところは引き上げました。

また明日、攻め込んで来るかと思われます。

ええ、もちろん、私は大丈夫ですとも。

私は王国最強の騎士にして、陛下の右腕。
もう少し信頼してくださってもいいのでは？

…ええ、分かってますよ。心配してくださってるんですよね。

嬉しいですよ。ふふっ。

ささ、陛下、今日も疲れたでしょう？

さぁ、いつものように、私のおひざに。

なぁに、遠慮はいりませんとも。

私は、陛下に膝枕をすることで、疲れをいやしているのですから…

陛下は私で疲れをいやす。私は陛下で疲れをいやす。

まさに一挙両得といったところでは？

気持ち悪い？

おや、これは辛辣（しんらつ）なおことば。

そんなこと言うなら、今日は甘やかしてあげませんよ？ふふっ…

（少し間を空ける）

ね、こっち向いて、陛下。

あはっ。相変わらず、陛下のとろんとした顔、可愛い…

こーんな小さい時から、ずっと陛下のお側にお仕えしてきましたけれど…

ずっと変わらぬ可愛さで、私は、もう、幸せです…

最近なんか、大人びてきちゃって、
可愛さの中にときおりかいまみえるかっこよさが、
もう、たまらなくて…へへ、へ…

ああ、いえ、発作みたいなものです。ご心配なく。

ねえ、陛下。頭、なでてもいいですか？

なでなで。なでなで。

ふふっ。陛下の髪、さらさら。

もしかして、また、私のシャンプー、勝手に使いました？

だめですよ。あれは、子供にはまだ早いです。

それに、あれは、私が、陛下の前で、いつでも美しくいられるように、
高いお金を出して買ってるモノなんですから。

陛下がサラサラになって、どうするんですか、もう。

いいですよ、寝てしまっても。明日も早いです。英気を養わなくては…

（少し間を空ける）

…どうしました？何か、話したいことでも？

相談…？ええ、もちろん。なんなりと。

私は、陛下の味方でございます。
安心して、何でもお打ち明け下さい。

これは…手紙？

戦争中の、相手国からの密書（みっしょ）ではないですか。

私が拝見してよろしいのですか？

…心得ました。では…

なになに…

このままでは、貴方の国の滅亡は必然。
しかしながら、私と婚姻（こんいん）を結べば、
御身（おんみ）および、国の安全も保証する…
良き返事を期待されたし。聡明（そうめい）な国王殿…？

…なるほど。

これは、かの国の王女と結婚すれば、我らの国を助けると。そういうことですね。

それで、陛下は、結婚するかどうか、悩んでおられると？

そうですか。でしたら、こうしましょう。

ビリッ！！！（紙を破く音）


ふふ。ふふふっ…（怪しい声で笑う）

…陛下、婚姻を受ける必要など、つゆほどもありませんよ。

僕が結婚すれば、民が救われる…？

いいですか？民も大事ですが、それは、御身が無事であればこそ。

この国は、陛下の国。まず、貴方が幸せでなければなりません。

好きでもない女と結婚して、どうして幸せになれましょうか？

…陛下、今日は、もう、お休み下さい。

いずれにしても、また明日考えるべきです。

ほら…耳元に、息を吹きかけてあげますから…（耳元で囁く）

ふーっ…（耳に息を吹きかける）

ほら…これをすると、陛下はすぐとろんとして…（耳元で囁く）

ふーっ…（耳に息を吹きかける）

寝てしまうんです…

…おやすみなさい。陛下。（耳元で囁く）

（少し間を空ける）

…ふぅ。寝てしまいましたか。

ふふっ…相変わらず、可愛い寝顔。

申し訳ありません、陛下。

今夜は、添い寝をしてあげられそうにありません。

私は、これから夜襲（やしゅう）をかけて、あの女狐（めぎつね）の首を取って参ります。

命だけは助けてやろうと思っていましたが…
こうなれば、もはや、是非（ぜひ）もありません。

…陛下、重ねてお詫びを。

今回の戦争は、私が、勝手に、
かの王女との結婚を断ったために起きたものなのです。

仕方なかったんです。

だって、陛下は、私だけのものだから…

私だけが、守らなきゃいけないんだから…

陛下は、私だけを見てなきゃいけないんだから…


…では、行って参ります。

次に目が覚めた時には、また、陛下の心は、私だけのもの…

気づいていますよ。

少し…あの女狐のこと、いいなって、思っているんでしょう？

…そうはさせませんよ。（低い声で）

言ったはずです。陛下のためなら、私は、鬼にも、悪魔にもなると…

では…つかの間の淡い夢を、どうぞお楽しみ下さい。

我が愛（いと）しの国王様…。（耳元で囁く）

・台本（ゆるボイ！）
明るくて元気な女騎士が、実はヤンデレだった
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
犬アキラ